勃起はなぜ起きるのか?勃起の仕組みやメカニズム

勃起(ぼっき)とは?
満足な性行為をするために欠かせない要素のひとつが陰茎の『勃起』です。
勃起とは、陰茎が増大して硬くなる生理現象のことで、男性の思春期が始まる年齢といわれている10~11歳を過ぎた頃から自然に起こり始めます。
主に「異性の裸を見る」「陰茎に直接触れる」などの行為によって性的刺激を受けた際に起こるもので、必ずしも男性の意思と勃起のメカニズムが直結しているわけではありません。
この章では、勃起のメカニズムの詳細、また勃起の状態とED(勃起不全)の関係について解説します。
「勃起という現象を詳しく知ること」「自分の勃起状態が正常なのかを判断すること」は、EDの早期発見や改善に役立ちます。
EDに悩まされることがない健全な性生活を営むために、勃起に関する知識を身につけておきましょう。
目次
なぜ勃起するのだろう?
メカニズム
勃起のメカニズムには、主に『脳』『脊髄』『陰茎海綿体』が関係しています。
①性的刺激を受け、脳が興奮状態になる
恋人のセクシーな姿を目にしたり、その声を聞いたり、触れられたり、五感で性的な刺激を受けた時にその刺激は脳に伝わります。
刺激を受けた脳は興奮状態になり、その情報を発信します。
基本的にはこれが勃起のために欠かせないトリガーです。
②性的興奮の情報が陰茎に伝えられる
脳から発した性的興奮の情報が、陰茎へと伝達されます。
脳とつながった脊髄の『勃起神経』を経由して陰茎に伝わります。
ただし、場合によっては情報が陰茎にスムーズに伝わらないこともあります。
交感神経、副交感神経と呼ばれる2種類の自律神経のうち、交感神経が優位に働いているときには情報が遮断されることがあります。
③血液中の一酸化窒素(NO)が増量する
脳からの情報が陰茎に到達すると、血液中の一酸化窒素が増加します。
一酸化窒素は血管を拡張させる『環状グアノシン一リン酸(cGMP)』の働きを促進します。
④陰茎海綿体に流れ込む血液が増量する
一酸化窒素とcGMPの働きによって陰茎の血管が拡張し、陰茎を構成する陰茎海綿体に流れ込む血液の量が通常よりも倍加します。
⑤陰茎海綿体が血液を吸収し、膨張。陰茎が増大・硬化する
血液の増加によって陰茎海綿体が膨張し、陰茎のサイズが増大します。
通常時であれば、動脈を通って陰茎海綿体に流れ込んだ血液は静脈を通って心臓へと戻っていきます。
しかし、勃起時は膨張した陰茎海綿体が静脈を圧迫し、血液が戻る量を抑えます。
これが勃起状態を維持する仕組みです。
自律神経作用
勃起するために重要な役割を担っている要素のひとつに『自律神経の作用』があります。
自律神経は、循環器をはじめとする身体の各器官が正常に機能するために必要不可欠な神経です。
日中や人間の活動時に働く『交感神経』と夜間や睡眠中に働く『副交感神経』があります。
この2種類の自律神経がバランスよく働くことによって、身体の健康状態は保たれています。
「緊張状態の時は交感神経が優位に働く」「リラックス状態の時は副交感神経が優位に働く」といったように、状況に合わせて優位に働く自律神経が入れ替わります。
そんな自律神経の働きのひとつに「血管の収縮と拡張」があります。
交感神経が優位に働くことで血管が収縮し、副交感神経が優位に働くことで拡張します。
性的興奮が脳から中枢神経(勃起神経)を経由して陰茎に伝えられる際には、副交感神経が優位に働く状況が必要です。
副交感神経の働きによって血管がスムーズに拡張し、勃起を進行させます。
通常であれば、性的刺激を受ける際には心や身体がリラックスしているので副交感神経は活発に働き、解説した通りのメカニズムで勃起が起こります。
何らかの原因で自律神経が乱れると、入れ替わりのバランスが崩れることによって交感神経が優位に働き、性的興奮の情報が陰茎に伝えられないことがあります。
たとえば、日常生活においてストレスを溜め込むとき、交感神経が優位に働きます。
軽度のストレスであれば、性的刺激を受けることによって副交感神経が優位に働きますが、簡単に解消できない重度のストレスや性のコンプレックスを持つことにより、性的刺激を受けても変わらず交感神経が優位に働き続けることがあります。
その結果、血管が収縮したままで陰茎に十分な量の血液が流れ込まず、EDの状態になってしまいます。
このように、自律神経の乱れはEDの原因のひとつです。
EDを引き起こさないために、普段から過剰にストレスを溜め込まないようにうまく解消する方法を見つけておきましょう。
陰茎海綿体とは
陰茎海綿体は、陰茎を構成するスポンジ状の器官で、勃起するために欠かせないものです。
血液を吸収して膨張することにより、陰茎全体を増大、硬化させています。
通常は動脈から陰茎海綿体に流れ込む血液の量と、静脈を通って心臓に戻る血液の量はほとんど変わりません。普段、陰茎海綿体が膨張しないのはこのためです。
