トリコモナスは性行為にともなう感染症の一種で、一度の性行為で感染する確率が高いため注意が必要な病気です。
世界では毎年およそ3億6,000万人がトリコモナス・梅毒・クラミジア感染症・淋菌感染症のいずれかに感染しています。
トリコモナスに関しては、日本人女性のおよそ5〜10%が生涯に一度は感染するとされており、それほど珍しい病気という訳ではありません。
感染してから長期にわたり無症状で経過するケースも多く、誰から感染したか特定することが困難なケースもあります。
次項以降でトリコモナスに関するよくある質問、および感染経路や男女の症状の違い、治療法・検査方法などについて解説します。
参考文献:厚生労働省「性行為感染症について」
トリコモナスは性行為にともなう感染症のため、以下の疑問を抱えたまま泌尿器科の受診をためらっている方が少なくありません。
はじめに、トリコモナスに関して多く寄せられている4つの主な質問についてお答えします。
トリコモナスはメタモナス類トリコモナス綱トリコモナス目トリコモナス科に属する、単細胞・嫌気性の寄生生物です。
アメーバやゾウリムシのような原虫で、0.1ミリメートル程度の大きさにしかならないため、肉眼では判別できません。
人間をはじめとする脊椎動物の体内に入り込んで感染症を引きおこします。人間の場合は性器内に入り込み、トリコモナス症を引き起こす点が特徴です。
トリコモナスは医学的に「膣トリコモナス症」と呼ばれており、女性が感染すると主に以下の症状が見られます。
トリコモナスに感染しても無症状で経過する例が多く、泡状の悪臭をともなうおりものが増加して発症に気づくケースが少なくありません。
個人差はありますが、正常なおりものが白色もしくはクリーム色をしているのに対し、トリコモナスに感染するとおりものの色が褐色もしくは黄緑色になるのが特徴です。
女性の膣内では乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)が粘膜細胞内のグリコーゲンを乳糖に代謝し、pH(ペーハー)を正常に保つことで細菌の侵入・繁殖を妨げています。
トリコモナスはグリコーゲンをエサとして繁殖するため、感染すると乳酸桿菌が消費する分が不足し、膣内が酸性に傾きます。
膣内が酸性に傾くと嫌気性菌や大腸菌などが増加するため、悪臭をともなうおりものが出やすくなるのです。
また、膣内に熱感をともなう強いかゆみがあらわれたり、外陰部が赤くただれたりするケースもあります。
トリコモナスに感染したにもかかわらず自覚症状が出ないまま経過すると、卵管に炎症を起こして不妊症を発症したり、流産・早産のリスクが増加したりする恐れもあります。
トリコモナスの正式名称は「膣トリコモナス症」ですが、女性だけでなく男性が感染するケースもあります。
コンドームを着用せずに膣トリコモナス症に感染した女性の膣内に陰茎を挿入すると、尿道に感染を引き起こす可能性があります。
女性に比べると男性がトリコモナスに感染しても、自覚症状があらわれにくい点が特徴です。
特徴的な症状としては、尿道のかゆみや排尿時の痛み、尿道からの膿の排出などが挙げられます。
トリコモナスへの感染が尿道に限局される場合は、日常的に排尿を繰り返すことで自然に治癒するケースも少なくありません。
トリコモナスは適切な治療により完治可能です。
一般的にはフラジールをはじめとする抗原中薬を10日間服用し、2〜3週間が経過したのちに再検査を行い、トリコモナスが確認されなければ完治となります。
女性の場合は抗原中薬の服用と並行して、膣内に錠剤を入れる治療も並行して行うのが一般的です。
また、女性の場合は月経血内でトリコモナスが繁殖する可能性を考慮し、次回の月経後にトリコモナスの消失を確認することが望ましいとされています。
トリコモナスの治療には主に以下3つの治療薬が用いられています。
フラジール | ファシジン | チニバ | |
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区分 | 先発薬 | 先発薬 | ジェネリック |
1錠あたり単価 | 82円~ | 42円~ | 45円~ |
有効成分 | メトロニダゾール | チニダゾール | チニダゾール |
製薬会社 | サノフィ | ファイザー | ザイダスカディラ |
それぞれの特徴について解説します。
フラジールはサノフィ・アベンティス株式会社が製造・販売している抗原中・抗菌薬の一種です。古くからトリコモナスを治療する際の第一選択薬で、膣トリコモナス症および細菌性膣症の特効薬として知られています。
フラジールには有効成分としてメトロニダゾールが配合されており、トリコモナス原虫のDNAを切断し、殺菌的に働く点が特徴です。メトロニダゾールを配合した治療薬は内服タイプと膣状とに分けられますが、身体の奥で作用する内服薬が第一選択薬です。
抗生物質の効果が期待できない嫌気性菌に対しても効力を発揮するため、偽膜性大腸炎やクロストリジウム属・ディフィシル菌による感染性腸炎の治療にも用いられています。
