統合失調症とは精神障害の1つで、精神機能のネットワークがうまく機能しなくなることにより、思考や感情、行動を1つの目的に沿ってまとめる能力(統合力)が長期間にわたり低下するといった症状がでます。
妄想や幻覚といった症状が現れるようになり、意欲や自発の低下といった症状が現れたり、臨機応変に対応することが難しくなったりします。
およそ100人に1人が発症する病気であり、稀な病気ではありません。
発症要因はまだはっきりとわかっていませんが、遺伝的要因があることが知られています。薬や精神的なリハビリテーションにより回復を目指す治療を施します。
統合失調症は、症状の現れ方やその経過などから、破瓜型(解体型)、緊張型、妄想型、大きくこの3つの病型に分類できます。
ただし、これらの分類に当てはまらないタイプも数多くあることから、統合失調症は単一で発症する病気ではなく、複数の病気の集合体なのではないかとも考えられています。
この3つに分類できないタイプもしくは2つ以上の型の症状を有するタイプを分類不能型と呼ぶこともあります。
頻発する症状は各型によりことなり、また発症時期もことなりますが、いずれの型も、思考や行動、感情がまとまりにくくなるという共通する症状を呈します。
破瓜型とは、思春期から青年期にかけて発症することが多いタイプです。
思考が解体するような行動があるという特徴から、アメリカ精神医学会では、破瓜型(Hebephrenia)のことを解体型(Disorganized)と呼んでいます。
思春期から徐々に発症してきて、症状が強く発現するようになります。
これらの症状を呈するケースもよくあります。
症状は慢性化する傾向があり、また再発再燃を繰り返すことも珍しくありません。
そのため最終的に人格崩壊に陥りやすく、予後は不良といわれています。
今日では破瓜型に対する医学的な進歩により、比較的軽い症状を抑えることが可能になってきており、人格が崩壊することは少なくなってきました。
緊張型は青年期になどの若い年代が、急激に発症することが多いタイプです。
筋肉の硬直をともなうことが多く、極度の緊張状態が引き金となって発症し、特異的な興奮状態もしくは昏迷状態といった症状を引き起こします。
じっと動かないと思ったら、突然やたらと動き回り始めたり、あるいは不自然な姿勢で静止したまま不動となったりするケースもあります。
無目的の動作を繰り返したりするなどの奇妙な行動が見受けられるのが特徴です。
診断する際には、昏迷状態、興奮状態、不適切な姿勢の保持、筋肉の硬直、動かそうとする意思に反して身体が動かない状態などの内、最低1つ以上の臨床像を呈することとされています。
再発もまれではなく、再発すればするほど破瓜型の病態が近づいていくことが知られています。
昏迷状態と興奮状態を繰り返しますが、人格が壊れることは稀であり、破瓜型より予後は良いとされています。
寛解期と呼ばれる、症状が残っているものの、患者自身の行動に影響をおよぼさない程度まで回復し、その回復状態が維持され、かつ初期の統合失調症の診断基準を満たさない状態においては、人格は元に戻ることもあります。近年では、発症数の減少が報告されています。
妄想型はその症状として幻覚や妄想が主となります。中には幻聴がある方も見受けられます。
これらの現実にないものをあるように感じる幻覚症状や
など現実にはあり得ないことを強く信じこむ妄想が見られます。
他にも「自分の思考が他の人に操られている」といった自我意識の障害を発現するケースもあります。
30歳前後に発症することが多く、破瓜型や緊張型に比べて発症年齢が遅いことが特徴的です。
感情の起伏がなくなる、意欲が低下する、会話の量が低下する、思考力が低下する、その他、人とのかかわりが億劫に感じるなどの陰性症状はあまり見られません。
また対人コミュニケーションは良好に保たれるケースが多く、人柄の変化もあまり見られません。
薬物治療へも比較的感応的であり、予後は良好とされています。
しかし中には、薬物治療に反応せず、慢性的に症状が持続してしまうケースも報告されています。
統合失調症の症状は、陽性症状と陰性症状の2つに分類できます。
陽性症状とは、幻覚や妄想、自我意識の障害など、本来あるはずのないものがあるように感じられる症状であり、患者自身が体験し本人にしかわからない症状です。
幻覚は実際にはないものがあるように感じており、視覚や聴覚、触覚、嗅覚などのさまざまな感覚において発現します。
もっとも頻発するのが幻聴であり、自分の悪口をいっているように聞こえます。
また耳からではなくテレパシーのように頭に響いてくると訴える患者もいます。
