てんかんとは、脳の神経細胞の一部に突然異常な電気信号が発生することで、てんかん発作が引き起こされ、その発作を繰り返す精神障害です。
脳のどの部位で異常信号が発生するかによって、引き起こされる発作のタイプがことなります。
よく知られているのは強直発作という手足が突っ張り、身体が固くなってびくびく震える発作ですが、その他にも全身の力が急に抜けるといったタイプの発作もあります。
およそ100人に1人の割合で発症する病気であり、日本には60~100万人の患者がいるといわれており、決して珍しい病気ではありません。
予防も完治も不可能な病気ですが、治療により発作が起こらないようコントロールすることが可能です。
てんかんの原因は、
など、多岐におよびます。
遺伝子異常も関与していることが最新の研究でわかってきています。
しかしながら、実際に原因を特定できる「症候性てんかん」は全体の症例の半分以下であり、全体の約6割は発症要因を特定できない「特発性てんかん」であるのが現状です。
小児では生まれつきのてんかんが多く、高齢者では脳血管障害や神経変性によるてんかんの割合が増加します。
症候性てんかんとは、てんかんが発症した要因が特定できるてんかんを指します。
てんかん全体の約4割を占めるとされています。
などが乳幼児期のてんかんに多く認められます。
一方高齢者では、
が多く認められ、高齢者では脳血管障害が原因であるてんかんがもっとも多く報告されています。
特発性てんかんとは、検査をおこなっても異常が検出されず、てんかんの発症要因が不明であるてんかんを指します。
てんかん全体の約6割を占めるとされており、まだまだてんかんの発症要因の特定には課題が多く残っているのが現状です。
遺伝により「てんかんになりやすい傾向」がある可能性が指摘されていますが、不明瞭な点が多く、研究が進められています。
小児の特発性てんかんは、特に遺伝子異常の可能性が示唆されています。
また小児期の特発性てんかんは内服治療の高い効果が認められる症例が多く、一部では成長とともに自然によくなるケースも報告されています。
てんかんの症状は、脳のどの部位で電気信号の異常興奮が起こるかによって、発生する症状がことなります。
脳の一部において、異常信号が発生することにより発生する発作は部分発作と呼ばれます。
脳全体に異常信号が発生することにより生じる発作は全般発作といいます。
異常信号の発症部位(焦点)が脳の前頭葉の場合は、顔や手足の一部のけいれんなどの運動発作、頭頂葉の場合は身体の一部がピリピリしたりする体性感覚発作が発症します。
発症部位が後頭葉の場合は、目の前がピカピカ見えたりする視覚発作が生じます。
また側頭葉の場合は、悪寒や発汗などの自律神経発作および既視感や不安感などの精神発作が発症します。
脳の一部において、異常な興奮信号が発生することにより発生するてんかん発作は、部分発作と呼ばれています。
脳は部位によって担っている機能がことなりますので、異常信号が発生する部位によって、引き起こされる発作の症状は大きくことなります。
運動機能を担っている脳の前頭葉において異常信号が発生すると、顔や手足の一部がぴくぴく動く、けいれんするといった症状が現れ、運動発作と呼ばれています。
脳の頭頂葉は皮膚感覚、深部感覚、内臓感覚など外から確かめられない身体の体性感覚を担っており、ここで異常信号が発生すると、皮膚や深部、内臓などの身体の一部にピリピリとした感覚になります。
このような症状を体性感覚発作といいます。
視覚機能に関与する脳の後頭葉で異常信号が起こると、視野がピカピカして見えるなどの視覚発作が発症することとなります。
脳の側頭葉は自律神経や精神状態に関与する領域であり、ここで異常信号は発生すると、悪寒や発汗、腹痛といた自律神経発作や、既視感、不安感、未視感といった精神発作が発生することが知られています。
ちなみに大脳は左右2つに分かれており、右脳に異常信号が生じると体の左側部分に、左脳に異常が生じると体の右側部分に発作が生じることとなります。
脳全体において、興奮信号が異常に発生することにより起こるてんかん発作は、全般発作と呼ばれています。
全般発作が発生すると、ほとんどの患者は意識を保つことができません。
突然意識を消失し、全身が硬くつっぱった状態となる強直発作は、てんかん発作の中でも一番周知されている発作ですが、これらの症状が全般発作に分類されます。
身体がガクンガクンと一定のリズムでけいれんをくりかえす間代発作を起こすこともあります。
強直発作と間代発作は同時に発現することもあり、強直間代発作と呼ばれています。
その他、突然全身の力が抜けてしまい崩れるように倒れこむ脱力発作、突然あらゆる動作を停止して意識がもうろうとする欠神発作などが知られています。
強直間代発作は1分以上継続することが一般的ですので周囲の人は確実に気づく症状です。
欠神発作や脱力発作は数秒であることが多く、また強直発作も一般的には数秒から10数秒といわれており、周囲の人が発作に気付かないケースも多々見られます。
全般発作が発生している間は、脳全体が興奮状態にあります。
発作後は脳が疲れ眠り込んでしまうこともありますし、そのまま意識を回復するケースも見られます。
てんかんは発症要因や発作の症状、発作の原因である脳の電気的異常が発生する部位、障害の程度、臨床経過の推移など、さまざまなタイプが存在します。
分類方法もいくつか存在しますが、発作が脳のどの部位で発生するかによって、
に分けられます。
そして、部分てんかんと全般てんかんのどちらにも分類できないものは「分類不能てんかん」と呼ばれます。
その他、てんかんの発症要因から分類する方法もあり、原因がはっきりとわからないものは特発性、原因が明らかなものは症候性、また原因はありそうだが現時点では特定できないものは潜在性と呼ぶこともあります。
部分てんかんとは、発作を引き起こす脳の神経電気信号の異常が、一部のエリアでのみ発生する部分発作を主体とするてんかんを指します。
発症要因がはっきりとしないものは「特発性部分てんかん」、一方発症要因が明らかとなっているものは「症候性部分てんかん」と呼ばれます。
特発性部分てんかんは、小児期に発症するものが多く、発作は自然に止まるケースが多いのが特徴です。
代表的な疾患には、脳の中心部および側頭部に棘波がみられる良性小児てんかん(ローランドてんかん)や、良性後頭葉てんかんなどがあげられます。
脳の中心部および側頭部に棘波がみられる良性小児てんかんは一般的に3~13歳前後で発症することが多く、良性後頭葉てんかんは早期型と後期型があり、1歳から発症することが知られています。
これらは一般的に予後良好といわれています。
症候性部分てんかんは、すべての年代において発症しやすいてんかんであり、発作はやや止まりにくいのが特徴です。
代表的な疾患には高齢者に多い側頭葉てんかんのほか、前頭葉てんかん、頭頂葉てんかん、後頭葉てんかん、コシェフニコフ症候群(運動発作が持続的、もしくは休止期を挟んで断続的に発生するてんかん)などがあげられます。
全般てんかんとは、発作を引き起こす脳の電気信号の異常興奮が、脳全体で発生し、全般発作を主体とするてんかんを指します。
発症の原因が明らかになっていないものは「特発性全般てんかん」、原因が明らかになっているものは「症候性全般てんかん」と呼ばれます。
特発性全般てんかんは、小児から若年期に発症するケースが多く、25歳以上の発症は非常に稀といわれています。他に神経症状がなく、意識消失をともなうことが多くあります。
左右の脳に同じ脳波異常が同時期に発現するのが特徴です。
脳の障害や手足の麻痺などの異常はみられません。また発作の多くは薬で止めることが可能です。
代表的な疾患には小児欠神てんかんや若年ミオクロニーてんかんなどがあげられます。
