てんかんとは、脳の神経細胞の一部に突然異常な電気信号が発生することで、てんかん発作が引き起こされ、その発作を繰り返す精神障害です。
脳のどの部位で異常信号が発生するかによって、引き起こされる発作のタイプが異なります。
よく知られているのは強直発作という手足が突っ張り、身体が固くなってびくびく震える発作ですが、その他にも全身の力が急に抜けるといったタイプの発作もあります。
およそ100人に1人の割合で発症する病気であり、日本には60~100万人の患者がいるといわれており、決して珍しい病気ではありません。
予防も完治も不可能な病気ですが、治療により発作が起こらないようコントロールすることが可能です。
ADHD(注意欠陥多動性障害)とは、精神障害であり発達障害のひとつです。
主に多動性、不注意、衝動性の3つの症状があることが知られています。
ADHD(注意欠陥多動性障害)の人は上記のような行動が目立ちます。
子供の病気と認識されているようですが、大人のADHD患者も珍しくなく、また近年増加傾向にあります。
年齢や発達段階にそぐわない行動により、日常生活や学校生活、職場でのコミュニケーションに障害をきたす恐れがある病気です。
てんかんの原因は以下のように多岐におよびます。
遺伝子異常も関与していることが最新の研究でわかってきています。
しかしながら、実際に原因を特定できる「症候性てんかん」は全体の症例の半分以下であり、全体の約6割は発症要因を特定できない「特発性てんかん」であるのが現状です。
小児では生まれつきのてんかんが多く、高齢者では脳血管障害や神経変性によるてんかんの割合が増加します。
症候性てんかんとは、てんかんが発症した要因が特定できるてんかんを指します。
てんかん全体の約4割を占めるとされています。
上記などが乳幼児期のてんかんに多く認められます。
一方高齢者では以下の症状が多く認められています。
高齢者では脳血管障害が原因であるてんかんがもっとも多く報告されています。
特発性てんかんとは、検査をおこなっても異常が検出されず、てんかんの発症要因が不明であるてんかんを指します。
てんかん全体の約6割を占めるとされており、まだまだてんかんの発症要因の特定には課題が多く残っているのが現状です。
遺伝により「てんかんになりやすい傾向」がある可能性が指摘されていますが、不明瞭な点が多く、研究が進められています。
小児の特発性てんかんは、とくに遺伝子異常の可能性が示唆されています。
また、小児期の特発性てんかんは内服治療の高い効果が認められる症例が多く、一部では成長とともに自然によくなるケースも報告されています。
参考文献:epiサポ「てんかんになる原因」
てんかんは脳内にて、神経の異常な興奮信号が広がることにより発現します。
抗てんかん薬は、過剰な興奮が起こらないよう興奮系を抑制するタイプと、興奮の広がりを抑える抑制系のタイプの2種類が存在します。
また、これまでとはことなる作用機序を持つ新たなタイプの抗てんかん薬も開発されています。
現在、多くの種類の抗てんかん薬が販売されており、発作のタイプや、患者の年齢・性別・体重・併用薬・合併症などを考慮して、その方に合うお薬を選択していきます。
単剤による治療からスタートし、効果がない場合にはお薬の切り替えや追加を検討します。
ゾニセップ | ラミクタール | ガバセット | ガバドン | |
---|---|---|---|---|
種類 | 興奮系の抗てんかん薬 | 興奮系の抗てんかん薬 | 抑制系の抗てんかん薬 | 抑制系の抗てんかん薬 |
有効成分 | ゾニサミド | ラモトリギン | ガバペンチン | ガバペンチン |
特徴 | ゾニセップはサンファーマ社が開発した抗てんかん薬で、先発薬エクセグランのジェネリック医薬品です。 ナトリウムチャネルの活性を抑制して、欠神発作やミオクロニー発作の他、パーキンソン病の手や足の振るえ強ばりの治療に使用されています。 |
ラクミタールはグラクソ・スミスクライン社が開発した抗てんかん薬・双極性障害治療薬で、ナトリウム受容体を抑制して、脳内の興奮を鎮める効果があります。 | ガバセットはバイオファーマ社が開発した抗てんかん薬で、先発薬ガバペンのジェネリック医薬品です。 興奮神経系へのカルシウムイオンの流入や、興奮性の神経伝達物質の遊離を抑制して、てんかんの発症を抑えます。 |
ガバドンはノールファーマ社が開発した抗てんかん薬で、先発薬ガバペンのジェネリック医薬品です。 抑制系のアミノ酸GABAと似た働きでカルシウムチャネルを持続的に阻害し、興奮神経伝達物質の遊離を抑制して、てんかん発作を改善します。 |
価格 | 1錠 32円~ | 1錠 115円~ | 1錠 44円~ | 1錠 39円~ |
脳内において、ナトリウムイオンやカルシウムイオンが細胞膜を通過し細胞内に入ると、神経細胞は興奮します。
そのためナトリウムイオンやカルシウムイオンの働きを抑えることで、過剰な興奮が発生しないようにする抗てんかん薬が開発されています。
また、中枢神経全般の興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸を抑制する抗てんかん薬もあり、これらの薬は脳内の過剰な興奮が起こらないように抑制する薬として「興奮系」の抗てんかん薬といわれています。
代表的なお薬としては以下があります。
各お薬でNaチャネル、Caチャネル、グルタミン酸への作用の度合いがことなり、フェニトインは強直発作に、カルバマゼピンは部分てんかん発作の第一選択薬として、バルプロ酸は全般てんかん発作の第一選択薬として広く使用されています。
カラゼピンは、マイファルマアイラックサン社が開発した向精神作用性てんかん治療薬・躁状態治療薬で、テグレトールのジェネリック医薬品です。脳内の神経細胞の興奮と抑制のバランスで働きを保っていますが、バランスを崩すと不調をきたし過度の興奮によっててんかん発作が起こり、全般性発作・部分発作・原因不明の発作の3つに分類されます。
トピロールは、サンファーマ社が開発した抗てんかん薬で、トピナのジェネリック医薬品です。てんかんの発作には2種類あります。脳の全体から突発的な興奮が始まる全般発作と、脳の一部から始まる部分発作です。脳に異常な電気信号が発生することで、全身痙攣や意識障害などが起こります。他の抗てんかん薬で十分な効果が認められない場合のてんかん患者の部分発作の治療に使用されています。
ラミトールはトレントファーマ社が開発した抗てんかん薬・双極性障害治療薬で、先発薬ラミクタールのジェネリック医薬品です。部分発作や全般発作のうちの強直間代発作(大発作)、子供の欠神発作、レノックス・ガストー症候群における全般発作の治療に使用されます。
脳内の神経物質であり、脳内の興奮を抑制する働きをするGABAの作用を強めることで、てんかんの症状を抑えるお薬を「抑制系」の抗てんかん薬と呼びます。
代表的なお薬としては以下があります。
ジアゼパムは重鎮状態(発作が異常に長引く、もしくは意識が回復しないうちにまた発作を繰り返す状態)の第一選択薬として、クロナゼパムはミオクローヌス発作に有効です。
クロバザムは複雑部分発作の追加薬として、ガバペンチンは部分発作の第二選択薬として、ビガバドリンはウエスト症候群(点頭てんかん、通常1歳未満の乳児に発症するてんかん症候群、難病に指定されており予後不良)に使用されています。
GABAへの作用の強さはお薬によりことなり、症状に合わせて最適なお薬が選択されます。
ガバセットは、バイオファーマ社が開発した抗てんかん薬で、ガバペンのジェネリック医薬です。てんかんは脳内神経の異常興奮により起こる症状で、興奮を促すカルシウムイオンの流入により興奮神経系が活性化して、てんかんを引き起こします。興奮神経系へのカルシウムイオンの流入抑制や興奮性の神経伝達物質の遊離を抑制し、てんかんの発症を抑えます。
興奮系にも抑制系にも分類されない新しい機序の抗てんかん薬として、日本では2010年9月よりレベチラセタム(商品名:イーケプラ)が販売されています。