しかし、性的興奮を感じると血液中に多量の一酸化窒素が生成されます。
一酸化窒素は血管拡張作用を持つcGMPの働きを促進します。
拡張した動脈から流れ込む血液量が、静脈から心臓に戻る血液量を上回ることにより血液が陰茎海綿体に吸収され膨張します。
また、性的興奮を感じていなくても、陰茎海綿体に多量の血液が流れ込み勃起することがあります。
『反射性勃起』と呼ばれる現象で、身体に衝撃が加わることによって脊髄の勃起神経が刺激を受けることで起こります。
勃起神経を通して陰茎に伝わった刺激により一酸化窒素が生成され、性的興奮を感じたときと同じメカニズムで勃起します。
勃起が終わる時
射精して性的興奮が収まると血管が収縮し、陰茎海綿体に流れ込む血液の量が減少します。
これにともなって陰茎海綿体も収縮し、勃起状態が鎮まります。
この現象には、ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)という酵素の作用が影響しています。
PDE5はcGMPを分解する作用があり、拡張した血管を収縮させることで勃起を収束させます。
このように、PDE5は勃起のメカニズムにおいて必要なものです。
しかし、性的興奮を感じている間にPDE5が過剰に働くと、cGMPの作用が抑制され血管が拡張しなくなります。
つまり、陰茎海綿体に十分な量の血液が流れ込まず、勃起できなくなります。
EDの原因にはさまざまなものがありますが、血管に異常が見られる場合や陰茎海綿体が傷ついた場合を除き、直接的な原因はcGMPの減少とPDE5の活発化にあるといわれています。
このように、勃起には自律神経や血管、陰茎海綿体などさまざまな部分が関係していますが、いずれかの機能に異常が生じるとメカニズムが崩れ、勃起がうまくいかないEDの状態になってしまいます。
EDになってしまった場合は、自律神経のバランスが崩れたことによるものか、血管や陰茎海綿体に異常が見られるためか、医師に相談しつつ見きわめ、勃起機能を取り戻していく必要があります。
自分の勃起時の硬さを知りたい
性的刺激を受けて勃起したとしても、勃起時の硬さを気にする男性は多いのではないかと思います。
男女が互いに満足のいく性行為をするためには、勃起時に十分な硬さを得られなければいけません。
「勃起すること」や「勃起状態を維持すること」をクリアしていたとしても、硬さが不十分である場合はEDに該当する可能性があります。
個人で勃起時の硬さを診断できる指標『EHS』をご紹介します。
硬さに不安がある方、自分がどの程度の硬さなのかを知りたい方は診断してみましょう。
硬さ指標EHSとは
『EHS』とは『Erection Hardness Score』の略で、勃起時の硬さを自己診断できる指標のことです。
アメリカで開発されたもので、日本でも2009年から『日本語版EHS』が使用できるようになっており、インターネット上で手軽に診断することが可能です。
EHSを掲載しているサイトページにはパソコンやスマートフォンを使ってアクセスできます。
診断結果には、0~4のグレードが用意され、勃起時の硬さがいずれに該当するかでEDの可能性の有無を自己診断できます。
各グレードには硬さの例えとなる食べ物が紹介されているので、判断基準として参考にすることが可能です。
自分の陰茎の硬さと比較しながら、自分に合ったグレードを見つけましょう。
ただし、EHSは簡易的な診断のための指標であり、EDを正確に診断するものではありません。
結果に関係なく、勃起の状態に違和感や異常がある場合は、すみやかに医師や専門の医療機関に相談しましょう。
グレード1
グレード1は、5段階あるグレードの中でもEDの可能性が非常に高い状態であるといえます。
こんにゃくの硬さに例えられるもので、「勃起するが硬くはない」という状態を指します。勃起してもまったく硬さを感じられない方は、グレード1に当てはまる可能性があります。
すでにEDを発症している可能性もあるので、該当する方はすみやかに医師に相談しましょう。
ちなみに、グレード0は「勃起できない」という状態を指します。
勃起できるか否かは、その日の体調や精神状態も関係します。
しかし、3週間近く勃起できない状態が続いている場合、「EDを発症している可能性が限りなく高い」もしくは「すでにEDを発症している」といえるでしょう。
このように、グレード0~1はEDを発症している可能性が高い診断結果です。
しかし、ED治療薬の服用をはじめ、適切な方法で早期治療を始めることで改善する可能性があります。
世界的に知名度の高いバイアグラ、レビトラ、シアリスなどをはじめとして、ED治療薬とは体内から勃起不全を改善する働きを持つ、男性のための医薬品です。
グレード2
グレード2は「勃起し、それなりの硬さはあるが挿入には不十分」という状態を指し、ミカンの硬さに例えられます。