他の人には見えないものが見える幻視、普段感じない身体の何かしらの症状を感じる体感幻覚なども陽性症状に分類されます。
一方、陰性症状はある程度客観的に評価ができる症状です。
これらの感情の平板化(感情鈍麻)、思考の貧困化、意欲の欠如、自閉(社会的ひきこもり)などが陰性に分類される症状となります。
統合失調症の症状経過は個人差が大きいのですが、
の4つの段階に分類され、それぞれの時期の症状はことなります。
また経過は一方向ではなく、両方向に推移します。
たとえば、休息期や回復期に病気を誘発するような大きなストレスを受けると、急性期の症状が再発してしまい、急性期に戻り、その後再び休息期、回復期へと移行します。
再発が繰り返されると、休息期・回復期に必要な期間は長くなる傾向があります。
一般的に、急性期は数週間単位で経過、休息期は数週間〜数カ月単位で経過、回復期は数カ月〜数年単位で経過するといわれています。
前兆期は、病気発症の前触れのような症状が起こり始める時期です。
特に目立つ症状はないのですが、なんとなく気分が晴れない、なんとなく身体の調子がおかしいなどと感じるようになります。
代表的な症状には、
これらの症状は不安障害やうつ病の症状とも似通っているため、すぐに統合失調症と診断されない場合があります。
その他、頭痛や食欲不振といった自律神経に起因する身体的症状も出やすい時期です。
しかしこの程度の症状は誰もがよく経験する範囲内であり、本人も周囲の人も、特に初発の場合は統合失調症への罹患に気づかないケースが多くあります。
再発の場合は、前回の前兆期における症状と今回の症状が似通っていると統合失調症を診断がしやすく、早期に治療を開始することが可能です。
前兆期に続いて現れるのが急性期です。
幻覚や妄想といった統合失調症に特徴的な陽性症状の発現が目立ち始める時期です。
幻覚や妄想は患者自身が強く自覚する症状であり、不安や緊張、恐怖、切迫感といった感情が強く引き出されてしまいます。また周囲の音などに敏感に反応するようにもなり、興奮状態が引き起こされるケースもあります。
これらの影響により、食事や睡眠のリズムが崩れ、昼夜逆転の生活になったり、他人からみておかしな行動を取ったりする例も報告されています。
幻覚や妄想により頭の中が混乱してしまっているのか、周囲とのコミュニケーションがうまくいかないケースも多くみられるようになります。
脳が働きすぎの状態となっており、対人関係のみならず日常生活にも支障が出てきます。
ただし、自分の状態がいつもと違うとは認識していますが、自分が病気であると自覚できていないケースも多いのが特徴的です。
急性期の期間は通常、数週間単位ですが、数か月要することもあります。
基本的には症状から統合失調症と診断され、治療が開始されます。
症状が急激に悪化する場合もあり、自分を抑えることのできない衝動に襲われたり、希死念慮があったりする患者には入院治療が選択されるケースもあります。
幻覚や妄想、興奮状態などの嵐のような急性期が過ぎると、脳・心・身体のエネルギーを大量に使ってしまったことが原因なのか、一気に元気がなくなるのが休息期です。
急性期に見られた幻覚や妄想に代表される陽性症状は少なくなるのですが、今度は感情の起伏が乏しくなり(感情の平板化)、意欲がわかない、気力がわかない、身体がだるい、何もする気がないといった陰性症状が発現してきます。
脳がほとんど働かなくなり、強い眠気によりいつも眠っていたり、自分に自信を持つことができず、引きこもりになったりもします。
脳の機能や働きは急性期よりは良好な状態になっていますが、発症前や前兆期と比較すると、まだまだ動きが悪い時期です。
この時期は精神状態が非常に不安定な時期であり、ちょっとしたきっかけにより、急性期に逆戻りしてしまうケースも多くあります。
治療は数週間から数か月単位を要します。
薬物治療や精神療法をおこないながら、十分に精神的にも心理的にも休養を取り、回復に十分な期間を充てることが大切です。
この時期の治療が予後の状態を大きな影響を与えるともいわれており、心理社会的療法を含むリハビリテーションなどが併用されるケースもあります。
休息期の次に現れるのが回復期です。休息期に見られた陰性症状は徐々に治まっていき、無気力な状態からは徐々に脱していきます。
脳の働きは、回復期初期には発症前の6~7割程度ですが、回復期後期には8~9割程度にまで回復していきます。
しかし、回復期には認知機能障害が発現することが知られています。
認知機能とは、記憶力、理解力、計算力、学習能力、言語能力、判断力などの知的な能力全般を指します。認知機能に障害が出ると日常生活が困難になるケースが考えられます。