海外ではブランド名をケプラ(Keppra)として、アメリカで1999年から、欧州では2000年から発売が開始されており、これまで100か国以上、600万人以上のてんかん患者への使用成績を有するお薬です。
レベチラセタムは、主要なイオンチャネルや各種受容体には結合しないものの、神経終末に存在するシナプス小胞タンパク質2A(SV2A)に結合します。
SV2Aはてんかん発作に関わるとされる物質です。SV2Aに結合することによるてんかん発作の抑制が主な作用機序となります。
その他に、興奮性神経伝達放出などに関与する興奮性シグナルであるカルシウムイオンの通り道であるカルシウムチャネルの阻害作用、および細胞内カルシウムイオンの遊離抑制作用などによりてんかん発作の抑制に効果を示します。
2013年には小児用量が追加承認され、ドライシロップ剤が発売されています。海外においても80か国以上の国や地域で小児に対する使用が承認され、広く使用されています。
ケプラは、UCBファーマ社が開発した抗てんかん薬で、日本国内ではイーケプラの商品名で販売されています。てんかんは、脳内の神経伝達バランスが崩れた状態で発症していますが、シナプス小胞タンパク質2A(SV2A)へ主に作用し、グルタミン酸が放出される興奮系神経を調節します。グルタミン酸の放出が抑制される結果、脳の異常興奮をおさえてんかんの部分発作を改善します。
アセタゾラミドはインタスファーマ社が開発した炭酸脱水酵素抑制薬で、先発薬ダイアモックスのジェネリック医薬品です。
炭酸脱水酵素を阻害し、脳のCO2濃度を局所的に増大させることで、てんかんの発作のほか、緑内障・浮腫・メニエル病・月経前緊張症・高山病予防に使用されています。
てんかんの症状は、脳のどの部位で電気信号の異常興奮が起こるかによって、発生する症状が異なります。
脳の一部において、異常信号が発生することにより発生する発作は部分発作と呼ばれます。
脳全体に異常信号が発生することにより生じる発作は全般発作といいます。
異常信号の発症部位(焦点)が脳の前頭葉の場合は、顔や手足の一部のけいれんなどの運動発作、頭頂葉の場合は身体の一部がピリピリしたりする体性感覚発作が発症します。
発症部位が後頭葉の場合は、目の前がピカピカ見えたりする視覚発作が生じます。
また、側頭葉の場合は、悪寒や発汗などの自律神経発作および既視感や不安感などの精神発作が発症します。
脳の一部において、異常な興奮信号が発生することにより起こるてんかん発作は、部分発作と呼ばれています。
脳は部位によって担っている機能がことなりますので、異常信号が発生する部位によって、引き起こされる発作の症状は大きくことなります。
運動機能を担っている脳の前頭葉において異常信号が発生すると、顔や手足の一部がぴくぴく動く、けいれんするといった症状が現れ、運動発作と呼ばれています。
脳の頭頂葉は皮膚感覚、深部感覚、内臓感覚など外から確かめられない身体の体性感覚を担っており、ここで異常信号が発生すると、皮膚や深部、内臓などの身体の一部にピリピリとした感覚になります。このような症状を体性感覚発作といいます。
視覚機能に関与する脳の後頭葉で異常信号が起こると、視野がピカピカして見えるなどの視覚発作が発症することがあります。
脳の側頭葉は自律神経や精神状態に関与する領域であり、ここで異常信号は発生すると、悪寒や発汗、腹痛といた自律神経発作や、既視感、不安感、未視感といった精神発作が発生することが知られています。
ちなみに大脳は左右2つに分かれており、右脳に異常信号が生じると体の左側部分に、左脳に異常が生じると体の右側部分に発作が生じることとなります。
脳全体において、興奮信号が異常に発生することにより起こるてんかん発作は、全般発作と呼ばれています。
全般発作が発生すると、殆どの患者は意識を保つことができません。突然意識を消失し、全身が硬くつっぱった状態となる強直発作は、てんかん発作の中でも一番周知されている発作ですが、これらの症状が全般発作に分類されます。
身体がガクンガクンと一定のリズムでけいれんをくりかえす間代発作を起こすこともあります。強直発作と間代発作は同時に発現することもあり、強直間代発作と呼ばれています。
その他、突然全身の力が抜けてしまい崩れるように倒れこむ脱力発作、突然あらゆる動作を停止して意識がもうろうとする欠神発作などが知られています。
強直間代発作は1分以上継続することが一般的ですので周囲の人は確実に気づく症状です。
欠神発作や脱力発作は数秒であることが多く、また強直発作も一般的には数秒から10数秒といわれており、周囲の人が発作に気付かないケースも多々みられます。
全般発作が発生している間は、脳全体が興奮状態にあります。
発作後は脳が疲れ眠り込んでしまうこともありますし、そのまま意識を回復するケースもみられます。
参考文献:こころの情報サイト「てんかん」
てんかんは発症要因や発作の症状、発作の原因である脳の電気的異常が発生する部位、障害の程度、臨床経過の推移など、さまざまなタイプが存在します。
分類方法もいくつか存在しますが、発作が脳のどの部位で発生するかによって大きく分けることが可能です。
そして、部分てんかんと全般てんかんのどちらにも分類できないものは「分類不能てんかん」と呼ばれます。
その他、てんかんの発症要因から分類する方法もあり、原因がはっきりとわからないものは特発性、原因が明らかなものは症候性、また原因はありそうだが現時点では特定できないものは潜在性と呼ぶこともあります。
部分てんかんとは、発作を引き起こす脳の神経電気信号の異常が、一部のエリアでのみ発生する部分発作を主体とするてんかんを指します。
発症要因がはっきりとしないものは「特発性部分てんかん」、一方発症要因が明らかとなっているものは「症候性部分てんかん」と呼ばれます。特発性部分てんかんは、小児期に発症するものが多く、発作は自然に止まるケースが多いのが特徴です。
代表的な疾患には、脳の中心部および側頭部に棘波がみられる良性小児てんかん(ローランドてんかん)や、良性後頭葉てんかんなどがあげられます。
脳の中心部および側頭部に棘波がみられる良性小児てんかんは一般的に3~13歳前後で発症することが多く、良性後頭葉てんかんは早期型と後期型があり、1歳から発症することが知られています。これらは一般的に予後良好といわれています。
症候性部分てんかんは、すべての年代において発症しやすいてんかんであり、発作はやや止まりにくいのが特徴です。
代表的な疾患には高齢者に多い側頭葉てんかんのほか、前頭葉てんかん、頭頂葉てんかん、後頭葉てんかん、コシェフニコフ症候群(運動発作が持続的、もしくは休止期を挟んで断続的に発生するてんかん)などがあげられます。
全般てんかんとは、発作を引き起こす脳の電気信号の異常興奮が、脳全体で発生し、全般発作を主体とするてんかんを指します。
発症の原因が明らかになっていないものは「特発性全般てんかん」、原因が明らかになっているものは「症候性全般てんかん」と呼ばれます。
特発性全般てんかんは、小児から若年期に発症するケースが多く、25歳以上の発症は非常に稀といわれています。
他に神経症状がなく、意識消失をともなうことが多くあります。左右の脳に同じ脳波異常が同時期に発現するのが特徴です。
脳の障害や手足の麻痺などの異常はみられません。また発作の多くは薬で止めることが可能です。
代表的な疾患には小児欠神てんかんや若年ミオクロニーてんかんなどがあげられます。
症候性全般てんかんは、新生児期または乳児期に発症するケースが多く、発作回数が多く、薬を数種類使用しても発作は非常に止まりにくい傾向があります。発症前に神経症状や精神遅滞がみられるのが一般的です。
代表的な疾患にウエスト症候群(別名点頭てんかん、BNSけいれん、乳児スパスム)やレノックス・ガストー症候群などがあげられます。
分類不能てんかんとは、部分てんかんにも全般てんかんにも分類できないてんかんを指します。
代表的な疾患としては新生児発作などがあげられます。