症候性全般てんかんは、新生児期または乳児期に発症するケースが多く、発作回数が多く、薬を数種類使用しても発作は非常に止まりにくい傾向があります。
発症前に神経症状や精神遅滞が見られるのが一般的です。
代表的な疾患にウエスト症候群(別名点頭てんかん、BNSけいれん、乳児スパスム)やレノックス・ガストー症候群などがあげられます。
分類不能てんかんとは、部分てんかんにも全般てんかんにも分類できないてんかんを指します。
代表的な疾患としては新生児発作などがあげられます。
国内外の疫学研究では、分類不能てんかんは全体の1~10%前後と報告されています。
新生児の際に発症するけいれんには、脳の形成異常や遺伝子異常などで発症するてんかんの他に、感染症や先天性代謝異常、低酸素性虚血性脳症などが原因となるものもあります。
けいれんは、出生時の体重が通常よりも軽い児によく発症し、発症するけいれんの内、ある程度の割合がてんかんに移行すると考えられています。
新生児はけいれんを起こさずにぐったりするのみの発作も多く、臨床症状と脳波異常が一致するケースは非常に少ないとされており、ある調査では21%しか一致しないという結果が報告されています。
そのため分類することが非常に困難であり、新生児の際に発症する多くのてんかんは「分類不能てんかん」に分類されます。
分類不能ではありますが、けいれん発作は脳障害の増悪に繋がり、脳性まひや神経後遺症に直結するケースもありますので、早期診断かつ早期治療が大切です。
てんかん発作は大きくわけて2種類に分類されます。
1つは脳の一部から異常な神経興奮が発症する「部分発作」、もう1つは最初から脳全体で神経信号の異常興奮が認められる「全般発作」です。
部分発作の中には、最終的に脳全体の興奮へ広がるケースもあります。
大人のてんかん発作は部分発作の割合が多く、小児のてんかん発作は全般発作の割合が多くあります。
意識障害の有無、発作時の症状、発作の対称性などにより、部分発作および全般発作の中でさらに細分化されます。
部分発作は意識障害の有無により、単純部分発作と複雑部分発作に分類されます。全般発作はほぼ全症例意識障害をともないますので、発作時の症状により分類されるのが一般的です。
てんかん発作を引き起こす脳の異常な興奮状態が、脳の一部にて発症する発作を「部分発作」といいます。
大人のてんかん発作でよく起こる発作となります。
意識障害をともなわないものは「単純部分発作」、意識障害をともなうものは「複雑部分発作」と呼ばれます。
単純部分発作では意識を保っているため、患者は発作の始まりから終わりまですべて鮮明に記憶しています。
複雑部分発作では意識障害をともなうケースが多く、患者は発作時のことを覚えていません。
側頭葉起源の発作では意識がなく、発作後にもうろうとした状態が継続します。
前頭葉起源の発作では意識を失うことは少なく発作後のもうろう状態もありませんが、激しい身体の動きをともなうことが一般的です。
てんかん発作を誘引する脳の異常な興奮信号が、最初から脳の広い範囲に発生する発作を「全般発作」といいます。
ミオクロニー発作を除き患者は意識を消失します。
症状により細分化されており、強直間代発作、強直発作、間代発作、欠神発作、脱力発作およびミオクロニー発作に分類されます。
強直間代発作とは、突然意識を消失し倒れこみ、手回を伸ばした状態で身体が硬直します(強直発作)。
その後、手足を一定のリズムでガクガクと伸ばしたり曲げたりする間代発作が始まります。
その他、数十秒間意識がなくなる欠神発作や、全身が急に脱力し崩れ落ちてしまう脱力発作があります。
またミオクロニー発作という、全身または身体の一部がビクっと収縮する発作を連続して起こすことがあります。
てんかん発作はさまざまな要因により誘引されることがわかっています。
てんかん患者でなくても、さまざまな要因を重複するとけいれんなどの発作を起こすことが知られています。
具体的な要因としては、
などが知られています。
これらの要因によりてんかん発作が誘引されてしまった場合は、これらの要因を日常生活からできるだけ排除することが大切です。
その他、服用している薬によりてんかん発作の閾値が下がることも報告されており、その薬剤は抗菌薬や局所麻酔薬、鎮痛剤、抗腫瘍薬、筋弛緩薬、ステロイドなど多岐にわたることがわかっています。
1秒間に20~50回程度の光の点滅でてんかん発作が発生しやすくなります。
1997年にテレビアニメ「ポケットモンスター」放送中に激しい光の点滅が起こり、多くの児童が光過敏性の発作を起こしたことで、光刺激がてんかん発作を促す要因となることが周知の事実となりました。
当時「ポケモンショック」と呼ばれ、社会問題に発展しました。
この事件で651人が病院に運ばれ、内130人以上が入院したと報じられています。
発作の他に、頭痛や吐き気、気分不良、眼や視覚系の症状などが訴えられました。
この件以降、短時間での頻回な光の点滅は避けられるようになり、またテレビを見るときは部屋を明るくし離れてみることを促すテロップが流れるようになりました。
飲酒し、酔いから覚める際にてんかん発作が起こりやすいといわれています。
これは飲酒量に関係なく、少量の飲酒でも見られることがあります。
アルコールを常飲している人が断酒すると、てんかん発作が起こりやすいこともわかっています。
起こりやすくなる理由はさまざまな説があり、科学的には証明されていません。
・飲酒することでてんかん発作が起こるかもしれないという不安感
・アルコールにより引き起こされている睡眠不足
・飲酒により抗てんかん薬の服用が不規則になる
などの状況がてんかん発作を促すという説もあります。
過度の疲労や感染症など急性疾患などからくる身体的ストレスにより、てんかん発作が起こりやすくなることがわかっています。
激しいスポーツをおこなうことによる身体的負荷が、てんかん発作を引き起こす要因となることも知られています。その他、首を上に傾ける動作を長時間継続していると発作に繋がるといった報告もあります。
また高血圧症を併発するてんかん患者は、首の後ろを暖めることで血流が促進され、てんかんの発作を予防できる方もいらっしゃいます。
睡眠不足からくる身体的ストレスもてんかん発作の要因となることがわかっています。
心理的ストレスによりてんかん発作を起こしやすくなることが知られています。
心理的ストレスになる要因は人それぞれですが、てんかん患者に共通してみられるのは、てんかん発作がいつどこで起こるからわからないという精神的不安や、過度に発作を恐れる恐怖感などがきっかけになるといわれています。
その他、入学・卒業・転校・クラス替えといった学校関連イベント、昇格・異動・転職といった仕事上のイベントなどがきっかけとなりてんかん発作に繋がっているケースも考えられます。
本人が自分の心理的ストレスの原因となっているものを認識し、心理的ストレスを回避するように動くことが可能であれば、発作の頻度は減るのが一般的です。
睡眠はてんかん発作に大きく関与することがわかっています。
睡眠不足により、疲労の回復が妨げられたり、体内リズムが崩れたりすることで、てんかん発作が増加することが知られています。
さらに睡眠不足はあらゆる種類のてんかんに対して影響があることが示されています。
そのため良質な睡眠をとること、1日の生活リズムを整えるために、朝起きたら日光をたっぷりと浴びることが大切です。
1日のリズムを整えて良質な睡眠を確保するためには、規則正しい食生活をおこない、昼間は適度に活動し、夜は光をある程度暗くした環境で過ごすといった規則正しい生活をおこなえられれば理想的です
女性の生理によるホルモンの変動は、てんかん発作と密接な関係があることがわかっています。
これはホルモン自体の変動と同時に、患者本人の精神状態の変化も関与しているものと思われます。
