早漏(そうろう)とは、女性器(膣)への挿入前もしくは挿入してすぐに、意思に反して早く射精してしまう男性の性機能障害のことです。男性側が射精のタイミングをコントロールすることができず、早く射精してしまうことが原因で自身やパートナーにストレスがかかっている状態であり、男性の性機能障害の内、最も頻発している障害です。
成人男性の30%は何らかの早漏の症状を抱えているとされおり、早漏防止薬は、早漏を予防すべく、陰茎の刺激に対する過敏状態を緩和させたり、精神的ストレスを緩和させたりすることで早漏に効果を示す薬剤を指します。内服薬から外用薬、サプリメントまでその形状は多岐にわたっており、効果の程度や生活スタイルに合わせて柔軟に選択が可能です。
早漏の定義はさまざまでしたが、現在では国際性機能学会(International Society for Sexual Medicine, 以下「ISSM」といいます。)が主導となり検討され、客観的な事実や根拠に基づいた定義ができました。
原発性早漏症という性行為当初より発生している早漏症に対しては、膣挿入前の射精もしくは膣挿入後1分以内に射精してしまうことが1つの診断基準となっており、一方で続発性早漏症、つまり当初は性行為に問題はなかったが現在症状を有している方は、膣挿入前の射精もしくは膣挿入後3分以内の射精が1つの目安となっております。
しかしながら、パートナーが満足する時間は人それぞれであり、パートナーを満足させる前に射精してしまう状態を広義として早漏と呼んでいます。
ISSMは、早漏とはほとんどの性行為において、膣挿入前もしくは挿入後1分以内に、意思に反して早く射精してしまう状態をいい、射精をコントロールできないことにより精神的ダメージを被り、性行為自体を避ける傾向がみられるとしています。
膣内挿入から射精までの時間、男性自身の射精コントロールについての感覚(全くコントロールできないと感じているのかどうか)、早漏の状態にどれだけ精神的苦痛を感じているかの3点が診断のポイントとなります。
基本的には75~100%の性行為において早漏が発生し、膣内挿入から射精までの時間が1分以内と非常に短いか、もしくは膣内挿入までに射精してしまう状態が少なくとも6ヶ月以上継続していること
また射精コントロールすることができないことを男性自身が精神的な苦痛として感じていること、その他早漏の原因となりうる器質的要因が見当たらないことなどが早漏を診断する1つの基準となります。
男性自身の精神的苦痛は感覚であり客観的な判断が難しいため、苦痛の度合いを数値化するツールとして「早漏診断ツール」が用いられています。どれだけストレスを感じているかなどの質問項目を5段階で患者に回答してもらうことで数値化し、診断や治療の一助として使用されています。
膣内挿入時間の基準値には諸説あります。そもそも性行為の時間というのは人それぞれであり基準値にバラツキが生じるのは当然です。
短い時間の性行為を好む人もいれば、長い時間かけてゆっくり楽しむのを好む人もいるでしょう。若くて忙しいカップルであれば性行為にかける時間は短くなるでしょうし、週末などの時間がある日は性行為の時間は長くなるでしょう。また年をとると、勃起および射精にかかる時間は若いころより長くなります。
またこれはデータを取る際の問題ですが、性行為とは陰茎を膣内に挿入してから射精するまでの時間だととらえる人と、前戯の時間も含めて性行為と考える人とでバラツキが生じます。科学的には性行為の時間とは、陰茎の膣内挿入から射精までの時間と定義しています。
2005年に5ヶ国500カップルに調査がおこなわれ、膣内挿入から射精までの時間の平均値は5.4分でした。この数値は異性間のカップルにおいてのみ適用となり、同性愛者間ではまた違った結果が出てくるかもしれませんが、現状1つの基準値として膣内挿入時間は5~7分が一般的といわれています。
早漏は広義としてパートナーが満足する前に射精してしまう状態を指します。 ISSMでは2011年に20~50歳の女性1463名を対象とし、約7年におよぶ大規模試験の結果を発表しました。
7割近い女性にとって、性行為は大切な行為であると感じており、、膣内挿入時間の平均希望値は23.2分でした。また女性は男性が早漏であることに気をとられ、パートナーである自身を疎かにすることに不満を持っていることもわかりました。