国内外の疫学研究では、分類不能てんかんは全体の1~10%前後と報告されています。
新生児の際に発症するけいれんには、脳の形成異常や遺伝子異常などで発症するてんかんの他に、感染症や先天性代謝異常、低酸素性虚血性脳症などが原因となるものもあります。
けいれんは、出生時の体重が通常よりも軽い児によく発症し、発症するけいれんの内、ある程度の割合がてんかんに移行すると考えられています。
新生児はけいれんを起こさずにぐったりするのみの発作も多く、臨床症状と脳波異常が一致するケースは非常に少ないとされており、ある調査では21%しか一致しないという結果が報告されています。
そのため分類することが非常に困難であり、新生児の際に発症する多くのてんかんは「分類不能てんかん」に分類されます。
分類不能ではありますが、けいれん発作は脳障害の増悪に繋がり、脳性まひや神経後遺症に直結するケースもありますので、早期診断かつ早期治療が大切です。
てんかん発作は大きくわけて2種類に分類されます。
1つは脳の一部から異常な神経興奮が発症する「部分発作」、もう1つは最初から脳全体で神経信号の異常興奮が認められる「全般発作」です。
部分発作の中には、最終的に脳全体の興奮へ広がるケースもあります。
大人のてんかん発作は部分発作の割合が多く、小児のてんかん発作は全般発作の割合が多くあります。
意識障害の有無、発作時の症状、発作の対称性などにより、部分発作および全般発作の中でさらに細分化されます。
部分発作は意識障害の有無により、単純部分発作と複雑部分発作に分類されます。全般発作はほぼ全症例意識障害をともないますので、発作時の症状により分類されるのが一般的です。
てんかん発作を引き起こす脳の異常な興奮状態が、脳の一部にて発症する発作を「部分発作」といいます。大人のてんかん発作でよく起こる発作となります。
意識障害をともなわないものは「単純部分発作」、意識障害をともなうものは「複雑部分発作」と呼ばれます。
単純部分発作では意識を保っているため、患者は発作の始まりから終わりまですべて鮮明に記憶しています。
複雑部分発作では意識障害をともなうケースが多く、患者は発作時のことを覚えていません。
側頭葉起源の発作では意識がなく、発作後にもうろうとした状態が継続します。
前頭葉起源の発作では意識を失うことは少なく発作後のもうろう状態もありませんが、激しい身体の動きをともなうことが一般的です。
てんかん発作を誘引する脳の異常な興奮信号が、最初から脳の広い範囲に発生する発作を「全般発作」といいます。
ミオクロニー発作を除き患者は意識を消失します。
症状により細分化されており、強直間代発作、強直発作、間代発作、欠神発作、脱力発作およびミオクロニー発作に分類されます。
強直間代発作とは、突然意識を消失し倒れこみ、手回を伸ばした状態で身体が硬直します(強直発作)。その後、手足を一定のリズムでガクガクと伸ばしたり曲げたりする間代発作が始まります。
その他、数十秒間意識がなくなる欠神発作や、全身が急に脱力し崩れ落ちてしまう脱力発作があります。
また、ミオクロニー発作という全身または身体の一部がビクっと収縮する発作を連続して起こすことがあります。
参考文献:Medical Note「てんかん発作の種類――けいれんや意識障害など種類はさまざま」
てんかん発作はさまざまな要因により誘引されることがわかっています。
てんかん患者でなくても、さまざまな要因が重複するとけいれんなどの発作を起こすことが知られています。
具体的な要因としては以下の症状などが知られています。
上記のような要因によりてんかん発作が誘引されてしまった場合は、これらの要因を日常生活からできるだけ排除することが大切です。
その他、服用している薬によりてんかん発作の閾値が下がることも報告されており、そのお薬は抗菌薬や局所麻酔薬、鎮痛剤、抗腫瘍薬、筋弛緩薬、ステロイドなど多岐にわたることがわかっています。
1秒間に20~50回程度の光の点滅でてんかん発作が発生しやすくなります。
1997年にテレビアニメ「ポケットモンスター」放送中に激しい光の点滅が起こり、多くの児童が光過敏性の発作を起こしたことで、光刺激がてんかん発作を促す要因となることが周知の事実となりました。当時「ポケモンショック」と呼ばれ、社会問題に発展しました。
この事件で651人が病院に運ばれ、内130人以上が入院したと報じられています。
発作の他に、頭痛や吐き気、気分不良、眼や視覚系の症状などが訴えられました。
この件以降、短時間での頻回な光の点滅は避けられるようになり、またテレビを見るときは部屋を明るくし離れてみることを促すテロップが流れるようになりました。
飲酒し、酔いから覚める際にてんかん発作が起こりやすいといわれています。
これは飲酒量に関係なく、少量の飲酒でもみられることがあります。
アルコールを常飲している人が断酒すると、てんかん発作が起こりやすいこともわかっています。
起こりやすくなる理由はさまざまな説があり、科学的には証明されていません。
過度の疲労や感染症など急性疾患などからくる身体的ストレスにより、てんかん発作が起こりやすくなることがわかっています。
激しいスポーツをおこなうことによる身体的負荷が、てんかん発作を引き起こす要因となることも知られています。
その他、首を上に傾ける動作を長時間継続していると発作に繋がるといった報告もあります。
また高血圧症を併発するてんかん患者は、首の後ろを暖めることで血流が促進され、てんかんの発作を予防できる方もいらっしゃいます。
睡眠不足からくる身体的ストレスもてんかん発作の要因となることがわかっています。
心理的ストレスによりてんかん発作を起こしやすくなることが知られています。
心理的ストレスになる要因は人それぞれですが、てんかん患者に共通してみられるのは、てんかん発作がいつどこで起こるか分からないという精神的不安や、過度に発作を恐れる恐怖感などがきっかけになるといわれています。
その他、入学・卒業・転校・クラス替えといった学校関連イベント、昇格・異動・転職といった仕事上のイベントなどがきっかけとなりてんかん発作に繋がっているケースも考えられます。
本人が自分の心理的ストレスの原因となっているものを認識し、心理的ストレスを回避するように動くことが可能であれば、発作の頻度は減少するのが一般的です。
睡眠はてんかん発作に大きく関与することがわかっています。
睡眠不足により、疲労の回復が妨げられたり、体内リズムが崩れたりすることで、てんかん発作が増加することが知られています。さらに、睡眠不足はあらゆる種類のてんかんに対して影響があることが示されています。
そのため良質な睡眠をとること、1日の生活リズムを整えるために、朝起きたら日光をたっぷりと浴びることが大切です。
1日のリズムを整えて良質な睡眠を確保するためには、規則正しい食生活をおこない、昼間は適度に活動し、夜は光をある程度暗くした環境で過ごすといった規則正しい生活をおこなえられれば理想的です。
女性の生理によるホルモンの変動は、てんかん発作と密接な関係があることがわかっています。
これはホルモン自体の変動と同時に、患者本人の精神状態の変化も関与しているものと思われます。
とくに、初潮をむかえる女児においては初潮を機にてんかんの発作が頻発するようになるケースも珍しくありません。
また生理に関連するタイミングでてんかん発作が発現するケースもあります。
詳細な機序は不明ですが、女性ホルモンであるエストロゲンがてんかん発作を起こしやすくしているという説もあります。
生理は女性なら誰しも起こりうるものですので、初潮をむかえた女児が不安に思うことがないよう、周囲にいる人々がサポートしてあげることが大切です。
体温の上昇は、てんかん発作の要因の一つです。
たとえば、発熱は体温を上げる原因となり、特に小児においててんかん発作のリスクを高めます。
具体的には、体温が38度以上になると、てんかん発作が起こる可能性が増加します。これを防ぐためには、発熱が確認された際に冷却剤などで早めに冷却措置を取ることが重要です。