具体的な症状としては、
これらの症状は回復するにつれ弱くなる場合もあれば、ある程度残ってしまうケースもあり、うまくつき合っていく必要があります。
ゆっくりと生活の範囲を広げていきましょう。
統合失調症の発症メカニズムは不明であり、なぜ発症するのかについては未だに解明されていません。
根本的な要因は不明ですが、遺伝的要因が大きいことは徐々にわかってきています。
遺伝の影響度は各種研究によりことなりますが、双子を用いた研究で遺伝率は80%を超えると報告されています。
その他、神経伝達物質の脳内における化学的不均衡などの脳の変化、几帳面な気質や生活、心理社会的なストレスなどの環境因子により発症するといわれています。
心理社会的なストレスとは、自分のおかれている環境にゆがみがあるが、自分の意思や努力ではどうしようもできない状況であり、過度のストレスにさらされている状態を指します。
未だ発症メカニズムが明らかとなっていない統合失調症ですが、各種研究により遺伝率が高いことは判明しています。
2003年に発表された双子を用いた研究のメタ分析(複数の試験結果を統合し、より高い見地より物事を判断する手法)では、遺伝率は80%を超えると報告されています。
しかし双子を用いた別の研究では、たとえ一卵性双生児であったとしても置かれた環境により発症しないケースもあり、2人とも発症する割合は約50%という報告もあります。
遺伝的な要素は確実に存在しますが、発症要因は遺伝的な要素のみではありません。
親から子供への遺伝について、母親が統合失調症である場合、その子供が統合失調症になる割合は約10%といわれており、群を抜いて特筆すべき高さでもありません。
また発症リスクを高める効果を有する強い遺伝子の存在は知られていません。
つまり統合失調症は遺伝する病気ではないものの、統合失調症になりやすい体質が遺伝することで、遺伝的な要素を含んでいるものと考えられます。
統合失調症の方の脳を調べてみると、
などの状態が認められる場合があります。
しかし、この脳の変化がどのように統合失調症の発症に関与しているのかはわかっていません。
また母親のお腹の中にいる胎児の時に
などで、脳に機能的な障害が生じてしまった場合、成長期の神経系の発達および成熟に影響をおよぼす可能性があります。
それにともない統合失調症を発症するリスクが高まるといわれています。
さらに統合失調症の治療薬にはドパミン抑制作用があります。
ドパミンは統合失調症に特徴的である幻覚や妄想を抑える作用が認められていることから、何らかの形でドパミンが統合失調症の発症に寄与していると考えられています。
医学的根拠は解明されていませんが、脳内の神経伝達物質であるドパミンなどが化学的に不均衡になることにより、統合失調症が発症するともいわれています。
統合失調症を発症する人には一定の気質・性格傾向があるといわれいます。
このように比較的おとなしいタイプであることが例にあげられます。
個人の性格は5つの要素(開放性・外向性・調和性・勤勉性・精神安定性)により構成されている「ビッグ・ファイブ」という考え方があるのですが、その内の開放性と統合失調症の発症率の関連を示唆する研究もあります。
開放性とは、新たな知的経験や文化的経験に開放的な傾向を有し、好奇心や想像力に富んでいるという特徴があります。
統合失調症を発症しやすい人は、この開放性が低い傾向にあるといわれています。
統合失調症すべての人にあてはまるわけではないのですが、発症に何らかの形で関連しているのではないかと考えられています。
統合失調症の発症原因の1つに「環境因子」があげられます。かつてはこの環境因子が統合失調症の発症に関わる主要因だと考えられていましたが、現在はあくまで発症の一要因にすぎないと捉えられています。
環境因子としては、心理社会的な因子であるHEE(高い感情表出家族)やダブルバインドが注目を集めています。
HEEとは、家族が患者に向ける感情が高く、批判的であったり、敵意を持っていたり、また逆に構いすぎたりする状態(高い感情表出)のことをいい、患者のストレスに直結し、統合失調症の再発率と密接に関連しています。
またダブルバインドとは、言葉と実際の行動に矛盾があるなどの状態を指します。
たとえば親が子供に「おいで」といっておきながら、実際にくると突き飛ばすなどがそれに当たります。このような矛盾環境が極度のストレスとなり統合失調症の発症に結びつくといわれています。
環境因子は、本人の努力や意思だけではどうしようもない状態となっていることが多く、積もり重なるストレスが、いつしか許容量を超え、統合失調症の発症の繋がってしまうのではないかと考えられます。