ヘリコバクターピロリ菌に対しても効果を発揮することから、胃炎や胃潰瘍を治療する際の第二選択薬となっています。
2012年には公知申請の特例により、赤痢アメーバーやランブル鞭毛虫(ジアルジア)、毛包虫(ニキビダニ)などに対する効果が追加承認されました。
フラジールはサノフィ社が開発した抗原虫・抗菌薬です。 トリコモナス症は、男性の尿道や女性の膣などにトリコモナス原虫が感染し性器周辺の痛みやかゆみ、排尿時の不快感、おりものの増加する症状としてあらわれます。 トリコモナス原虫のDNAを切断して殺虫殺菌作用を示し、トリコモナス膣炎だけでなく尿道の症状も併せて改善します。
参考文献:おくすり110番「メトロニダゾール」
チニバはインドに本拠地を置くザイダスキャディラが製造・販売しているトリコモナス治療薬で、後述するファシジンのジェネリック医薬品です。
チニバには有効成分としてチニダゾールが配合されており、トリコモナス原虫に対して殺虫的に作用し、発育を抑制して症状を改善へと導きます。
フラジールと同様に赤痢アメーバーやランブル鞭毛虫(ジアルジア)、毛包虫(ニキビダニ)などに対しても効果を発揮します。
チニバは安価で購入できる点がメリットの1つです。
チニバは、ザイダスキャディラ社が開発したトリコモナスの治療薬でファシジンのジェネリック医薬品です。 成分はチニダゾールで、トリコモナス原虫のDNA合成を妨げたり、DNAの機能障害を起こすことで生物細胞の分裂や増殖を抑えます。 トリコモナス原虫に対して殺虫的に効果を発揮するので治療が可能なります。
ファシジンは世界でも有数のグローバル製薬会社であるファイザーが製造・販売しているトリコモナス治療薬で、有効成分としてチニダゾールを配合しています。
チニダゾールはトリコモナス原虫のDNAを切断して機能障害を起こし、増殖を抑制する点が特徴です。
トリコモナス症以外にも、嫌気性菌感染症やジアルジア鞭毛虫症、感染性腸炎、細菌性膣症などの治療に用いられます。
ファシジンは、ファイザー製薬が開発したトリコモナス治療薬です。 膣トリコモナスは、トリコモナス原虫が性器内に入り炎症を起こしますが、性交渉以外にも、タオルや入浴といった所から感染する場合があります。 男性女性問わず感染しても自覚症状が少ない性感染症で、女性は男性よりも症状が強くなります。 具体的には、おりものの異常や膣または周辺部のかゆみや強い痛みが症状としてあらわれますが、ファシジンの服用で原虫の発育を抑えながら駆虫し症状を改善します。
次に、トリコモナス症の原因や感染経路について解説します。
トリコモナスは感染症の一種ですが、感染と聞くとウイルスや細菌をイメージする方も多いのではないでしょうか。
実際にはトリコモナス症は「腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis)」と呼ばれる原虫によって引き起こされる点が特徴です。
トリコモナス原虫は体長がおよそ0.1ミリメートルと肉眼では見えないほど小さく、性器内に入り込んで炎症を起こします。
世界中で多く見られる代表的な感染症はトリコモナス症・梅毒・クラミジア感染症・淋菌感染症の4つです。2020年には世界で1億5600万人がトリコモナスに感染しており、性行為感染症のなかでもっとも多い症例とされています。
トリコモナスは主に以下3つの経路で感染するのが一般的です。
トリコモナスの代表的な感染経路が性行為です。
膣トリコモナス症に感染した女性の膣内に男性器を挿入すると、男性の尿道に感染を引き起こす恐れがあります。
トリコモナスに感染した無症状の男性により、女性の膣内へトリコモナスが移動して発症するケースもあります。
トリコモナスは嫌気性菌のため、湿った下着や風呂上がりの濡れたタオルなどに接触した場合、感染を引き起こす可能性があります。
日本は世界でも有数の清潔な国とされており、通常は下着やタオルを使いまわすケースが少ない傾向にあります。
ただし、下着やタオルからトリコモナスが感染する可能性があることは知っておくべきです。
トリコモナスは便器や浴槽から感染するケースもあるため注意が必要です。
嫌気性菌のトリコモナスは水のなかでも数時間は生息できるため、感染者の後に入浴すると性器内にトリコモナスが侵入する可能性があります。
また、大便の際にトリコモナスが生息している水が撥ねるなどして、感染を引き起こす可能性もあります。
トリコモナスの潜伏期間は男女で異なります。
男性の場合はおよそ10日前後、女性の場合は5日から2週間前後が一般的です。
トリコモナスに感染した場合の症状は、男性と女性で異なります。
男性がトリコモナスに感染すると、排尿時の痛みや違和感、尿道からの膿の排出などを引き起こす可能性があります。
しかし、男性の場合は無症状で経過するケースが大半です。
女性がトリコモナスに感染すると外陰部のただれや膣内の炎症を引き起こし、悪臭をともなうおりものが出る傾向にあります。