また、直射日光を浴びたり、長時間の入浴や運動も体温を上昇させるため、直射日光を避けたり、適度な休憩と水分補給が必要です。体温管理を徹底することで、てんかん発作の予防に繋がります。
てんかん発作が発生した場合には、まず気持ちを落ち着かせましょう。発作が長時間続くことはほぼありません。
いつも発生している発作であれば、医師の指示通りに対処し、怪我をしないように注意して見守ってください。慌てず落ち着いて対処するようにしましょう。
舌をかまないようにと口にタオルや箸を入れる対策が取られる場合がありますが、これは逆効果です。
窒息に繋がったり、口の中を傷つけたりする恐れがありますので、絶対におこなわないでください。窒息を予防するためには、衣服をゆるめて、顎を上に向けることで気道を確保するようにしてください。
また嘔吐する場合がありますので、吐物による窒息を防ぐため、横向きに寝かせることも効果的です。
けいれん発作が起こった場合は、焦らず落ち着いて冷静に対処しましょう。
まず窒息を防ぐために気道確保を目的として、衣服のえりなどをゆるめてください。
発作中に嘔吐する場合もあります。嘔吐した、もしくは吐きそうになっている場合は、身体を横向きにする、難しい場合には顔だけでもゆっくりと横に向け、のどに吐物がたまり窒息することを防ぎましょう。
食事中にけいれん発作が起こった場合は、口の中にあるものは吐き出すようにしてください。食事がのどにつまると窒息する危険があります。
食後すぐに発作がおこった場合は、嘔吐しやすい傾向がありますのでご注意ください。けいれん発作では身体が動きますので、周囲に怪我に繋がりそうな家具があり動かせる場合には動かしてください。
その他、鋭利なものやストーブややかん(熱湯)などの危険物は動かせる場合は動かして遠ざけてください。もし、動かすことが困難な場合には怪我をすることがないか発作中は見守ってください。
けいれんの発作の様子や持続時間を記録しておくと、担当医の先生に状況を正確に説明でき、診断に役立ちます。スマートフォンで動画を撮影しておくのがおすすめです。
意識がもうろうとする発作が起こった場合は、とりあえず危険なものを遠ざけてください。
患者は、意識がもうろうとしている場合は、自分の行動を覚えていないことが一般的です。
しかしながら、ふらふらと動き回ったりする例もありますので、行動が予測できません。何が起こるかわかりませんので、とりあえず周囲に危険物となりうる恐れのあるものはすべて遠ざけるのが安心です。
倒れそうな場合には、支えるまたは座らせるなどの対応を取ってください。意識が回復するまで傍で見守り、必ず意識が戻ったことを確かめてください。
突然の発作で転倒する可能性も考えられます。転倒した際に怪我をすることがないように、タンスの上に物を置かないなど、普段から部屋の整理整頓を心がけるようにしてください。
意識がもうろうとする発作が起こりやすいことがわかっている場合には、保護帽(ヘッドギア)の使用を考慮に入れてください。保護帽とは頭部の衝撃を和らげる帽子で、緩衝材により頭部が保護されます。現在は外出時にも普段使いにも使えるデザインの優れた帽子が数多く販売されていますので、ご利用ください。
また、医師の診断の助けとなるため、発作時の様子をスマートフォンなどで動画にて記録しておくといいでしょう。
基本的にはてんかん発作は時間をおけば治まりますので、発作のたびに救急車を呼ぶ必要はありません。
ただし、てんかん発作が起こり、5分経過しても発作が治まらない場合は救急車を呼んでください。
また、5分以内に発作が治まるものが頻発する場合も救急車を手配してください。
上記の場合は、手遅れになる前に至急救急車を呼んでください。
また、水中で発作が発生した場合には水を飲み込んでいる可能性が否定できませんので、救急車を手配してください。
普段の発作時と様子が異なる場合や、初めて発作を起こした場合、発作を起こした患者が妊娠している場合、周囲の方が対応できない場合、あるいは不安でどうしたらいいかわからない場合も、救急車を呼び、専門家に対応を委ねるようにしてください。
小児てんかんの発病率は1歳までが一番多く、1歳までに発症するてんかんの殆どは、発症要因が特定できる症候性てんかんです。
その後、1歳以降の幼児期や学童期にかけては小児良性てんかんや小児欠神てんかんなど、特発性てんかんがメインとなり、これらのてんかんは成人になるにつれ治るもしくは軽減するケースが一般的であり、症状は年齢に依存する場合が多くあります。
国内外の疫学研究では、小児てんかん全体の60~70%程度は部分てんかん、20~30%程度は全般てんかん、1~10%程度が分類不能てんかんという結果が報告されています。医療の進歩により、先進国では小児てんかんの発症率は減少傾向にあります。
新生児期~乳児期とは生後0日から満1歳未満までの時期を指します。
もっともてんかんの発症率が高い時期であり、人口10万人あたり125人が発症するといわれています。
生まれた際の先天性代謝異常や先天性奇形、脳の損傷などが原因で発症する症候性てんかんが多くあります。
代表的な疾患としては以下となります。
ただ新生児期(生後0日~28日)におこるけいれんは、一概にてんかんであるとは判断できません。
臨床症状と脳波異常が一致しない例がある調査では20%以上認められており、てんかんによる発作なのか判断が難しい場合が多く、分類不能てんかんに分類されるケースが多くあります。その後乳児期に何らかの診断が下されるケースが一般的です。
幼児期~学童期とは、満1歳から12歳(小学生)までの時期を指します。
この時期には下記のようなてんかんを発症する可能性があります。
この時期は保育園・幼稚園・小学校に通い始めますので、集団生活にうまく溶け込めるよう、配慮することが大切です。
規則正しい生活を送り、早寝早起きの生活リズムを保っていれば、基本的には発作が発生しにくいといわれています。
ただ、進級やクラス替え、担任交代などの影響や、運動会や発表会などの行事の前後には緊張や疲れにより発作が誘発されやすいので、慎重な観察が必要です。前学童期には入浴や感染症、発熱が発作を誘発することが知られています。
学童期に入ると、疲労やストレス、睡眠不足などが発作を誘発することがわかっていますので、誘発因子をできるだけ日常生活から取り除く努力が大切となります。入浴は基本的には誰かと一緒に入るようにしましょう。
また、学校や医師と連携を密にし、なるべく他の子と同様の体験をさせてあげられるようサポートしていくことが大切です。
思春期は明確な時期がありませんが、10歳もしくは12歳以降、16歳もしくは18歳までの時期を指していることが多くあります。
小学校高学年~高校生までの時期です。この時期に発症するてんかんとしては、若年ミオクロニーてんかんや覚醒時大発作てんかんなどがあげられます。
また、女の子は初潮が始まる時期でありホルモンバランスや月経自体が発作を誘発する可能性があります。
その他、ストレスや睡眠不足、疲労もてんかん発作の誘発因子として知られています。思春期のデリケートな時期となりますので、なるべく本人の希望に沿いながら、病気を見守っていく必要があります。
学校生活をしているとクラブ活動や修学旅行といったイベントもあります。長時間におよぶ活動や、激しい運動をおこなうクラブは疲労が発作に繋がる恐れがありますが、体力に応じた活動はおこなうことは可能です。
修学旅行も生活リズムを崩さず、また服薬を怠らなければそれほど問題はないでしょう。
高校生になればさらに活動範囲が広がり、アルバイトを始めたいという希望もある時期です。
アルバイトも夜勤を避け、また意識が消失する発作を有する子は運転などが必要なバイトは避ければ、おこなうことは可能でしょう。
大切なのは病気で可能性を摘んでしまわないことです。
周囲がサポートし、多くのことを体験させてあげましょう。
てんかんは年代や性別によって特徴が異なります。
とくに高齢者や女性は、他の年齢層や性別と異なる症状やリスク要因を持つことが多いとされています。