統合失調症の治療は、薬物療法とリハビリテーションの併用が基本となります。
薬物療法では、抗精神病薬などを投与し、脳内の神経伝達物質のバランスの崩れを調整し、正しい状態に導くことを目指します。
リハビリテーションとは患者本人のみならず、家族の方に向けてもおこなわれるもので、心理社会的療法とも呼ばれます。
患者本人にとっては、自分の気持ちを見つめなおし、患者自身が妄想や幻覚といったものの妥当性を検証できるようにする療法であり、社会的生活機能の回復を図る目的があります。
同時に家族の方には、どのように患者自身と接したらいいのかを指導します。
この2つの治療法を併用すると、再発率が著しく軽減できることが示されており、注目を集めています。
薬物療法としては、抗精神病薬などが統合失調症の治療に用いられます。
抗精神病薬は定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬の2つに大別されます。
定型抗精神病薬とは主にドパミン受容体拮抗作用も持つ薬剤であり、幻覚や妄想といった陽性症状の軽減に効果を示します。
しかし、陰性症状や認知機能障害をさらに悪化させたり、手足の震えなどの錐体外路症状を起こしたり、性機能障害などの副作用が懸念されていました。
そこで副作用が少なく、陰性症状や認知機能障害に対しても効果を有する非定型抗精神病薬が開発されました。
非定型抗抗精神病はドパミン以外の受容体にも作用します。
その他、不安障害やうつ病、不眠症といった症状が強い場合には、抗不安薬や抗うつ剤、睡眠薬が用いられる場合もあります。
統合失調症の治療にはリハビリテーションも欠かせません。
総じて心理社会的療法ともいい、非薬物療法全般を指す言葉として使われています。
まず、統合失調症の発症に至ったと考える信念や歪んだ考え方を患者本人が認識できることを目指す認知行動療法がおこなわれます。
幻覚・妄想への非合理性を自覚し自分なりの対処方法を見つけていくことが目的となります。また社会性や生活機能を取り戻すため、ソーシャルスキル・トレーニングというプログラムを実施することもあります。
いわゆるロールプレイング方式のトレーニングであり、ある状況にどのように対応し、どのようにコミュニケーションを取っていいたらいいかを学びます。
また患者のみならず、ご家族にも心理的な教育が施されます。
患者の病気を理解し、接し方の習得を狙った取り組みです。
統合失調症の治療薬としては主に、定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬の2つが使用されます。
定型抗精神病薬は従来型と呼ばれており、脳内の神経伝達物質の内、ドパミンのみを抑制する作用を有し、第一世代の抗精神病薬ともいわれております。
比較的副作用が多く発生する傾向にあり、改良版として世に出てきたのが非定型抗精神病薬です。こちらはドパミンだけではなくセロトニンなどその他の神経伝達物質の抑制作用を有しており、副作用が軽減できており、第二世代の抗精神病薬と呼ばれています。
統合失調症は原因が解明されていませんので、基本的に対症療法が中心となります。
各種症状を調整する薬剤として、抗不安薬や抗うつ剤、睡眠薬が用いられることもあります。
抗精神病薬は統合失調症の主な治療薬であり、定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬の2種類があります。
定型抗精神病薬は「従来型」もしくは「第一世代の抗精神病薬」とも呼ばれており、脳内の神経伝達物質であるドパミンのみを強力に抑制する作用を有します。
ドパミンは脳内においてさまざまな経路を通り、多くの身体の機能に関連している物質です。脳の中脳辺縁系という部位に作用することで、幻覚や妄想といった統合失調症に特有の陽性症状を改善いたします。
けれども、中脳皮質系という部位にも作用してしまい、感情平板化などの陰性症状を逆に悪化させたり、認知機能障害を誘発したりと、副作用が発生する可能性があります。
その他、黒質線条体系という部位に作用し手足の震えなどの錐体外8路症状と呼ばれる運動機能障害が、また漏斗下垂体系という部位に作用し、性機能障害などの副作用が現れることがあります。
多くの副作用をともなうため、問題視されており、その改良版として世に出てきたのが、非定型抗精神病薬であり、「第二世代の抗精神病薬」と呼ばれています。
ドパミンのみならずセロトニンなどの神経伝達物質に作用し、第一世代と比較して副作用の軽減が図られています。
また第一世代とことなり、陰性症状や認知機能障害に対しても効果を示します。