2005年の東邦大学医学部が実施した「日本人夫婦300組を対象とした性生活に対する一般調査」では膣内挿入時間の平均希望値は15分でした。また2006年に大手コンドームメーカーであるデュレックス社が26か国26000人を対象におこなった「挿入時間と満足度」についてのアンケートでは、女性の56%が挿入時間は21分以上が希望と回答しています。
しかしながら実際の挿入時間はというと、オーストラリアのクィーンズランド大学の心理学者が2016年に発表したデータによると、世界中の500組のカップルを対象にした挿入してから射精までの時間は平均5.4分でした。
つまり世の女性は現在の性行為の挿入時間をより長くしたいと望んでいるという結果がでており、自身がおこなっている性行為が自己満足のためだけの行為となっていないか、パートナーと話し合うことが非常に大切です。
早漏防止薬は複数発売されており、内服薬や、直接陰茎に薬剤を塗布する薬剤が存在し、陰茎に直接塗布する薬剤はクリーム・ジェル・ローション・スプレーなど剤型は多岐におよんでいます。
またコンドームの内側に薬剤を塗布し、通常のコンドームと同様に使用するといった工夫が施された薬剤、また薬ではございませんが、早漏防止・改善を目的としたサプリメントなども発売されております。
生活スタイルに合わせ、ご自身がストレスを感じない方法を選択しましょう。日本では残念ながら早漏に適応がある内服薬は承認されていませんが、世界60ヶ国以上で発売されています。そのため利用の際には個人輸入するのがおすすめです。
プリリジーは世界で初めて早漏改善に効果があると認可された、世界初の内服薬です。
有効成分であるダポキセチンはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に分類され、神経終末におけるセロトニンの再取り込みを阻害する作用を有しており、脳内のセロトニン濃度を高めることでノルアドレナリンの過剰な分泌抑制を促進し、交感神経の亢進状態を抑制することにより性的刺激への過敏状態を改善し、早漏を予防します。
脳内の過剰興奮を抑えることで射精時間を長くする効果を有し、平均して射精に有する時間は3~4倍になるといわれており、性行為の1時間くらい前に内服すると、服薬後30分程度で効果が発現し始め、その効果は3~4時間持続します。
食事のタイミングもさほど気にすることなく服用でき、使い勝手の良い薬剤で、アメリカ人男性を対象とした臨床試験では、プリリジーを12週間、性行為毎に服用した結果、30mg服薬群では膣内挿入から射精までの時間が平均1分未満から3分超えに、60mg服薬群では平均1分未満から4分超えになったとの報告がなされています。
75%の人に効果があるといわれており、非常に高い早漏改善率を誇る薬剤ですが、残念ながら日本では未承認の状態なので、個人輸入して利用しましょう。
キシロカインは有効成分リドカインの局所麻酔薬です。 早漏の方は陰茎が性的刺激に対して過敏に反応することにより射精をコントロールできない状態になっていますので、キシロカインを陰茎に直接塗布することにより、陰茎を刺激に鈍麻な状態にして、性の感覚は今まで通りで射精までの時間を普段より長く持たせることで、早漏を予防する薬剤となります。
作用機序としては、感覚を司るNaイオンの働きを抑制、つまり陰茎で受けた刺激が神経を伝って脳に伝達されることを防ぎ、局所麻酔作用を示しています。
皮膚や粘膜から浸透したキシロカインが、小さな神経細胞の集合体であるニューロンの表面にあるNaチャネルに結合し、Naイオンがニューロンへの流入を阻害することで、脳に伝わる刺激が弱くなり陰茎の感度が鈍ります。
剤型は多岐にわたっており、クリーム剤・ジェル剤・ローション・スプレーなどがあり、ご自身の生活スタイルに合わせてご選択いただけます。スプレータイプは性行為前に陰茎に直接噴霧し、トイレなどで手軽に噴霧することが可能です。
ローションタイプはマッサージをしながら陰茎に直接塗り込むタイプであり、塗り込む際にはパートナーにお願いすると、よりパートナーとの関係を親密なものにできるかもしれません。
早漏改善を有するサプリメントは数多く存在し、その1つは亜鉛です。亜鉛には男性ホルモンであるテストステロンの産生を助け、性欲やエネルギーを高める効果があります。