高齢者の場合、新たに発症するケースが増加しており、女性はホルモンバランスの変化が影響を及ぼします。
65歳以上の高齢者のてんかんは、他の年代と比べて発症率が高いのが特徴です。
65歳以上では、てんかんの新規発症率が急増し、年間100,000人あたり135例程度が報告されています。
高齢者のてんかんは、大部分が脳の障害や脳の一部が傷ついたことによる症候性てんかんで、意識障害を伴う複雑部分発作が多いです。
発作の症状が微妙で、短時間の意識障害や軽度のけいれんが多いため、見過ごされたり認知症と誤診されることもあります。早期発見と適切な管理が重要です。
参考文献:jpn-geriat-soc.or.jp「高齢者てんかん診療の現況」(PDF)
女性のてんかんには、月経周期や妊娠、更年期といったホルモンバランスの変化が大きく影響します。
たとえば、てんかんの女性の約2/3は月経期にてんかん発作が増えるといわれています。
さらに、妊娠中はホルモンの変動や体重の増加により、発作の頻度や重症度が変わることがあります。
適切な体調管理と生活習慣の見直しが大切であり、女性特有のリスク要因を把握し、対策を講じることが、発作の予防につながります。
てんかんの治療は抗てんかん薬による薬物療法を中心に実施します。
数種類の抗てんかん薬を試してみても、発作の改善がみられない場合には、食事療法や外科治療をおこなう場合もあります。抗てんかん薬で発作の改善がみられる症例は全体の約70%といわれています。
残りの約30%が抗てんかん薬では薬効がみられない薬物抵抗性、または難治性てんかんと呼ばれます。
日本国内で外科治療の対象となる患者は推定2000人といわれていますが、実際には年間400~500人程度しか手術を受けていないのが現状です。
また、これら医療機関でおこなう療法以外に、睡眠不足やストレスといったてんかん発作を誘発する因子の排除をおこなうことも非常に重要となります。
抗てんかん薬は非常に沢山の種類が承認され販売されています。
てんかんは発作のタイプがさまざまであり、タイプに合わせて効果が期待できるお薬を選択することが非常に重要です。
抗てんかん薬には以下のようなさまざまな種類があります。
てんかんのタイプの診断を間違わないこと、また最適な薬を選ぶことが欠かせません。最初は1種類の薬を服用し、薬効を確認します。
1つ目の薬でてんかん発作が抑制できる患者は全体の50%程度といわれています。
症状に応じて薬の種類を2~3種類に増やします。複数のお薬により、てんかん発作が抑えられる患者は全体の70%程度といわれています。
てんかんは脳の神経細胞の異常興奮により発症しますが、抗てんかん薬にはその興奮を抑えるタイプと、興奮の広がりを抑制するタイプ、どちらにも効果を有するタイプが存在します。
抗てんかん薬が効きにくい、または薬で発作をコントロールすることが難しい場合は、食事療法や外科治療についての検討を開始します。
抗てんかん薬では効果が得られなかった場合は、食事療法としてケトン食事法をおこなう場合があります。
ケトン食事法とは、エネルギーのもとになる糖類を極力抑える代わりに、脂肪分を増やした食事を摂取する療法です。
糖類とは、炭水化物から食物繊維を除いたものを指し、具体的には米やパン・パスタなどの炭水化物の摂取制限および砂糖の摂取制限をおこないます。
糖類を制限することで足りないエネルギー等は、脂肪分を増やすことで補います。脂肪分として卵や油・マヨネーズなどを活用します。
詳しい作用機序は解明されていませんが、脂肪が体内で分解されてケトン体が生成され、脳が糖質の代わりにケトン体をエネルギー源としだすと、てんかん発作が軽減できると考えられています。
この食事療法は現在糖質制限のダイエット食として注目を浴びていますが、てんかん治療としておこなう場合は気軽に試せるものではなく、糖質を1食あたり数~数十グラムに制限し、年齢や症状に合わせ内容を変え、栄養素もきっちり計算するなど非常に厳格なものになります。
日本では2016年に難治性てんかん患者を対象として、てんかん食としてケトン食事法が保険適用されています。
ACTH療法とは副腎皮質刺激ホルモンの注射を、一定期間、毎日投与するという治療法です。
日本で保険適応されているのはウエスト症候群に対してのみとなります。
昔から症候性全般てんかんに対して、ACTHの筋肉注射は効果が期待できるとして用いられてきました。
レノックス・ガストー症候群や大田原症候群への使用成績も報告されています。
その他、徐波睡眠時に持続性棘徐波を示すてんかん(CSWS)やランドー・クレフナー症候群、ラスムッセン症候群などへの使用も報告されています。
ACTHが有効な症例では、療法開始1~2週間後に症状の改善がみられ始め、症例全体の約50~90%にててんかん発作の改善が得られるとされています。
しかし、ほぼ全員に副作用が発現するため注意が必要です。
保険適応を有するウエスト症候群の治療においては、できるだけ早くACTH治療を開始するとその効果も高くなると考えられていますが、最適な使用方法がまだ確立していないため、副作用の軽減を目的として短期間での投与に留めることが推奨されています。
副作用への懸念があることから、ACTH治療の他に、ステロイドや免疫抑制剤を一定期間投与するという治療法の開発も進められています。
てんかんの外科治療には、発作を止める目的の「根治手術」と、発作の症状や発現頻度の軽減を目的とした「緩和手術」の2種類があります。
根治手術には、扁桃体海馬切除術などが、緩和手術には脳梁離断術や迷走神経刺激などがあげられます。
扁桃体海馬切除術とは、てんかん発作の原因となる異常神経興奮が発生している箇所(焦点)である扁桃体および海馬を切除する方法です。このように焦点を切除する手術は焦点切除術と呼ばれています。
焦点が明らかな場合は1回の手術のみ、焦点がはっきりしない場合や、言語や記憶などの脳の重要機能を司る箇所が焦点の場合は、手術を2回に分けて障害が残らないよう慎重におこなわれる場合もあります。
脳梁離断術とは、脳梁という左右の大脳を繋いでいる水平な神経束を切断することで、左右の大脳間の異常な興奮が伝わる経路を遮断し、発作を軽減させることを目的とした手術です。迷走神経刺激(VNS)とは、脳の異常興奮を抑制して発作を軽減する装置を体内に埋め込む手術を指します。
日本では難治性てんかん患者を対象に保険適応されています。
てんかんは人口の0.5~1.0%にみられるごくありふれた脳神経系疾患です。
世界中で約5000万人、日本国内では約100万人が罹患しているといわれており、決して稀な病気ではありません。
しかしながら、多くの方々はてんかんという病気がどんな病気か理解しておらず、強烈な印象を与えるてんかん発作などにより、てんかん患者は社会から偏見と差別を受けているものと思われます。
抗てんかん薬は多くの種類が販売されており、食事療法や外科治療などの選択肢もあります。
周囲の方が正しく病気を理解しサポートすれば、てんかんは十分にコントロール可能です。
正しく病気を理解し、工夫を施すことで、充実した毎日を送りましょう。
大人のADHD患者は、多くの場合「怠けている」ととらえられてしまう傾向があります。
個人差が大きいのですが、多くの場合は子供のころからADHDに罹患しており、その6割は大人になったとしても症状が残っているといわれています。
ADHDには多動性・衝動性・不注意の3大症状がありますが、大人になると多動性の症状は弱まり、不注意の症状が目立つ傾向があります。
ケアレスミスや忘れ物が多く、約束や期日を守れないことが頻繁に起こるため、社会人としての信用を得られないことがあります。
また、片づけも苦手ですので書類の紛失に繋がったりもします。
さらに、物事を順序立てて考えることが非常に難しいので、計画を立てたり、作業に優先順位をつけたり、時間と作業量のバランスを取ることなどが苦手な傾向があります。