特に初潮をむかえる女児においては、初潮を機にてんかんの発作が頻発するようになるケースも珍しくありません。また生理に関連するタイミングでてんかん発作が発現するケースもあります。
詳細な機序は不明ですが、女性ホルモンであるエストロゲンがてんかん発作を起こしやすくしているという説もあります。
生理は女性なら誰しも起こりうるものですので、初潮を迎えられた患者が不安に思うことがないよう、周囲にいる人々がサポートしてあげることが大切です。
てんかん発作が発生した場合には、まず気持ちを落ち着かせましょう。
発作が長時間続くことはほぼありません。
いつも発生している発作であれば、医師の指示通りに対処し、怪我をしないように注意して見守ってください。慌てず落ち着いて対処するようにしましょう。
舌をかまないようにと口にタオルや箸を入れる対策が取られる場合がありますが、これは逆効果です。
窒息に繋がったり、口の中を傷つけたりする可能性がありますので、絶対におこなわないでください。
窒息を予防するためには、衣服をゆるめて、顎を上に向けることで気道を確保するようにしてください。
また嘔吐する場合がありますので、吐物による窒息を防ぐため、横向きに寝かせることも効果的です。
けいれん発作が起こった場合は、焦らず落ち着いて冷静に対処しましょう。
まず窒息を防ぐために気道確保を目的として、衣服のえりなどをゆるめてください。
発作中に嘔吐する場合もあります。嘔吐した、もしくは吐きそうになっている場合は、身体を横向きにする、難しい場合には顔だけでもゆっくりと横に向け、のどに吐物がたまり窒息することを防ぎましょう。
食事中にけいれん発作が起こった場合は、口の中にあるものは吐き出すようにしてください。
食事がのどにつまると窒息する危険があります。
食後すぐに発作がおこった場合は、嘔吐しやすい傾向がありますのでご注意ください。
けいれん発作では身体が動きますので、周囲に怪我に繋がりそうな家具があり動かせる場合には動かしてください。
その他、鋭利なものやストーブややかん(熱湯)などの危険物は動かせる場合は動かして遠ざけてください。
もし動かすことが困難な場合には、怪我をすることがないか発作中は見守ってください。
けいれんの発作の様子や持続時間を記録しておくと、担当医の先生に状況を正確に説明でき、診断に役立ちます。スマートフォンで動画を撮影しておくのがおすすめです。
意識がもうろうとする発作が起こった場合は、とりあえず危険なものを遠ざけてください。
患者は、意識がもうろうとしている場合は、自分の行動を覚えていないことが一般的です。
にもかかわらずふらふらと動き回ったりする例もありますので、行動が予測できません。何が起こるかわかりませんので、とりあえず周囲に危険物となりうる可能性のあるものはすべて遠ざけるのが安心です。
倒れそうな場合には、支えるまたは座らせるなどの対応を取ってください。
意識が回復するまで傍で見守り、必ず意識が戻ったことを確かめてください。
突然の発作で転倒する可能性も考えられます。転倒した際に怪我をすることがないように、タンスの上に物を置かないなど、普段から部屋の整理整頓を心掛けるようにしてください。
また意識がもうろうとする発作が起こりやすいことがわかっている場合には、保護帽(ヘッドギア)の使用を考慮に入れてください。
保護帽とは頭部の衝撃を和らげる帽子で、緩衝材により頭部が保護されます。
現在は外出時にも普段使いにも使えるデザインの優れた帽子が数多く販売されていますので、ご利用ください。
また医師の診断の助けとなるため、発作時の様子をスマートフォンなどで動画にて記録しておくといいでしょう。
基本的にはてんかん発作は時間をおけば治まりますので、発作のたびに救急車を呼ぶ必要はありません。
ただし、てんかん発作が起こり、5分経過しても発作が治まらない場合は救急車を呼んでください。
また5分以内に発作は治まるものが頻発する場合も救急車を手配してください。
こちらの場合も、手遅れになる前に至急救急車を呼んでください。
また水中で発作が発生した場合には、水を飲み込んでいる可能性が否定できませんので、救急車を手配してください。
普段の発作時と様子がことなる場合や、初めて発作を起こした場合、発作を起こした患者が妊娠している場合、周囲の人が対応できない場合、あるいは不安でどうしたらいいかわからない場合も、救急車を呼び、専門家に対応を委ねるようにしてください。
小児てんかんの発病率は1歳までが一番多く、1歳までに発症するてんかんのほとんどは、発症要因が特定できる症候性てんかんです。
その後1歳以降の幼児期や学童期にかけては、小児良性てんかんや小児欠神てんかんなど、特発性てんかんがメインとなり、これらのてんかんは成人になるにつれ治るもしくは軽減するケースが一般的であり、症状は年齢に依存する場合が多くあります。
国内外の疫学研究では、小児てんかん全体の60~70%程度は部分てんかん、20~30%程度は全般てんかん、1~10%程度が分類不能てんかんという結果が報告されています。
医療の進歩により、先進国では小児てんかんの発症率は減少傾向にあります。
新生児期~乳児期とは生後0日から満1歳未満までの時期を指します。
もっともてんかんの発症率が高い時期であり、人口10万人あたり125人が発症するといわれています。
生まれた際の先天性代謝異常や先天性奇形、脳の損傷などが原因で発症する症候性てんかんが多くあります。
代表的な疾患としては
などがあげられます。
ただ新生児期(生後0日~28日)におこるけいれんは、一概にてんかんであるとは判断できません。
臨床症状と脳波異常が一致しない例がある調査では20%以上認められており、てんかんによる発作なのか判断が難しい場合が多く、分類不能てんかんに分類されるケースが多くあります。
その後乳児期に何らかの診断が下されるケースが一般的です。
幼児期~学童期とは、満1歳から12歳(小学生)までの時期を指します。
この時期に発症するてんかんには、
などがあげられます。
この時期は保育園・幼稚園・小学校に通い始めますので、集団生活にうまく溶け込めるよう、配慮することが大切です。
規則正しい生活を送り、早寝早起きの生活リズムを保っていれば、基本的には発作が発生しにくいといわれています。
ただ、進級やクラス替え、担任交代などの影響や、運動会や発表会などの行事の前後には緊張や疲れにより発作が誘発されやすいですので、慎重な観察が必要です。
前学童期には入浴や感染症、発熱が発作を誘発することが知られています。
学童期に入ると、疲労やストレス、睡眠不足などが発作を誘発することがわかっていますので、誘発因子をできるだけ日常生活から取り除く努力が大切となります。
入浴は基本的には誰かと一緒に入るようにしましょう。
また学校や医師と連携を密にし、なるべく他の子と同様の体験をさせてあげられるようサポートしていくことが大切です。
思春期は明確な時期がありませんが、10歳もしくは12歳以降、16歳もしくは18歳までの時期を指していることが多くあります。小学校高学年~高校生までの時期です。
この時期に発症するてんかんとしては、若年ミオクロニーてんかんや覚醒時大発作てんかんなどがあげられます。
また女の子は初潮が始まる時期でありホルモンバランスや月経自体が発作を誘発する可能性があります。
その他、ストレスや睡眠不足、疲労もてんかん発作の誘発因子として知られています。思春期のデリケートな時期となりますので、なるべく本人の希望に沿いながら、病気を見守っていく必要があります。
学校生活をしているとクラブ活動や修学旅行といったイベントもあります。
長時間におよぶ活動や、激しい運動をおこなうクラブは疲労が発作に繋がる恐れがありますが、体力に応じた活動はおこなうことは可能です。