無症状で経過した場合に卵管に炎症を起こすと、不妊症を発症したり、流産・早産につながったりするケースもあります。
トリコモナスの発症が疑われる場合には、速やかに医療機関を受診して適切な治療を受ける必要があります。
トリコモナスは原虫に感染して発症する点が特徴で、女性の場合は自然治癒が期待できません。
トリコモナスを予防するためには、以下の4点に注意する必要があります。
トリコモナスを予防するためには、性交の際にコンドームを着用するのが一番です。
男女いずれかが感染している場合であっても、コンドームの着用で感染を予防する効果が期待できます。
また、トリコモナスの感染を予防するためにも、セックスパートナーを頻繁に変えたり、海外で売春婦などと性交渉したりするのは避けた方が無難です。
トリコモナス原虫は月経血中で増殖するケースがあります。そのため、生理中の性行為は避けるようにしましょう。
嫌気性菌の一種であるトリコモナス原虫は湿った環境を好みます。そのため、使用済みの湿った下着やタオルを共有しないようにしてください。
男性は尿道にトリコモナスへの感染を起こすケースが多く、排尿にともなって原虫が排出されるケースも少なくありません。
パートナーの感染が疑われる場合、性行為後に排出すると発症予防につながるケースがあります。
トリコモナスを治療する際には、一般的に薬物療法が行われます。トリコモナスを治療する際の注意点や検査法、および再発を防ぐための方法について解説します。
トリコモナスを発症した場合、第一選択薬としてメトロニダゾール錠のフラジールを用いた薬物療法が行われます。
膣トリコモナス症を発症した女性の治療には、膣剤を併用するのが一般的です。
服用期間は1クール10日間で、2〜3週間経ってから検査を行い、トリコモナスが確認されなければ完治となります。
フラジールの服用中にアルコールを摂取すると、吐き気や頭痛、嘔吐、潮紅、動悸などを引き起こす恐れがあります。
フラジールの服用中はもちろん、服用後3日間はアルコールの摂取が厳禁とされています。
膣トリコモナス症を発症した場合の第一選択薬がフラジールです。
一般的な抗生物質とは作用機序が異なり、特に原虫や嫌気性菌に対して高い効果を発揮する点が特徴です。
フラジールはサノフィ社が開発した抗原虫・抗菌薬です。 トリコモナス症は、男性の尿道や女性の膣などにトリコモナス原虫が感染し性器周辺の痛みやかゆみ、排尿時の不快感、おりものの増加する症状としてあらわれます。 トリコモナス原虫のDNAを切断して殺虫殺菌作用を示し、トリコモナス膣炎だけでなく尿道の症状も併せて改善します。
チニバの有効成分であるチニダゾールにも、フラジールの有効成分であるメトロニダゾールと同様の効果が期待できます。
ファシジンのジェネリック医薬品であるチニバは、フラジールより安価で購入できる点がメリットの1つです。
チニバは、ザイダスキャディラ社が開発したトリコモナスの治療薬でファシジンのジェネリック医薬品です。 成分はチニダゾールで、トリコモナス原虫のDNA合成を妨げたり、DNAの機能障害を起こすことで生物細胞の分裂や増殖を抑えます。 トリコモナス原虫に対して殺虫的に効果を発揮するので治療が可能なります。
ファシジンはチニバの先発医薬品で、原虫や嫌気性菌に対して高い効果を発揮するチニダゾールが有効成分として配合されています。
お薬通販部では、フラジールをファシジンのおよそ半分の価格で購入可能です。
ファシジンは、ファイザー製薬が開発したトリコモナス治療薬です。 膣トリコモナスは、トリコモナス原虫が性器内に入り炎症を起こしますが、性交渉以外にも、タオルや入浴といった所から感染する場合があります。 男性女性問わず感染しても自覚症状が少ない性感染症で、女性は男性よりも症状が強くなります。 具体的には、おりものの異常や膣または周辺部のかゆみや強い痛みが症状としてあらわれますが、ファシジンの服用で原虫の発育を抑えながら駆虫し症状を改善します。
トリコモナスの検査方法は主に以下の3つが知られています。
鏡検法は尿道分泌物や膣内分泌物、尿を採取して顕微鏡で確認する方法です。結果がすぐに分かる点がメリットですが、目視による検査のため見落としのリスクをともないます。
培養法は尿道分泌物や膣内分泌物を採取し、膣トリコモナス培地で培養する方法です。検査結果が出るまでに時間が掛かる点がデメリットです。
核酸増幅法はトリコモナス原虫の遺伝子を増幅させて検出する検査法で、精度が高いうえ短時間で結果が出る点がメリットとなっています。
トリコモナス症を発症した場合、フラジールなどの抗原中薬を使用しない限り自然治癒することはありません。
そのため、トリコモナス症を発症しているパートナーと性交渉した場合、何度でも再発する可能性があります。
また、女性が膣トリコモナス症の治療を行ったとしても、パートナーの男性が治療しないと性行為により再感染する恐れがあります。
最後に、上記で紹介したトリコモナス治療薬を実際に服用した人の口コミを紹介します。
治療薬の効果が気になっている方はぜひご参考ください。