1つ1つのことは小さくても、社会人としてはできて当然なことばかりなので、「社会人としての自覚」があるのか、周りから疑問に思われてしまい、できない人だというレッテルを貼られてしまうことになりかねません。
その結果ADHDの方は、自分に自信が持てなかったり自尊感情が低くなり、抑うつなどの二次障害を発症するリスクがあります。
成人のADHDの治療に関しては、英国国立医療技術評価機構(NICE)は薬物療法を推奨しています。
一方、幼児期の治療は世界保健機関や日本ガイドラインも含めて、薬物療法は原則おこなわず、環境変容療法および行動療法を優先するよう推奨されています。
幼児への薬物効果を大規模に検証した試験にて、行動療法と大きな差が認められず、また長期投与による利点が見つけられないといった報告が複数あがったためです。
成人のADHDに対しては、下記のような治療薬などを用いることで、多動などのADHDの症状を抑制します。
ストラテラ | アクセプタ | バルパリン | |
---|---|---|---|
効果 | ADHDの症状改善 | ADHDの症状改善 | ADHDによる脳の興奮や発作の抑制 |
有効成分 | アトモキセチン | アトモキセチン | パルプロ酸ナトリウム |
特徴 | ストラテラはイーライリリー社が製造・販売するADHD(注意欠陥・多動性障害)の治療薬で、有効成分のアトモキセチン塩酸塩がADHD患者に特有の不注意・多動・衝動性といった症状に効果があります。 | アクセプタはインタスファーマ社が開発したADHD(注意欠陥・多動性障害)治療薬で、先発薬ストラテラのジェネリック医薬品です。 ノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、ドーパミンの量を増やして脳の働きをスムーズにします。 |
バルパリンはフランスの製薬会社サノフィが製造している、てんかん・躁病治療薬で、先発薬デパケンのジェネリック医薬品です。 有効成分のバルプロ酸ナトリウムはノルアドレナリンやドパミンなど、興奮を引き起こす物質をコントロールする作用があるといわれています。 |
価格 | 1錠 239円~ | 1錠 29円~ | 1錠 27円~ |
現在日本で承認されているお薬にコンサータ(一般名:メチルフェニデート塩酸塩)というお薬があります。
中枢神経刺激剤であり、脳内神経伝達物質であるドパミンおよびノルアドレナリンに作用しますが、作用するのはドパミンがメインです。
ドパミンおよびノルアドレナリンの再取り込みを抑制することで、脳内のドパミンおよびノルアドレナリンの濃度を上げ、働きを活性化させます。
ドパミンが不足すると、順序立てて物事を考えられなくなったり、待つことが困難になったりすることが知られており、これらのADHD症状の改善に効果を示します。
朝に(遅くとも正午までに)1日1回服用し、効果があるかどうかは3回程度の服用で判断することが可能です。
薬効は服用後10~12時間程度持続します。夕方には効果が切れる計算ですが、これは寝つきが悪くなるなどの入眠障害の副作用が1%程度発現することが知られているためです。
その他の副作用としては食欲低下が30~50%の患者にみられることが報告されており、とくに薬がよく効く昼間に発現しやすいようですが、朝食の量を増やすなどして調整が可能です。また胃炎治療薬を併用するケースもあります。
現在日本で承認されているお薬にストラテラ(一般名:アトモキセチン塩酸塩)があります。
選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤であり、ADHD患者で不足気味の脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンとドパミンの再取り込みを抑制することで、ノルアドレナリンおよびドパミンの活性を上昇させるお薬です。
ノルアドレナリンとドパミンどちらにも作用しますが、主に作用するのはノルアドレナリンとなります。
剤型はカプセルと液剤の2種類があり、小さな子供でも服用可能です。子供は1日2回(朝・夕)の服用が推奨されていますが、大人は1日1回でも構わないとされています。
ストラテラは低用量から服用を開始し、徐々に3段階で服用量を増やしていき、適切な維持用量にします。これは高用量から服用を開始すると副作用が強く発現してしまうためです。
そのため薬効を感じられるようになるまでは、服用開始から1~2か月かかることが知られています。1度服用すると、その薬効は24時間持続します。
服用開始時や用量を増量した時に副作用が発現しやすいですが、軽度なものが多く、2~3日程度で治まることが一般的です。主な副作用は眠気や頭痛、食欲低下などです。
ジェネリック医薬品も日本国内で承認され、販売されています。
ストラテラはイーライリリー株式会社が製造・販売する、注意欠陥・多動性障害の治療薬です。
有効成分としてアトモキセチン塩酸塩を配合しており、同種の治療薬に比べると効果および副作用が緩やかな点が特徴です。ADHD患者に特有の不注意・多動・衝動性といった症状に効果があります。
アクセプタはインタスファーマ社が開発した注意欠陥・多動性障害治療薬で、先発薬ストラテラのジェネリック医薬品です。
ノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、ドーパミンの量を増やして脳の働きをスムーズにする効果があります。
現在日本で承認されているお薬に、インチュニブ(一般名:グアンファシン)というお薬があります。
選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬であり、日本では2017年に発売が開始された新しいタイプのお薬です。ただし、世界では2009年から販売されています。
これまでは神経伝達物質を放出する前シナプスに作用し、神経伝達物質の再取り込みを抑制する作用機序を持つお薬が主にADHDの治療に用いられてきましたが、インチュニブは神経伝達物質を受け取る側の後シナプスに作用します。
後シナプスに存在するα2Aアドレナリン受容体に結合して、後シナプスにあるイオンチャネルを閉じることで、脳内の情報伝達を増やす作用があるといわれています。
脳内の神経伝達物質の量には関与せず、情報を受け取る側の機能調整を図ることから、非刺激治療薬と呼ばれています。1日1回投与で、その薬効は24時間持続します。
服用開始から薬効を感じられるまでには、1~2週間かかるのが一般的です。
主な副作用に血圧低下があり、心疾患を有する患者は服用が難しく、とくに房室ブロック(第二度、第三度)を有する患者は服用できません。
現時点では小児期(6歳以上18歳未満)にのみの適用となっています。
ただし、18歳未満で服用を開始した場合は18歳以降も服用を継続できます。大人への適応拡大が望まれます。
ADHDを有する患者は二次的な症状として、うつ病や不安障害といった症状を発現する恐れがあります。
うつ病は、周りから自分へのネガティブな評価に反応して発症するといわれています。
不安障害も同様に、周囲から長年に渡りネガティブな評価を受け続けた結果、過度な不安に苛まれることによって発症するといわれています。
ADHD患者の11%は双極性障害を併発しているという報告もあり、ADHDの治療と並行して、うつ病や不安障害の治療をおこなっていき、患者本人をサポートしていく治療が取られることがあります。
うつ病には、三環系抗うつ薬や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などで脳内のセロトニンやノルアドレナリンの濃度を調整します。
不安障害にはSSRIが第一選択薬として使用されることが一般的であり、こちらも脳内のセロトニンやノルアドレナリン濃度を調整します。
その他、ベンゾジアゼピン系という脳内の神経物質であるGABAを調整するお薬が短期間用いられることもあります。
ADHDを有する児童のうち約3割がてんかんに似た脳波を示すことが認められており、この脳波が認められた患者は、てんかんの治療を併用するケースがあります。