研究では、男性の亜鉛欠乏と性機能障害とは関連があり、1日当たり11ミリグラムの亜鉛を摂取すると射精までの時間を長くすることが可能であるとされています。
その他、セロトニンの原料となるトリプトファンが含まれるサプリメントを服用すると、SSRIと同様に神経伝達物質であるノルアドレナリンによる交換神経優位が抑制できるため、早漏に効果があるとされています。
トリプトファンが含まれるサプリメントには、安眠サポートやペニス増大を謳ったサプリメントも多く、その他、天然成分であるカヴァは陰茎への血流を増加させ、性的刺激に対する反応を遅らせ、勃起を長く維持するのを助ける効果があります。
またハイビスカスエキスはストレスを和らげ、ロマンチックな性的感情を促進し、勃起を維持し射精をコントロールする能力を高めるといわれています。
その他インドの伝統医学であるアーユルヴェーダに基づいた天然成分配合のサプリメントも継続して服用することで、身体に負担をかけることなく男性機能を高め、結果として早漏に効果を示すといわれています。
早漏防止用のコンドームも発売されています。男性器側、つまり コンドームの裏側にのみ局所麻酔薬が塗布されている商品です。
局所麻酔薬の有効成分が神経線維に作用して、細胞の内側から感覚の伝導を司るNaイオンの細胞内へ流入するのを抑制することで、神経インパルス(神経線維の中を伝わっていく活動電位)の発生および伝導を抑制します。
そのため陰茎が性的刺激を受けても、うまく刺激が脳に伝導されなくなり、性的刺激への過敏状態を和らぎますので、膣内挿入から射精までの時間を長くすることが期待できます。
コンドームは性行為においてマストなアイテムであり、多くのカップルが使用しています。ちなみに日本人カップルのコンドーム使用率は50%未満といわれています。アメリカでは夫婦などの安定した関係性ではコンドーム使用率は20%未満と低いものの、カジュアルな関係性(つまり性に奔放な方たち)では50~65%となっています。
イギリスではピルが多く普及している関係でコンドームのみの使用率は30%未満と低いですが、ピルや避妊手術と併用している割合を加えるともう少し使用率は高いようです。いずれにせよ、世界的にコンドームは広く使用されており、早漏をパートナーに知られたくないと考える方によっては非常に有用な商品です。
早漏防止薬には先発医薬品と後発医薬品(ジェネリック医薬品)が存在します。先発医薬品はいわゆる新薬で、製薬メーカーが医薬品になる有効成分を見つけ出し、長い時間をかけて薬として開発し発売される医薬品です。
開発には多くの時間と莫大な金額がかかります。一方ジェネリック医薬品とは先発医薬品の特許が切れた後に発売される、先発品と同じ有効成分を含む医薬品です。
先発医薬品と効果・安全性などが同等であることを示すだけで開発でき、開発期間や開発にかかるコストを大幅に削減できるため、先発医薬品に比べ安価であることが特徴です。なるべくコストをかけずに治療することを希望される方はジェネリック医薬品を活用するといいでしょう。
プリリジーは日本では未承認ですが、世界では60か国以上で認可され、多くの早漏患者に使用されており、すでにジェネリック医薬品が存在します。
ダポキシー、デュラティア、プレジャックなど複数のジェネリック医薬品が販売されていますが、日本人に人気があるのはインドのサンライズレメディーズ社が発売しているポゼットのようです。
サンライズレメディーズ社は性生活に関する薬剤を専門に扱うメーカーであり、低価格であり、かつGMPに準拠した工場で薬を製造しており品質も信頼できるとして現在人気を博しています。
ポゼットはプリリジーと同じ有効成分ダポキセチンを含み、先発医薬品であるプリリジーと同等、射精までの時間を3~4倍にするといわれています。錠剤は30mg錠と60mg錠が存在し、基本的にはダポキセチンとして60mgまでを1日1回、性交の1時間前に水またはぬるま湯で服用してください。
初めて服用される方は30mgから、効果が時間できない方は1日最大90mgまで服用可能です。先発医薬品であるプリリジーと比較して薬価は1/6であり、プリリジージェネリックの中でも最も安価です。なるべく費用を抑えて早漏を改善されたい方に最適の薬剤です。