修学旅行も生活リズムを崩さず、また服薬を怠らなければそれほど問題はないでしょう。
高校生になればさらに活動範囲が広がり、アルバイトを始めたいという希望もある時期です。
アルバイトも夜勤を避け、また意識が消失する発作を有する子は運転などが必要なバイトは避ければ、おこなうことは可能でしょう。大切なのは病気で可能性を摘んでしまわないことです。
周囲がサポートし、多くのことを体験させてあげましょう。
てんかんの治療は抗てんかん薬による薬物療法を中心に実施します。
数種類の抗てんかん薬を試してみても、発作の改善が見られない場合には、食事療法や外科治療をおこなう場合もあります。抗てんかん薬で発作の改善が見られる症例は全体の約70%といわれています。
残りの約30%が抗てんかん薬では薬効が見られない薬物抵抗性、または難治性てんかんと呼ばれます。
日本国内で外科治療の対象となる患者は推定2000人といわれていますが、実際には年間400~500人程度しか手術を受けていないのが現状です。
また、これら医療機関でおこなう療法以外に、睡眠不足やストレスといったてんかん発作を誘発する因子の排除をおこなうことも非常に重要となります。
抗てんかん薬は非常に沢山の種類が承認され販売されています。
てんかんは発作のタイプがさまざまであり、タイプに合わせて効果が期待できる薬剤を選択することが非常に重要です。
抗てんかん薬は、
などがあり、てんかんのタイプの診断を間違わないこと、また最適な薬を選ぶことが欠かせません。
最初は1種類の薬を服用し、薬効を確認します。
1つ目の薬でてんかん発作が抑制できる患者は全体の50%程度といわれています。
症状に応じて薬の種類を2~3種類に増やします。
複数の薬剤にて、てんかん発作が抑えられる患者は全体の70%程度といわれています。
てんかんは脳の神経細胞の異常興奮により発症いたしますが、抗てんかん薬にはその興奮を抑えるタイプと、興奮の広がりを抑制するタイプ、どちらにも効果を有するタイプが存在します。
抗てんかん薬が効きにくい、または薬で発作をコントロールすることが難しい場合は、食事療法や外科治療についての検討を開始いたします。
抗てんかん薬では効果が得られなかった場合は、食事療法としてケトン食事法をおこなう場合があります。
ケトン食事法とは、エネルギーのもとになる糖類を極力抑える代わりに、脂肪分を増やした食事を摂取する療法です。
糖類とは、炭水化物から食物繊維を除いたものを指し、具体的には米やパン・パスタなどの炭水化物の摂取制限および砂糖の摂取制限をおこないます。
糖類を制限することで足りないエネルギー等は、脂肪分を増やすことで補います。
脂肪分として卵や油・マヨネーズなどを活用します。
詳しい作用機序は解明されていませんが、脂肪が体内で分解されてケトン体が生成され、脳が糖質の代わりにケトン体をエネルギー源としだすと、てんかん発作が軽減できると考えられています。
この食事療法は現在糖質制限のダイエット食として注目を浴びていますが、てんかん治療としておこなう場合は気軽に試せるものではなく、糖質を1食あたり数~数十グラムに制限し、年齢や症状に合わせ内容を変え、栄養素もきっちり計算するなど非常に厳格なものになります。
日本では2016年に難治性てんかん患者を対象として、てんかん食としてケトン食事法が保険適用されています。
ACTH療法とは副腎皮質刺激ホルモンの注射を、一定期間、毎日投与するという治療法です。
日本で保険適応されているのはウエスト症候群に対してのみとなります。
しかし昔から症候性全般てんかんに対して、ACTHの筋肉注射は効果が期待できるとして用いられてきました。レノックス・ガストー症候群や大田原症候群への使用成績も報告されています。
その他、徐波睡眠時に持続性棘徐波を示すてんかん(CSWS)やランドー・クレフナー症候群、ラスムッセン症候群などへの使用も報告されています。
ACTHが有効な症例では、療法開始1~2週間後に症状の改善が見られ始め、症例全体の約50~90%にててんかん発作の改善が得られるとされています。
しかし、ほぼ全員に副作用が発現するため注意が必要です。
保険適応を有するウエスト症候群の治療においては、できるだけ早くACTH治療を開始するとその効果も高くなると考えられていますが、最適な使用方法がまだ確立していないため、副作用の軽減を目的として短期間での投与に留めることが推奨されています。
副作用への懸念があることから、ACTH治療の他に、ステロイドや免疫抑制剤を一定期間投与するという治療法の開発も進められています。
てんかんの外科治療には、発作を止める目的の「根治手術」と、発作の症状や発現頻度の軽減を目的とした「緩和手術」の2種類があります。
根治手術には、扁桃体海馬切除術などが、緩和手術には脳梁離断術や迷走神経刺激などがあげられます。
扁桃体海馬切除術とは、てんかん発作の原因となる異常神経興奮が発生している箇所(焦点)である扁桃体および海馬を切除する方法です。
このように焦点を切除する手術は焦点切除術と呼ばれています。
焦点が明らかな場合は1回の手術のみ、焦点がはっきりしない場合や、言語や記憶などの脳の重要機能を司る箇所が焦点の場合は、手術を2回に分けて障害が残らないよう慎重におこなわれる場合もあります。
脳梁離断術とは、脳梁という左右の大脳をつないでいる水平な神経束を切断することで、左右の大脳間の異常な興奮が伝わる経路を遮断し、発作を軽減させることを目的とした手術です。
迷走神経刺激(VNS)とは、脳の異常興奮を抑制して発作を軽減する装置を体内に埋め込む手術を指します。
日本では難治性てんかん患者を対象に保険適応されています。
てんかんは脳内にて、神経の異常な興奮信号が広がることにより発現いたします。
抗てんかん薬は、過剰な興奮が起こらないよう興奮系を抑制するタイプと、興奮の広がりを抑える抑制系のタイプの2種類が存在します。
またこれまでとはことなる作用機序を持つ新たなタイプの抗てんかん薬も開発されています。
現在、多くの種類の抗てんかん薬が販売されており、発作のタイプや、患者の年齢・性別・体重・併用薬・合併症などを考慮して、その人に合う薬剤を選択していきます。
単剤による治療からスタートし、効果がない場合には薬剤の切り替えや追加を検討いたします。
脳内において、ナトリウムイオンやカルシウムイオンが細胞膜を通過し細胞内に入ると、神経細胞は興奮します。そのためナトリウムイオンやカルシウムイオンの働きを抑えることで、過剰な興奮が発生しないようにする抗てんかん薬が開発されています。
また、中枢神経全般の興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸を抑制する抗てんかん薬もあり、これらの薬は脳内の過剰な興奮が起こらないように抑制する薬として「興奮系」の抗てんかん薬といわれています。
代表的な薬剤としては、
・フェニトイン(商品名:アレビアチンほか)
・カルバマゼピン(商品名:テグレトール、カラゼピンほか)
・バルプロ酸(商品名:デパケンほか)
・ゾニサミド(商品名:エクセグラン、ゾニセップほか)
・エトスクシミド(商品名:エピレオプチマルほか)
・トピラマート(商品名:トピナ、トピロールほか)
などがあげられます。
各薬剤でNaチャネル、Caチャネル、グルタミン酸への作用の度合いがことなり、フェニトインは強直発作に、カルバマゼピンは部分てんかん発作の第一選択薬として、バルプロ酸は全般てんかん発作の第一選択薬として広く使用されています。
脳内の神経物質であり、脳内の興奮を抑制する働きをするGABAの作用を強めることで、てんかんの症状を抑える薬剤を「抑制系」の抗てんかん薬と呼びます。
代表的な薬剤には
・ジアゼパム(商品名:セルシンほか)
・クロナゼパム(商品名:リボトリールほか)
・クロバザム(商品名:マイスタンほか)