ADHDの特徴的な症状としては、多動性、不注意、衝動性の3つの主症状があります。
不注意の症状としては下記があります。
衝動性の症状としては下記があります。
幼児期にADHDを発症すると、約6割は成人になってもその症状が残っているとされており、また大人では、多動性は弱まり、不注意の症状が目につくようになるのが特徴です。
不注意の症状としては下記のような特徴がみられます。
規律と効率が求められる社会人においては、顕著にこの症状が目につくようになります。
長時間の会議では集中力が続かず、気が散りやすい傾向があります。
また、細かいところまで注意を払えない場合が多く、ケアレスミスを頻発する傾向があります。
1つのことに集中すると周りが見えなくなるので、話しかけられているのに気づかなかったり、また注意力が散漫なので、話を聞いていないかのようにみられることも多いのです。
外部からの刺激に反応しやすいため、現在話している内容やおこなっている行動とは無関係な言動をすることもあります。
他にも約束や期日、納期を守れなかったり、忘れ物や紛失もよくあるため、信用を得ることが難しい状態となります。
計画を立てたり、物事を順序立てて考えたり、時間の管理が苦手ですが、単純作業などの同じことの繰り返し作業も苦手な傾向です。
多動性の症状としては、じっとしていると落ち着かない気分となり、無意識のうちに身体を動かしてしまうのを抑えられない状態です。
長時間の会議では、じっと座っていることが困難であり、貧乏ゆすりをしたり、急に立ち上がったり、椅子を動かしてみたりします。
その他、手遊びをしたり、会議資料をめくることを繰り返したり、ボールペンを回したり、指で机や椅子をたたき続けたりといった症状を呈する方もいます。
これらの症状により、落ち着きがない人だとレッテルを貼られるケースがよくあります。
子供のADHD患者には、過度にしゃべる、人の話を遮り一方的に話す、話し出すと止まらないといった症状が強く出る傾向がありますが、この症状は大人になるにつれ、ある程度コントロールできるようになるのが一般的です。
その他、夢中になりすぎて周囲が見えなくなったり、力の入れ方がわからず過敏になったりと、さまざまな活動に落ち着いて参加するのが困難です。
衝動性の症状としては、思いついた行動について、おこなってもよいかどうか考える前に行動してしまうことが特徴としてあげられます。
一度立ち止まって考えるというブレーキがききにくくなっているものと思われます。
根底には自分の感情や行動、発言を抑えるのが苦手だという事実があるようです。
そのため、会議中に不必要な発言をしてしまったり、相手の発言が終わらないうちに自分の発言をしてしまったり、順番を待つことが難しかったりします。衝動買いをしてしまうというケースも報告されています。
また、子供のADHD患者は気になるものを目にすると、それしか目に入らず、危険をかえりみずに道路に飛び出してしまうケースもありますが、周囲との危険に関しては、大人になるにつれ、ある程度認知できるようになるようです。
大人になるにつれて、目に見える行動的な衝動性よりも、会話で話が飛躍しやすい、言動が理論的でない、または安定していない、順序立てた考えよりも感情が先行してしまうことが多いといった心理的や精神的な衝動性が目につくようになります。
ADHDは、男性と女性でその特徴や発症率に違いがみられます。
一般的に男性に多いとされるADHDですが、女性の場合は発見が遅れることが多く、成人してから診断されるケースが多々あります。
これらの違いを理解することでより適切な対応が可能になります。
一般的に、ADHDは男性に多いといわれています。
男女比率は研究によってさまざまですが、ADHDの診断を受ける男性の割合は女性の約2.5~5倍です。
しかし、これは診断基準や社会的な期待が影響している可能性も考えられます。
男性は行動の問題として目立つ多動性や衝動性の症状が多いため、早期に診断されやすいのです。
一方で、女性は注意欠如が主な症状となり、学業や生活において問題が顕在化しにくい場合があるため、診断が遅れることが多いです。大人になってからADHDと診断される女性も少なくありません。
これらの比率の違いを理解することは、ADHDの早期発見と適切なサポートに繋がります。
ADHDの症状は男女で異なる特徴を持っています。
男性の場合、主に多動性や衝動性が目立つことが多いです。たとえば、教室でじっとしていられない、急に走り出す、順番を待てないなどの行動が典型的です。
これらの症状は周囲に明らかに見えるため、比較的早くADHDと診断されることが多いです。
一方、女性は注意欠如が主な症状であることが多く、夢中になりやすい、忘れ物が多い、計画を立てるのが苦手といった形であらわれます。
これらの症状は目立ちにくいため、ADHDと気づかれずに過ごすことが少なくありません。
さらに、女性は感情の起伏が激しい、自己評価が低いといった二次的な問題を抱えることが多いです。
こうした男女の症状の違いを理解することで、適切な支援や対応策を講じることが可能になります。
ADHDの男女の違いに着目し、それぞれの特性に合ったサポートが重要です。
参考文献:jstage「注意欠如多動性障害(ADHD)の疫学と病態:遺伝要因と環境要因の関係性の視点から」
ADHDの他に似たような症状を起こす発達障害としては、自閉スペクトラム症と限局性学習症があげられます。
自閉スペクトラム障害は略してASD(Autism Spectrum Disorderの略)とも呼ばれており、対人関係が苦手であり、また強いこだわりを持つことが特徴です。
限局性学習症は略してLD(Learning Disabilitiesの略)とも呼ばれており、文字の読み書きが上手にできない、また数のイメージがつかないといった算数障害を有するのが特徴です。
これらは、アメリカ精神医学会による「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」により基準が定義されています。
いずれも精神障害として認知されることが少なく、本人の怠惰だと責められがちですが、脳の発達特性によるものであり、周囲の理解および周囲のサポートが必要です。
自閉スペクトラム症は、対人関係およびコミュニケーションの問題と強いこだわりが特徴的な症状です。
普通の会話のやりとりが苦手であったり、他人と感情を共有することが苦手だったりします。
また、表情や身振り手振りから相手の気持ちをくみ取ることも非常に苦手としています。
その他には以下のような症状例があげられます。
中には嗅覚や聴覚など特定の感覚が鋭敏な方もいます。
それらの症状から「他の人と協調することをしない、わがままな人」といったイメージをもたれることが多くあります。
自閉スペクトラム症の特徴的な症状は、性格上の問題といえばそれまでですが、この特徴が著しく、社会生活を営むのに困難であったり、本人のみならず、家族や周囲の人がつらい思いを抱えたりしている状態を自閉スペクトラム症と呼んでいます。
自閉スペクトラム症には自閉症、自閉性障害、アスペルガー障害、広汎性発達障害などが含まれます。
限局性学習症とは、知能能力にはそれほど問題はみられず、目や耳も正常であるにもかかわらず、「読む」「書く」「計算する」といった特定の分野に限って、習得と使用に著しく困難を示す発達障害の1つです。
たとえば「読む」という分野では、読むのが極端に遅かったり、一文字ずつしか読めず文章として認識できなかったり、読めても意味を理解ができなかったりします。
「書く」という分野では、文字を思い出せなかったり、正確に文字を書けなかったり、濁点や句読点を間違えたり、うまく文章で自分の伝えたいことを表現できなかったりします。
「計算する」という分野では、そもそも数という感覚がわからなかったり、計算するのが遅かったり、計算ができなかったりします。
児童によく発現する障害であり、全自動の4.5%はこの障害を有しているといわれています。大体小学校のクラス30人の1人くらいの割合です。