過度の不安や緊張といった不安障害の症状が強く出ている統合失調症の患者には、抗精神病薬と併せて抗不安薬が処方されることがあります。
抗不安薬はあくまで、抗精神病薬の効果をより引き出したり、抗精神病薬では対処することが難しい症状に対応したりするための、あくまで補助的な薬として、統合失調症の患者に使用されます。
抗不安薬とは、活発になっている神経の活動を抑制して、不安な気持ちの解消を促す薬剤です。統合失調症では不安や緊張といった症状が出やすい傾向があります。
これまでできていたことができなくなる、自分はダメな人間になってしまったのではないかという感情が不安や焦燥を生むとされています。
実際、統合失調症の評価にはPANSSという評価尺度や、BPRSという簡易的な評価尺度が使われるのですが、総合精神病理尺度として不安が評価尺度の1つとなっております。
特に急性期に不安症状が出やすく、急性期以降も、思考の短絡化という、順序立てたり優先順位をつけたりして物事を考えられなくなり、少しの不安により死しか解決策がないと自殺してしまうケースもありますので、不安感の解消は非常に大切です。
抑うつ症状がある患者には、抗精神病薬と併せてうつ病患者に投薬される抗うつ剤が処方されることがあります。
抗うつ剤はあくまで、抗精神病薬の効果をより高めたり、抗精神病薬では対応することが困難な症状に適用されたりと、あくまで補助的な役割の薬として、統合失調症の患者に処方されます。
実際抑うつ症状は多くの統合失調症患者に認められており、常時約25%の患者が抑うつ症状を有しているといわれています。
抑うつ状態となる原因は多岐にわたります。
統合失調症の症状自体によるもの、生活のしづらさや生きにくさといった心理社会的な要因によるもの、病気による絶望感による将来の悲観などにより発症していると考えられています。
原因を特定し、対処方法を探るのが一番いいのですが、原因が1つではなく多岐にわたるのが一般的であり、特定は非常に困難です。
そのため、抑うつ症状を有する統合失調症の患者には、抗うつ剤を短期間服用し、様子を見ていくことが適切とされます。
抑うつ症状は急性期の後に見られることが多く、ひどい場合は自殺に繋がるおそれがありますので、抑うつ症状が非常に強い場合は対応することが重要です。
不眠症の症状を訴える患者には、抗精神病薬と併せて睡眠薬が投与されることがあります。
睡眠薬はあくまで、抗精神病薬の効果を向上させたり、抗精神病薬では対応することが難しい症状に使用されたりする、あくまで補助的な役割の薬として使用されます。
前兆期から睡眠途中で目が覚めてしまい眠れない、夜中に何度も目を覚ましてしまう、早朝に目覚めてしまうといった不眠症状が多く認められます。
そして発症後の急性期には不眠症状を訴える人がますます増加する傾向があります。
睡眠薬とは一般的に亢進状態になっている神経の活動を抑えるなどで、眠気を催させる薬剤です。ベンゾジアゼピン系と呼ばれる、脳内の興奮を抑制するGABAという名の神経伝達物質の働きを活発にすることで、脳全体の活動を抑えて眠りを催させる睡眠薬が用いられます。
ただ睡眠薬は一般的に長期間服用すると、耐性ができ依存性が増す可能性があります。
また急に薬剤量を減らしたり中止したりすると、離脱症状が大きくでることが知られています。
そのため、統合失調症で不眠症の症状を訴えられる方は、あくまで抗精神病薬では症状の改善が認められず、その他、非薬物療法でも効果が期待できなかった患者を対象として、短期間の投与にて症状を調整するケースも多々あります。
どんな薬にも副作用があるように、抗精神病薬にも副作用が存在します。
特に定型抗精神病薬(従来型もしくは第一世代の抗精神病薬)には多くの副作用が認められています。
抗精神病薬を服用して副作用が発現した場合、その副作用を抑える薬を服用する場合があります。
定型抗精神病薬に見られる副作用は、定型抗精神病薬が脳内神経物質であるドパミンのみを強力に抑制することで発生します。
幻覚や妄想といった陽性症状に関与する脳の中脳辺縁系に作用するドパミンの抑制以外に、黒質線条体系という錐体外路症状に関与する経路も通るドパミンを抑制することで、 ・手足の震え、 ・足がむずむずする、 ・舌が出たまま、 ・目が上を向いたままになる、 ・じっとしていられなくなる、 ・動作が鈍くなる、 といった副作用を引き起こしてしまいます。
このような症状が発現した場合には、抗パーキンソン病薬で対応するケースも多々あります。
その他、一般的な副作用として 便秘や排尿障害、 口渇、 めまい、 起立性低血圧、 性機能低下、 不整脈、 高血糖、 などが認められています。