・ガバペンチン(商品名:ガバペン、ガバセットほか)
・フェノバルビタール(商品名:フェノバールほか)
・プリミドン(商品名:マイソリンほか)
・ビガバトリン(商品名:サブリルほか)
などがあげられます。
ジアゼパムは重鎮状態(発作が異常に長引く、もしくは意識が回復しないうちにまた発作を繰り返す状態)の第一選択薬として、クロナゼパムはミオクローヌス発作に有効です。
クロバザムは複雑部分発作の追加薬として、ガバペンチンは部分発作の第二選択薬として、ビガバドリンはウエスト症候群(点頭てんかん、通常1歳未満の乳児に発症するてんかん症候群、難病に指定されており予後不良)に使用されています。
GABAへの作用の強さは薬剤によりことなり、症状に合わせて最適な薬剤が選択されます。
興奮系にも抑制系にも分類されない新しい機序の抗てんかん薬として、日本では2010年9月よりレベチラセタム(商品名:イーケプラ)が販売されています。
海外ではブランド名をケプラ(Keppra)として、アメリカで1999年から、欧州では2000年から発売が開始されており、これまで100か国以上、600万人以上のてんかん患者への使用成績を有する薬剤です。
レベチラセタムは、主要なイオンチャネルや各種受容体には結合しないものの、神経終末に存在するシナプス小胞タンパク質2A(SV2A)に結合します。
SV2Aはてんかん発作に関わるとされる物質です。
SV2Aに結合することによるてんかん発作の抑制が主な作用機序となります。
その他に、興奮性神経伝達放出などに関与する興奮性シグナルであるカルシウムイオンの通り道であるカルシウムチャネルの阻害作用、および細胞内カルシウムイオンの遊離抑制作用などによりてんかん発作の抑制に効果を示します。
2013年には小児用量が追加承認され、ドライシロップ剤が発売されています。
海外においても80か国以上の国や地域で小児に対する使用が承認され、広く使用されています。
てんかんは人口の0.5~1.0%の見られるごくありふれた脳神経系疾患です。
世界中で約5000万人、日本国内では約100万人が罹患しているといわれており、決して稀な病気ではありません。
にもかかわらず、多くの人々はてんかんという病気がどんな病気が理解しておらず、強烈な印象を与えるてんかん発作などにより、てんかん患者は社会から偏見と差別を受けているものと思われます。
しかし抗てんかん薬は多くの種類が販売されており、食事療法や外科治療などの選択肢もあります。
周囲の人が正しく病気を理解しサポートすれば、てんかんは十分にコントロール可能です。正しく病気を理解し、工夫を施すことで、充実した毎日を送りましょう。
製薬会社サイト
エーザイ株式会社
東京都文京区小石川に本社を置く日本の医薬品メーカーでコーポレート・スローガンは「ヒューマン・ヘルスケア(Human・Health Care)」。自社開発品が売上高の約90%比率を占めており、かつ海外での売上比率も売上高の半数を超えることが特徴です。
大塚製薬
1964年に設立された医薬品、食料品の製造・販売をしている企業で「オロナイン軟膏」、「ポカリスエット」、「カロリーメイト」の製造元として知られており、治療用の医薬品と、健康維持の栄養食品と取り扱っています。
行政機関サイト
厚生労働省
生活の保障や経済発展のため、国民の健康や子育て、社会福祉、介護、雇用・労働、年金に関する政策を所管している国の行政機関のサイトです。
医療保険制度の制定も担い、海外医薬品の輸入に関する規則や検査もおこなっています。
医薬品情報サイト
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ADHD(注意欠陥多動性障害)とは、精神障害であり発達障害のひとつです。
主に多動性、不注意、衝動性の3つの症状があることが知られています。
など、これらの行動が目立ちます。
子供の病気と認識されているようですが、大人のADHD患者も珍しくなく、また近年増加傾向にあります。
年齢や発達段階にそぐわない行動により、日常生活や、学校生活、職場でのコミュニケーションに障害をきたす可能性がある病気です。
大人のADHD患者は、多くの場合「怠けている」ととらえられてしまう傾向があります。
個人差が大きいのですが、多くの場合は子供のころからADHDに罹患しており、子供のころにADHDに罹患していると、その6割は大人になったとしても症状が残っているといわれています。
ADHDには多動性・衝動性・不注意の3大症状がありますが、大人になると多動性の症状は弱まり、不注意の症状が目立つ傾向があります。とにかく、ケアレスミスや忘れ物が頻繁です。
このことでまず社会人としての信用を得られません。また約束や期日を守れないことも頻繁に起こります。
また片づけも苦手ですので、書類の紛失に繋がったりもします。
また物事を順序立てて考えることが非常に難しいですので、計画を立てることはおろか、作業に優先順位をつけて取り掛かることも、時間と作業量のバランスを取ることもほとんどできない可能性があります。
1つ1つのことは小さくても、社会人としてはできて当然なことです。
「社会人としての自覚」があるのか、周りから疑問に思われてしまい、できない人だというレッテルを貼られてしまうことになりかねません。
ADHDの特徴的な症状としては、多動性、不注意、衝動性の3つの主症状があります。
不注意の症状としては、
・集中力が続かない
・すぐに気が他のことにそれてしまう
・多動性の症状としては長時間じっとしていられない
・そわそわ落ち着かず動いたりしてしまう
衝動性の症状としては、
・順番待ちができない
・思いついた行動をおこなってもよいかどうか考える前に唐突に実行してしまう
といった点が具体的な症状としてあげられます。
幼児期にADHDを発症すると、約6割は成人になってもその症状が残っているとされており、また大人では、多動性は弱まり、不注意の症状が目につくようになるのが特徴です。
不注意の症状としては、
・集中力が続かない
・気が散りやすい
・忘れっぽい
といった特徴があります。
規律と効率が求められる社会人においては、顕著にこの症状が目につくようになります。
長時間の会議では集中力が持ちませんし、気が散りやすい傾向があります。
また細かいところまで注意を払えない場合が多く、ケアレスミスを頻発する傾向があります。
1つのことに集中すると周りが見えなくなるケースもよくあります。
話しかけられているのに気づかない、また注意力が散漫ですので、話を聞いていないかのようにみられることも多くあります。
外部からの刺激に反応しやすいため、現在話している内容やおこなっている行動とは無関係な言動をすることもあります。
他にも約束や期日、納期を守れず、信用を得ることが難しい状態となります。
また忘れ物や物の紛失もよくあります。
計画を立てたり、物事を順序立てて考えたり、時間を管理したりすることを苦手としていますので、効率的なやり方を追い求めることはまず難しくなります。
かといって、単純作業などの同じことの繰り返し作業も苦手としています。
多動性の症状としては、じっとしていることが苦手で落ち着かない感じを呈することが知られています。
この動きは意図的なものではありません。
じっとしていると落ち着かない気分となり、無意識のうちに身体を動かしてしまい、動きを抑えられない状態です。
長時間の会議では、じっと座っていることが困難であり、貧乏ゆすりをしたり、急に立ち上がったり、椅子を動かしてみたりします。
その他、手遊びをしたり、会議資料をめくることを繰り返したり、ボールペンを回したり、指で机や椅子をたたき続けたりといった症状を呈する方もいます。
これらの症状により、落ち着きがなく、じっとすることが不可能な人だとレッテルを貼られるケースがよくあります。