グレード1と比べると症状は軽度ですが、EDの可能性は高いといえるでしょう。
挿入するまではスムーズにいく方や毎回中折れに悩まされている方は、グレード2に当てはまる可能性があります。
「十分な硬さが得られないことでスムーズに挿入できない」「満足な性行為ができない」という場合、EDの可能性はより高まります。
しかしグレード2も、グレード0~1の場合と同様に、正しく治療することで症状の改善が可能です。
グレード3
グレード3は「勃起し、挿入できる硬さだが完全ではない」という状態を指します。
硬さの例えにグレープフルーツがあげられます。
グレード0~2と比べるとEDの可能性は低いといえますが、安心するのは早いかもしれません。
EDの定義は「性行為をする際、十分に勃起させることができない、または状態を維持できないことによって満足な性行為ができない状態」とされています。
グレード4
グレード4は「勃起し、満足のいく性行為をするために必要な硬さを満たしている」という状態を指します。
硬さの例えとなるのはリンゴで、EDの可能性はほとんどないと言っていいでしょう。
勃起するたびにグレード4の硬さを得られることが望ましいといえます。
ただし「満足のいく性行為をするために」というところがポイントです。
勃起してしばらくの間はグレード4の状態であっても、徐々にグレードが下がって、やがて0になってしまうこともあります。
性行為中にそのような現象が起こることを『中折れ』といいますが、これもまたEDの症状のひとつです。
たとえば、初めて性行為をすることになって緊張する時、最初はグレード4の硬さを保っていた陰茎が、緊張が高じることによってグレード2、そして1、やがて0になってしまうことがあるようです。
緊張による『心因性ED』の一種であると考えられます。
何回かチャレンジすることで改善できる場合もありますが、その1回がトラウマになって症状が続いてしまうパターンもあります。
また、アルコールを摂取して泥酔状態になった時に脳がスムーズに働かず、中折れをしてしまうことがあります。
この場合は、必ずしもEDの症状が続くわけではありませんが、アルコールの過剰摂取は生活習慣病につながり、その結果としてEDになってしまうことも考えられます。
「お酒を飲み過ぎて中折れしてしまった」という方は、酒量を控えるようにした方がいいかもしれません。
他の人の勃起状態でのサイズを知りたい
自分の勃起した陰茎のサイズは知っていても、「他の人の陰茎が勃起時にどの程度のサイズになるのか」ということについては、知らない方がほとんどなのではないかと思います。
自分の陰茎に自信を持てず、他の人のサイズを気にした経験がある方もいるでしょう。
日本の成人男性の場合、勃起した陰茎の長さは、平均で約14~15cm、陰茎の直径は約4cmといわれています。
このデータは、オナホールのメーカーやコンドームのメーカーが商品開発のために行ったアンケート調査の結果に基いて算出されています。
数十万人分のアンケート結果を集計しているので、信憑性が高いデータといえます。
ただし、回答内容は回答者の自己申告です。正確に勃起時のサイズを計測したわけではないようなので、上記の数値は目安として考えておいたほうがいいでしょう。
現在、陰茎のサイズアップを目的に開発された器具や、陰茎の増強が見込めるトレーニング法などがあります。
また血行を充実させることで陰茎の組織を鍛え、増大させる効果をあらわすとされるサプリメントもあります。
ED改善にも効果のある成分や精力増強効果のある成分が配合されている商品も数多くあります。
「平均のサイズよりも短い」「サイズを平均以上にしたい」という方は、それらのサプリメントを服用してみるものよいでしょう。
自分が正常な勃起状態なのか知ろう
パートナーと満足できる性行為をするためには、陰茎が正常に勃起しているかどうかを確認する必要があります。
一見、立派に勃起しているように見えても、勃起時のサイズや硬さが不十分であることがあります。
満足に性行為をするためには勃起していることだけではなく、勃起時のサイズ、硬さが充実していることも必要です。
何かしらの条件が満たされておらず、性行為に満足感を得られていない場合は、EDの可能性があります。
EDはいつ発症してもおかしくない病気であり、どんな男性にとっても軽視できないものです。
早期発見・治療をするために、普段から勃起時の状態を確認し、異常にすぐ気づくことが大切です。
EHSのような手軽に利用できる自己診断の指標も活用しつつ、チェックしてみましょう。
参考文献
All About 健康・医療
妊活ノート-医学博士の自宅で自然妊娠する方法-
ED治療薬
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