これらの症状には便秘薬などそれぞれの対症薬にて対応する場合もあります。
統合失調症の治療においては、薬物療法とリハビリテーションを併用することで再発率が劇的に抑えられることがわかっています。
統合失調症のリハビリテーションとは、統合失調症の症状による「生活のしづらさ」を改善して、安定したスムーズな生活を送ることを目的に実施されます。
内容としては、デイケア(外来治療)、作業療法、社会生活技能訓練、心理教育などのプログラムがあります。
家族に向けてのプログラムもあり、患者のご家族に対して心理教育を実施すると、統合失調症の長期的な再発防止に非常に効果があることがわかっており、積極的に実施されています。
デイケアとは各医療機関で実施される外来における治療の1つです。
生活技能訓練やレクリエーション、料理や軽い作業など、さまざまな活動を通じて対人コミュニケーション能力の改善を図り、社会にスムーズに復帰できる準備をおこなうプログラムが組まれています。
主に看護師や作業療法士、臨床心理士といった病院に勤める専門の方々が対応してくれます。症状は改善したけれども社会に復帰する勇気や自信がない場合などには参加することをおこなっていたします。
定期的に参加すれば規則正しい生活リズムが身に付くという利点もあります。
医療機関だけではなく、精神保健福祉センターや保健所などでも実施されている場合もありますので、住居周辺地域の自治体の活動を確かめてみましょう。
作業療法とは、作業療法士の指導のもとおこなわれる療法です。
さまざまな作業がありますが、入院中の作業療法には、手工芸品の制作や、パソコンでの作業、園芸、音楽、ストレッチ体操、軽いスポーツなどがあげられます。
急性期後からの開始を目処とされています。
楽しみや充実感、達成感といった感情の回復を図るのが目的としています。
回復期以降は、日常生活に戻ることを前提に、買い物や料理、掃除、洗濯、金銭管理などの生活行為そのものをおこなったり、対人コミュニケーションを練習したり、復学や復職へ向けた準備をおこなったりします。
作業療法をおこなうことで、患者は、作業の説明を聞き、目で見て、頭で考え、理解した上で判断して行動を起こすという一連の作業工程を経験でき、心身機能の活性化が期待できます。
社会生活技能訓練はSSTとも呼ばれており、Social Skills Trainingの略です。
病気や薬との付き合い方、対人関係を良い状態で維持するための方法、ストレスにさらされたときの対処方法などを学ぶことで、回復を図り、また生活の質を向上させることを目的としたトレーニングです。
統合失調症では陰性症状により社会と断絶してしまうケースが多く、再び社会に復帰するために、社会生活を疑似体験することで、スムーズに社会に復帰できるようにとプログラムされています。
実際に日常生活で起こりそうなテーマを設定して、訓練を受けたトレーナーやSST認定講師などが担当しロールプレイングを実施します。
デイケアのプログラムとして実施されることもあります。
心理教育とは、病気の原因・症状・治療法についての正しい知識を習得することで病気への理解度を深めるためのプログラムです。
病気と今後どう付き合っていくのかを考えたり、どのように治療をおこなっていくのか前向きな反応を引き出したりすることを目的に実施されます。
患者のみならず、家族の方にも実施されます。
家族の方が病気の理解を深めることで、患者への接し方や態度が変化します。
これは患者のストレスの軽減につながり有効とされています。
実際に再発率は家族への心理教育を実施することで、長期的に抑えられることがわかっています。
また家族の方も周囲からの偏見などにより孤立するケースも多く、カウンセリング的な一面も担っています。
統合失調症は、感情や考えをうまくまとめられなくなる精神疾患で、脳の機能に異変が生じているといわれています。
約100人に1人は罹患するといわれており、決して珍しい病気ではありません。
発症原因は具体的には解明されていませんが、脳の機能異常、遺伝的要因、またはストレスなどが関与していると考えられています。
しかしながら、薬物療法やリハビリテーションにて十分に回復し、社会生活に復帰することが可能です。
一般的に病気の認知度が低く偏見に悩まされる例も多いですが、病気を知り、自分の感情を見つめなおすことで要因を探り、自分の状態を受け入れることで、徐々に回復していきます。
家族や周囲の人とともに焦らずゆっくりと治療し、克服していくことが大切です。
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