子供のADHD患者には、過度にしゃべる、人の話を遮り一方的に話す、話し出すと止まらないといった症状が強く出る傾向がありますが、この症状は大人になるにつれ、ある程度コントロールできるようになるのが一般的です。
その他、夢中になりすぎて周囲が見えなくなったり、力の入れ方がわからず過敏になったりと、さまざまな活動に静かにおとなしく参加をするのが難しいことが知られています。
衝動性の症状としては、思いついた行動について、おこなってもよいかどうか考える前に行動してしまうことが特徴としてあげられます。
一度立ち止まって考えるというブレーキがききにくくなっているものと思われます。
根底には自分の感情や行動、発言を抑えるのが苦手だという事実があるようです。
そのため会議中に不必要な発言をしてしまったり、相手の発言が終わらないうちに自分の発言をしてしまったり、順番を待つことが難しかったりします。
衝動買いをしてしまうというケースも報告されています。
また子供のADHD患者は気になるものを目にすると、それしか目に入らず、危険をかえりみずに道路に飛び出してしまうケースもありますが、周囲との危険に関しては、大人になるにつれ、ある程度認知できるようになるようです。
大人になるにつれて、目に見える行動的な衝動性よりも、会話で話が飛躍しやすい、言動が理論的でない、または安定していない、順序立てた考えよりも感情が先行してしまうことが多いといった心理的や精神的な衝動性が目につくようになります。
ADHDの他に似たような症状を起こす発達障害としては、自閉スペクトラム症と限局性学習症があげられます。
自閉スペクトラム障害は略してASD(Autism Spectrum Disorderの略)とも呼ばれており、対人関係が苦手であり、また強いこだわりを持つことが特徴です。
限局性学習症は略してLD(Learning Disabilitiesの略)とも呼ばれており、文字の読み書きが上手にできない、また数のイメージがつかないといった算数障害を有するのが特徴となります。
これらは、アメリカ精神医学会による「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」により基準が定義されています。
いずれも精神障害として認知されることが少なく、本人の怠惰だと責められがちですが、脳の発達特性によるものであり、周囲の理解および周囲のサポートが必要です。
自閉スペクトラム症は、対人関係およびコミュニケーションの問題と強いこだわりが特徴的な症状です。
普通の会話のやりとりが苦手であったり、他人と感情を共有することが苦手だったりします。
また表情や身振り手振りから相手の気持ちをくみ取ることも非常に苦手としています。
その他には
といった症状例があげられます。
中には嗅覚や聴覚など特定の感覚が鋭敏な方も見受けられます。
それら症状から「他の人と協調することをしない、わがままな人」といったイメージをもたれることが多くあります。
自閉スペクトラム症の特徴的な症状は、性格上の問題といえばそれまでですが、この特徴が著しく、社会生活を営むのに困難であったり、本人のみならず、家族や周囲の人がつらい思いを抱えたりしている状態を自閉スペクトラム症と呼んでいます。
自閉スペクトラム症には自閉症、自閉性障害、アスペルガー障害、広汎性発達障害などが含まれます。
限局性学習症とは、知能能力にはそれほど問題は見られず、目や耳も正常であるにもかかわらず、「読む」「書く」「計算する」といった特定の分野に限って、習得と使用に著しく困難を示す発達障害の1つです。
たとえば「読む」という分野では、読むのが極端に遅かったり、一文字ずつしか読めず文章として認識できなかったり、読めても意味を理解ができなかったりします。
「書く」という分野では、文字を思い出せなかったり、正確に文字を書けなかったり、濁点や句読点を間違えたり、うまく文章で自分の伝えたいことを表現できなかったりします。
「計算する」という分野では、そもそも数という感覚がわからなかったり、計算するのが遅かったり、計算ができなかったりします。児童によく発現する障害であり、全自動の4.5%はこの障害を有しているといわれています。大体小学校のクラス30人の1人くらいの割合です。
その他、「聞く」や「話す」といった分野においても、全体の指示を聞けなかったり、聞いた内容を記憶しておくことが難しかったりします。また「話す」という分野では、頭に浮かんだことがすぐ口から出てしまうといった症状があげられます。
ADHDの患者は、他の人が当たり前にできる作業ができず、怠けていると周囲から認識されるケースが多くあります。
しかしながら、決して怠けてはおりません。
むしろ1日24時間ずっと頑張っているのにうまくいかないというケースが多くあります。
何かをやり遂げようとしても途中で他のことが気になってしまい、作業を中断してしまう、1つのことに集中すると約束などの他のことを忘れてしまうなど、常に頭をフル回転させても頑張ろうと思っているのに、どうしても物事にうまく対応できない、そして対応できない自分を責めている患者が多いのが現状です。
誰かと会話している最中でも、目についたものが気になってしまいます。
そのため話をしている相手からすれば、自分との会話に集中していないと捉えてしまいます。
人とのコミュニケーションに問題が生じるきっかけとなる可能性があります。
2日前に自分がおこなった行動や約束を忘れてしまうといったケースも報告されています。
忘れないようにメモを取ったのに、当日メモを見るのを忘れてしまい、結局予定した行動を取れなかったり、約束を守れなかったりします。
この点も対人関係に影響をおよぼす結果となってしまいます。
何か1つの作業をしようとすると、途中で別のことが気になってしまう、ということを繰り返して、結局どれも中途半端な状態で、何1つ完遂していないという例も少なくありません。
またやることが沢山あると、頭の中が混乱してしまい、実行するために計画を立てたり、物事の優先順位をつけたりといったことができなくなります。
やらなければいけないことはわかっている、けれどどれから手をつけたらいいのかわからず、その結果、なかなか手をつけられず、締切りや約束に遅れて、周囲の人に迷惑をかけてしまうというケースも少なくありません。
会社員の方でADHDを患っている場合、長時間の会議にて多動性の症状を指摘されるケースが多くあります。
長時間じっとしていることが困難なので、途中からいつもそわそわしたり、もぞもぞしたりといった症状が現れます。
貧乏ゆすりを始めたり、ペンを指で回し始めたり、指で机をたたき始めたり、椅子を無意味に動かし始めたりといった症状が見られます。頻繁にポケットへの手の出し入れを繰り返したりもします。
会議という場でこの行動を取られると、周囲も気になりますし、落ち着きのない態度が会議に集中していないように見えますので、評価が下がる結果となります。
また1つのことに集中すると周りが見えなくなってしまうケースもよく報告されます。
新聞や本を読むのに夢中になるあまり、約束の時間や、勤務開始時間などを失念してしまうのです。
何時までにこれをやらなければいけないとわかっているのに、他のことを始めてしまうと、現在自分がおこなっている行動にしか目がいかなくなっていまします。
これは時間の正確な管理が求められる社会人にとってはとても致命的であり、責任ある立場につくことが困難となります。
他の人と会話している際に、あるワードにひっかかり、今おこなわれている会話はそのワードには直接関係がないにもかかわらず、そのワードに関することを唐突にしゃべり始めてしまう例が報告されています。
会話を遮断された相手はいい気分はしません。
なぜ今このタイミングでその話題を始めたのか、理解できない周囲は混乱してしまいます。