その他、「聞く」や「話す」といった分野においても、全体の指示を聞けなかったり、聞いた内容を記憶しておくことが難しかったりします。
また「話す」という分野では、頭に浮かんだことがすぐ口から出てしまうといった症状があげられます。
ADHDの発症原因は、現時点では解明されていません。
しかしながら、生まれつき脳の発達に何らかの偏りがあることが関係していると考えられています。一昔前は親の育て方の問題だといわれていましたが、決してそうではありません。
現在では、脳内の神経伝達物質が発症に関与していることも明らかになってきており、遺伝的素因もあるとして研究が進められています。
ADHDは幼児期・小児期にみられ、成人期までには症状が消失すると考えられていましたが、現在では慢性的な経過をたどる例があることもわかっています。
ADHD発症および経過を左右する要因としては心理社会的要因が考えられています。
脳はその人の行動や思考をコントロールする器官であり、ADHD患者は前頭前野を含む脳の働きに偏りがあると考えられています。
また、ADHD患者は脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンやドパミンの働きが不足気味であることがわかってきました。
神経細胞の間隙にあるノルアドレナリンやドパミンはトランスポーターという部位から再度元の神経細胞に取り込まれるのですが(再取り込み)、ADHD患者ではトランスポーターが過剰に機能しています。
神経伝達物質であるノルアドレナリンやドパミンを再取り込みしすぎてしまい、シナプス間隙の神経伝達物質が不足することで情報伝達がうまくいかないことで、ADHD患者の不注意や多動性といった特徴的な症状が発現するのではないかと考えられています。
ADHDの発症には遺伝的素因が関与しているとして研究が進められています。
ADHDの遺伝率は約76%と非常に大きく、親がADHDである子供は、親がADHDではない子に比べ3~4倍ADHDになりやすいといわれています。
脳の発達段階において、自制や抑制に関する脳の神経回路が損なわれてしまったと考えられていますが、どの部位がどのように機能してADHDになるのかについてはまだまだ仮説の域を出ていません。
脳の機能が失われている箇所は、自意識や時間の意識に関連した右前頭前皮質、動悸づけに関連した小脳虫部などがあげられるのですが、複数の遺伝子異常がこれらの脳の機能変化に関与していると考えられています。
ADHDの発症要因として、心理社会的要因もよくあげられます。
いわゆる環境要因のことで、これまでの育ってきた環境と現在の生活環境が関与しています。
ADHDの発症に親の育て方やしつけは関係ありません。
ADHDの患者は適切な時期に適切なサポートを周囲から得られれば、うまく障害とつき合っていくことが可能ですが、劣等感が強かったり、物事を達成した経験が乏しかったりすることが、ADHDの発症や慢性的な症状に関連してくるといわれています。
ADHDの治療は、自分の特性を理解し、自分に自信を持てるようになることが目標です。
決してADHDの不注意、多動性、衝動性の3大症状をなくすことだけが治療のゴールではありません。
主な治療法として下記があげられます。
日常生活の中で自分が困難と思っていることを認識し、対処方法を考えていくと同時に、一人で抱え込まず、周囲にサポートをお願いできるようになることが大切です。
治療を開始しても、すぐに変化は感じられず、またよくなったり悪くなったりを繰り返しながら、徐々に改善していきます。
少しずつ自信を取り戻していけるよう、焦らず治療をおこないます。
環境変容療法とは、家族を含めた患者の周囲にいる人物がADHDを理解し、患者がうまく行動できるように接し方を変え、環境を調整していく療法です。
ADHDの患者は常に頑張っています。そして自分だけでその苦しみを抱え込み、周囲の人に頼ろうとしない傾向があります。
まず、周囲の人に頼っていいと患者本人がマインドを変えられるように、周囲の人がアプローチ方法を変えます。
そうすることで、自分が得意とすること、苦手とすることを理解し、苦手なことは人に相談するよう促します。周囲の人は、指示を簡潔にすることで、患者は指示を理解しやすくなります。
生活環境としては、患者が気になってしまい、集中力を欠く原因となっている物を目のつかない場所に移動します。
患者が時間管理を実行したり、仕事の優先順位をつけられるように、携帯のアラームや、やることリストの活用を促したりします。
その他、家族がサポートできるように、家族間で予定を共有するのも効果的です。
行動療法とは、ADHDの患者が状況に応じて適切な行動を取れるように、対人コミュニケーションスキルや社会のルールやマナーを教えていく療法です。ソーシャルスキルトレーニングともいわれています。
個人に合わせてさまざまなトレーニングを組み合わせるので、治療内容は均一的ではなく、個々人によってことなる内容となります。
行動療法として現在広く認知されおこなわれている方法に、認知行動療法といわれる療法があります。
患者に自分の状態を認知させ、なぜできないのか自分の原因を見つめさせることで、解決策を見出していく療法です。
患者の症状や年齢、合併症の有無などに応じて、技法を選択し組み合わせて対応していきます。技法の中には一例として、ソーシャル・スキルズ・トレーニングという方法があります。
これは、困難な状況をコミュニケーションの側面からとらえ、コミュニケーション力を向上させることで困難を解決しようという方法です。
その他、アンガ―・マネジメントという療法もあります。
これは、怒りを予防し制御できるようにするために、怒りは誰にでも起こりうるものであり、怒りは自分がストレスを抱えているときに発生し、それを表に出すことは決して悪いことではないとマインドを変えさせるというものです。
ADHDの患者は、脳内の神経伝達物質であるドパミンおよびノルアドレナリンの不足により情報伝達がスムーズにおこなえていないため、多動などのADHDの症状が発生すると考えられています。
そのため、ドパミンおよびノルアドレナリンを増やすお薬である、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬および中枢神経刺激剤などがADHDの治療に用いられています。
服用量や服用期間は個々によってことなり、治療経過も個人差が大きいです。
薬を服用して、ある程度自分の症状をコントロールできるようになったり、環境調整などで対応したりすることが可能になり、その状態をある一定期間以上維持できた場合は、今後の薬物治療をどうしていくか検討します。薬がなくても大丈夫そうであれば、薬の中断もしくは中止を考慮します。
薬の服用初期には、吐き気や口渇、頭痛、食欲減退といった副作用が発現する場合があります。
身体が薬に慣れるにつれ軽減されますが、副作用がひどい場合は医師に相談してください。幼児・小児のADHDには薬物療法が推奨されておらず、基本的に成人のADHDを対象におこなわれる療法です。
ADHDは、患者の努力不足や親のしつけや育て方の問題などではなく、患者本人が生まれ持った素質です。
その素質を患者本人と周囲の人が認識し、対処方法を共に考えていくことで、これまで困難であった社会生活に適応できるようになります。
一昔前では、幼児・小児に発症する病気であり、成人になるにつれ症状が消えると考えられていましたが、成人になっても症状が慢性的に残ることがわかってきました。
社会生活に適応するのはADHD患者一人では難しく、周囲の人のサポートが欠かせません。
家庭や職場環境などを調整する環境調整療法や行動療法と薬物療法を組み合わせることで、困難な状況を打破できるようになります。
てんかん・ADHD治療薬を実際に服用した人の口コミを紹介します。
てんかん・ADHD治療薬が本当に効果があるのか、気になっている人はぜひ参考にしてください。