局所麻酔薬であるキシロカインにもジェネリック医薬品が存在します。先発医薬品として有名なものはエムラクリームという日本の佐藤製薬から発売されている外用局所麻酔薬です。
有効成分としてリドカインとプロピトカインを含み、両成分が混合すると液体となる性質を活用し、皮膚への透過性を高め、薬剤が皮膚から吸収されやすくすることで高い麻酔効果を示すクリームです。
早漏改善薬の他、皮膚へのレーザー照射時や、注射針および静脈留置針穿刺時の疼痛緩和に対しても使用されています。 クリーム剤であるため、塗布部位の形状や範囲に合わせて用量を調整することが可能です。
エムラクリームにはジェネリック医薬品が存在し、代表的なものにはネオンラボラトリーズが発売するプリロックスクリームが挙げられます。エムラクリーム同様、有効成分にリドカインとプロピトカインを含むクリーム剤で、陰茎に塗布すると陰茎の感覚が鈍麻され、射精までの時間を長くすることが可能です。
エムラクリームと同等の効果を有しながら、薬価はエムラクリームの約6割です。またエムラクリームは30gのチューブしかございませんが、プリロックスクリームには30gの他、内容量5gの小さいチューブも用意されており、少量から試してみたい方、また持ち歩きたい方におすすめです。
勃起不全(ED)と早漏、それぞれに有効な成分を配合し、両方の症状に有効な複合薬が発売されています。代表的なものにスーパーカマグラ、スーパージェビトラ、スーパータダライズが挙げられます。
スーパーカマグラは、EDに効果を示し、バイアグラと同じ有効成分であるシルデナフィル100mgに加えて、早漏を防止する有効成分であるダポキセチン60mgが配合されています。
スーパージェビトラは、EDに効果を示し、レビトラと同じ有効成分であるバルデナフィルを20mg、ダボキセチンを60mg配合しています。
スーパータダライズはEDに効果を示し、シアリスと同じ有効成分であるタダラフィルを20mg、ダボキセチンを60mg配合しています。
勃起不全を有する方の実に1/3が早漏にも悩んでいるといわれています。早漏は陰茎が刺激に対して過敏状態になっているのが主な原因とされていますが、一方で心理的要因による影響も大きく関係します。
勃起不全を有する方は勃起を維持するために強い刺激を陰茎に与える傾向にあり、その結果射精までの時間が短くなる、けれど射精までの時間が短いと満足いく性行為ができないと悪循環に陥ることで、早漏も合併してしまうケースが多いようです。 複合薬は勃起不全と早漏どちらも合併している患者様に最適な薬剤です。
早漏は精神的や心理的なストレスなどが原因で発症することが大半であるといわれています。仕事のストレスや家庭内不和、その他性行為のトラウマなどが要因で発症することがあり、一度早漏になると次もすぐ射精してしまうのではないかという不安やストレスから、交感神経が活発化され興奮状態になるというケースが多く見受けられます。
この場合はSSRI服用によりセロトニンの脳内濃度を挙げ、リラックス状態に導くと高い効果が期待できます。また陰茎が刺激に対して過敏な状態になっていることによる早漏の場合は、局所麻酔薬を陰茎に塗布し、陰茎の感覚を鈍麻させることが効果的です。是非ご自身の症状に適した治療薬をお選びください。
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ISSM
「インポテンツ」の研究と知識の交換を促進する目的で、1978年に国際性的医療学会により設立されました。当初は勃起不全の診断と、治療について研究がおこなわれていましたが、現在、人間のセクシュアリティの全分野の研究をおこなっています。
佐藤製薬株式会社
1915年に本郷区(現在の文京区)に佐藤幸吉氏によって創業された日本の製薬会社。時代が求める市場のニーズを的確にとらえ、人々の健康に役立つ、効果が高く、安全で高品質な医薬品の制作に携わっています。
大東製薬工業
1949年創業、1962年に「トノス」「ヒメロス」を発売して以来、少子高齢化という時代背景を踏まえ、性機能や更年期、さらには生活習慣病の予防や抗加齢(アンチエイジング)医療に対応する生活改善薬の開発に携わっています。
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