他人とのコミュニケーションに障害が生じるおそれがありますし、何より「空気を読めない人」というレッテルを貼られかねません。また会話で話が飛躍しやすいといったケースも報告されています。
ADHDの人にとっては会話の中で出てきたワードに過敏に反応してしまい、そのワードに関連した内容を、今がそのワードに対して話す最適のタイミングではないにもかかわらず、唐突に話し始めてしまっています。
またワードを聞く度に反応してしまいますので、話がいろいろな方向に脱線してしまうことが珍しくありません。会議の進行を担う者とっては、溜まったものではありません。議論を先に進めようとしても、常に脱線してしまうのです。
ADHD患者に悪気は全くないのですが、もし会議中にこの状態に陥ると、会議に出席している他メンバーは迷惑を被ることとなります。
ADHDの発症原因は、現時点では解明されていません。
しかしながら、生まれつき脳の発達に何らかの偏りがあることが関係していると考えられています。
一昔前は親の育て方の問題だといわれていましたが、決してそうではありません。
現在では、 脳内の神経伝達物質が発症に関与していることも明らかになってきています。
また遺伝的素因もあるとして研究が進められています。
ADHDは幼児期・小児期に見られ、成人期までには症状が消失すると考えられていましたが、現在では慢性的な経過をたどる例があることもわかっています。
ADHD発症および経過を左右する要因としては心理社会的要因が考えられています。
脳はその人の行動や思考をコントロールする働きを有する器官であり、ADHD患者は前頭前野を含む脳の働きにかたよりがあると考えられています。
また脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンやドパミンの働きがADHD患者は不足気味であることがわかってきました。
神経細胞の間隙にあるノルアドレナリンやドパミンはトランスポーターという部位から再度元の神経細胞に取り込まれるのですが(再取り込み)、ADHD患者ではトランスポーターが過剰に機能しています。
神経伝達物質であるノルアドレナリンやドパミンを再取り込みしすぎてしまい、シナプス間隙の神経伝達物質が不足することで情報伝達がうまくいかず、 ADHD患者の不注意や多動性といった特徴的な症状が発現してしまうのではないかと考えられています。
ADHDの発症には遺伝的素因が関与しているとして研究が進められています。
ADHDの遺伝率は約76%と非常に大きく、親がADHDだと生まれてくる子供は、親がADHDではない子に比べ3~4倍ADHDになりやすいといわれています。
脳の発達段階において、自制や抑制に関する脳の神経回路が損なわれてしまったと考えられていますが、詳しい機序、つまりどの部位がどのように機能して、この結果となっているのかについてはまだまだ仮説の域を出ていません。
脳の機能が失われている箇所は、自意識や時間の意識に関連した右前頭前皮質、動悸づけに関連した小脳虫部などがあげられるのですが、複数の遺伝子異常がこれらの脳の機能変化に関与していると考えられています。
ADHDの発症要因として、心理社会的要因もよくあげられます。
いわゆる環境要因のことで、これまでの育ってきた環境と現在の生活環境が関与しています。
ADHDの発症に親の育て方やしつけは関係ありません。
あくまで普通に子育てをしていたとしても、 言動や行動が増幅して目につきやすくなってしまうのです。
ADHDの患者は適切な時期に適切なサポートを周囲から得られれば、うまく障害とつき合っていくことが可能ですが、怠けものとレッテルを貼られ、自分に対する劣等感が強かったり、過去に何らかの物事を達成した経験が乏しかったりすると、ADHDの発症や慢性的な症状に関連してくるといわれています。
ADHDの治療は、職場や家庭での負の連鎖を断ち切り、自分の特性を理解し、自分に自信を持って希望を明日に込められるようにすることが目標です。
決してADHDの特徴的な症状である不注意、多動性、衝動性の3大症状をなくすことだけが治療のゴールではありません。
主な治療法として
があげられます。日常生活の中で自分が困難と思っていることを認識し、 対処方法を考えていくと同時に、一人で抱え込まず、周囲にサポートをお願いできるようになることが大切です。
治療を開始しても、すぐに変化は感じられず、またよくなったり悪くなったりを繰り返しながら、徐々に改善していきます。少しずつ自信を取り戻していけるよう、焦らず治療をおこないます。
環境変容療法とは、家族を含めた患者の周囲にいる人物がADHDを理解し、患者がうまく行動できるように接し方を変え、環境を調整していく療法です。
ADHDの患者は常に頑張っています。
そして自分だけでその苦しみを抱え込み、周囲の人に頼ろうとしない傾向があります。
まず、周囲の人に頼っていいと患者本人がマインドを変えられるように、周囲の人がアプローチ方法を変えます。そうすることで、自分が得意とすること、苦手とすることを理解し、苦手なことは人に相談するよう促します。周囲の人は、指示は簡潔に短くすることで、患者が覚えていられるようにします。
生活環境としては、患者が気になってしまい、集中力を欠く原因となっている物を目のつかない場所に移動します。患者が時間管理を実行したり、仕事の優先順位をつけられるように、たとえば携帯のアラームを活用してみたり、やることリストを活用したりするように促したりします。
その他、家族がサポートできるように、家族間で予定を共有したりもします。また物の場所を指定してあげると、患者は行動しやすいようです。
行動療法とは、ADHDの患者が状況に応じて適切な行動を取れるように、対人コミュニケーションスキルや社会のルールやマナーを教えていく療法です。ソーシャルスキルトレーニングともいわれています。
個人に合わせてさまざまなトレーニングを組み合わせますので、治療内容は均一的ではなく、個々人によってことなる内容となります。
行動療法として現在広く認知されおこなわれている方法に、認知行動療法といわれる療法があります。
患者に自分の状態を認知させ、なぜできないのか自分の原因を見つめさせることで、解決策を見出していく療法です。患者の症状や年齢、合併症の有無などに応じて、技法を選択し組み合わせて対応していきます。
技法の中には一例として、ソーシャル・スキルズ・トレーニングという方法があり、困難な状況をコミュニケーションの側面からとらえ、コミュニケーション力を向上させることで困難を解決しようという方法があります。
その他、アンガ―・マネジメントといって、怒りを予防し制御できるようにするために、怒りは誰にでも起こりうるものであり、怒りは自分がストレスを抱えているときに発生し、それを表に出すことは決して悪いことではないとマインドを変えさせるという療法もあります。
ADHDの患者は、脳内の神経伝達物質であるドパミンおよびノルアドレナリンが不足していることにより、情報伝達がスムーズにおこなえていないため、多動などのADHDの症状が発生してしまっていると考えられています。
そのため、ドパミンおよびノルアドレナリンを増やす薬剤である、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬および中枢神経刺激剤などがADHDの治療には用いられています。
服用量や服用期間は個々によってことなります。治療経過も個人差が大きいことが知られています。
薬を服用して、ある程度自分の症状をコントロールできるようになったり、環境調整などで対応したりすることが可能になり、その状態をある一定期間以上維持できた場合は、今後の薬物治療をどうしていくか検討します。
薬がなくても大丈夫そうであれば、薬の中断もしくは中止を考慮いたします。
薬の服用初期には、吐き気や口渇、頭痛、食欲減退といった副作用が発現する場合があります。
身体が薬に慣れるにつれ軽減されますので、様子を見て、ひどい場合は医師に相談してください。
幼児・小児のADHDには薬物療法が推奨されておらず、基本的に成人のADHDを対象におこなわれる療法です。
成人のADHDの治療に関しては、英国国立医療技術評価機構(NICE)は薬物療法を推奨しています。
一方、幼児期の治療は世界保健機関や日本ガイドラインも含めて、薬物療法は原則おこなわず、環境変容療法および行動療法を優先するよう推奨されています。
幼児への薬物効果を大規模に検証した試験にて、行動療法と大きな差が認められず、また長期投与による利点が見つけられないといった報告が複数あがったためです。
成人のADHDに対しては、
などを用いることで、多動などのADHDの症状を抑制します。
現在日本で承認されている薬剤にコンサータ(一般名:メチルフェニデート塩酸塩)という薬剤があります。
中枢神経刺激剤であり、脳内神経伝達物質であるドパミンおよびノルアドレナリンに作用しますが、作用するのはドパミンがメインです。
ドパミンおよびノルアドレナリンの再取り込みを抑制することで、脳内のドパミンおよびノルアドレナリンの濃度を上げ、働きを活性化させます。
ドパミンが不足すると、順序立てて物事を考えられなくなったり、待つことが困難になったりすることが知られており、これらのADHD症状の改善に効果を示します。
朝に(遅くとも正午までに)1日1回服用し、効果があるかどうかは3回程度の服用で判断することが可能です。薬効は服用後10~12時間程度持続いたします。
夕方には効果が切れる計算ですが、これは寝つきが悪くなるなどの入眠障害の副作用が1%程度発現することが知られているためです。
その他の副作用としては食欲低下が30~50%の患者にみられることが報告されています。
特に薬がよく効く昼間に発現しやすく、昼食をあまり食べられなくなるという症状が発現するようです。
ただし朝食の量を増やしたりなどして調整が可能です。また胃炎治療薬を併用するケースもあります。
現在日本で承認されている薬剤にストラテラ(一般名:アトモキセチン塩酸塩)という薬剤があります。
選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤であり、ADHD患者で不足気味の脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンとドパミンの再取り込みを抑制することで、ノルアドレナリンおよびドパミンの活性を上昇させる薬剤です。
ノルアドレナリンとドパミンどちらにも作用しますが、主に作用するのはノルアドレナリンとなります。
剤型はカプセルと液剤の2種類があり、小さな子供でも服用可能です。
子供は1日2回(朝・夕)の服用が推奨されていますが、大人は1日1回でも構わないとされています。
ストラテラは低用量から服用を開始し、徐々に3段階で服用量を増やしていき、適切な維持用量へともっていきます。これは高用量から服用を開始すると副作用が強く発現してしまうためです。
そのため薬効を感じられるようになるまでは、服用開始から1~2か月かかることが知られています。
1度服用すると、その薬効は24時間持続します。
服用開始時や用量を増量した時に副作用が発現しやすいですが、軽度なものが多く、2~3日程度で治まることが一般的です。
主な副作用は眠気や頭痛、食欲低下などです。ジェネリック医薬品も日本国内で承認され、販売されています。
現在日本で承認されている薬剤に、インチュニブ(一般名:グアンファシン)という薬剤があります。
選択的α2A アドレナリン受容体作動薬であり、日本では2017年に発売が開始された新しいタイプの薬剤です。
ただし世界では2009年から販売されています。
これまで神経伝達物質を放出する前シナプスに作用し、神経伝達物質の再取り込みを抑制する作用機序を持つ薬剤が主にADHDの治療に用いられてきましたが、インチュニブは神経伝達物質を受け取る側の後シナプスに作用します。
後シナプスに存在するα2Aアドレナリン受容体に結合して、後シナプスにあるイオンチャネルを閉じることで、脳内の情報伝達を増やす作用があるといわれています。
脳内の神経伝達物質の量には関与せず、情報を受け取る側の機能調整を図ることから、非刺激治療薬と呼ばれています。
1日1回投与で、その薬効は24時間持続します。
服用開始から薬効を感じられるまでには、1~2週間かかるのが一般的です。
主な副作用に血圧低下があり、心疾患を有する患者は服用が難しく、特に房室ブロック(第二度、第三度)を有する患者は服用できません。
現時点では小児期(6歳以上18歳未満)にのみの適用となっています。
ただし18歳未満で服用を開始した場合は18歳以降も服用を継続できます。大人への適応拡大が望まれます。
ADHDを有する患者は二次的な症状として、うつ病や不安障害いった症状を発現する可能性があります。
うつ病は、周りから自分へのネガティブな評価に反応して発現してしまうといわれています。
不安障害も同様に、周囲から長年に渡りネガティブな評価を受け続けたことによって、何をいっても何をしても受け入れてもらえないのではないかという過度な不安に苛まれることによって発現するといわれています。
ADHD患者の11%は双極性障害を併発しているという報告もあり、ADHDの治療と並行して、うつ病や不安障害の治療をおこなっていき、患者本人をサポートしていく治療が取られることがあります。
うつ病には、三環系抗うつ薬や選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI)などで脳内のセロトニンやノルアドレナリンの濃度を調整します。
不安障害にはSSRIが第一選択薬として使用されることが一般的であり、こちらも脳内のセロトニンやノルアドレナリン濃度を調整します。
その他、ベンゾジアゼピン系という脳内の神経物質であるGABAを調整する薬剤が短期間用いられることもあります。
ADHDを有する児童のうち約3割がてんかんに似た脳波を示すことが認められており、この脳波が認められた患者は、てんかんの治療を併用するケースがあります。
ADHDは、患者の努力がたりないのではなく、また親のしつけや育て方の問題ではなく、患者本人が生まれ持った素質です。
その素質を患者本人と周囲の人が認識し、対処方法を共に考えていくことで、これまで困難であった社会生活に適応できるようになります。
一昔前では、幼児・小児に発症する病気であり、成人になるにつれ症状が消えると考えられていましたが、成人になっても症状が慢性的に残ることがわかってきました。
社会人生活に適応するのはADHD患者一人では難しく、周囲の人のサポートが欠かせません。
家庭や職場環境などを調整する環境調整療法や行動療法と薬物療法を組み合わせることで、困難な状況を打破できるようになります。
製薬会社サイト
日本イーライリリー株式会社
世界9位の売上を維持している米国の国際的な製薬会社、イーライリリー・アンド・カンパニーの日本支社。医療の発展に大きく貢献しており、特に中枢神経系、内分泌・代謝・骨、がんの新薬の開発に力を入れています。
情報サイト
ウィキペディア(日本版)
ウィキメディア財団が管理・運営しているインターネット百科事典の日本語サイトです。 詳細かつ、網羅的な情報を掲載しており、他の辞書サイトでは容易に確認できないような事柄についての記事を確認することが可能です。
医薬品情報サイト
メディカルノート
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