HIVとはHIVウイルスに感染しておこる性感染症(STD)です。
HIVウイルスは人の免疫系を制御しているリンパ球やマクロファージに感染し、増殖していきます。感染してすぐに何か自覚症状がおこるわけではありません。
しかし、放置していると免疫機能がHIVウイルスに乗っ取られてしまい、後天性免疫不全症(エイズ)を発症します。
現在エイズ(AIDS)はHIVが最大の原因疾患であるものの、2つは別の病気です。
かつては男性同性愛者間の感染拡大が問題視されていましたが、性別や性癖で感染リスクが変わるわけではありません。
またしっかりと予防し、たとえ感染したとしても治療をおこなえば怖い病気ではないということを解説していきます。
1981年に世界初のエイズ患者が認められて以来、エイズとHIV感染症を取り巻く環境は大きな変化を迎えています。
エイズは進行性で放置しているとどんどん悪化し、死亡率の高い疾患ですが、HIV感染症の段階で抗HIV薬の治療を始めると、高確率でエイズの発症を予防できるようになりました。
抗HIV薬は生涯飲み続けなければならない薬ですが、逆説的には飲み続けている限り他の性感染症と比較しても怖い病気ではなく、性行為の時にしっかりと予防しておけば感染リスクを大きく低下させることが可能です。
2017年末の時点で、世界のHIV感染症陽性者は3,690万人、毎年およそ180万人がHIVに感染しています。またエイズによる死亡者は年間94万人と報告されています。
エイズ患者が初めて世界で認められたのは1981年のアメリカです。
その後アメリカを中心にヨーロッパ、カナダ、オーストラリアでもゲイ(男性同性愛者)の間でHIV感染患者が相次いで発見されました。
ストレートやレズビアン(女性同性愛者)の患者数はゲイほど多くなかったので、HIV感染症=エイズ(AIDS)=ゲイのかかる病気という誤解が広がり、今でも根強く残っています。
エイズに関連する死亡者数は2004年がピークでその後は減少し続け、2017年時点では51%まで減っています。しかし、年間のエイズ患者死亡者数は今でも94万人にのぼります。
1990年代はアメリカ成人男性の死亡原因上位がエイズで、アメリカ政府は本腰を入れて研究に取り組み、多くの抗HIV薬が開発されました。
そのかいもあり、現在欧米のHIV感染症流行は沈静化しつつあります。
しかし、感染の舞台は薬が買えない貧困層の多いアフリカや、中央アジアに移っていきます。
特にアフリカでは女性の患者数が急増し、HIV感染症はゲイ特有の病気ではないと広く知られるきっかけになりました。
日本ではまだ未承認ですが、現在欧米を中心としてPrEP(プレップ=感染前予防投与)が積極的に導入されています。
これは感染が認めらる前から任意で抗HIV薬を服用する方法です。
日本でHIV感染症患者の数が急激に増え始めたのは1990年です。
HIV、エイズ(AIDS)ともに患者数のピークは2013年でそれ以後は横ばいか減少傾向にあります。
2015年までのHIV陽性患者+エイズ患者の累積報告数は25,995人です。
厚生省の発表では「2008年以降患者総数は減少または横ばい傾向に転じている一方で、新規エイズ患者数はいまだ減少していない」とされています。
HIV+エイズのトータル患者数が減少から横ばい傾向なのに、新たなエイズ患者数が減少していないのにはどういう理由があるのでしょうか。
最大の理由は、新規のHIV感染症患者が減っていることだと思われます。日本では匿名でHIV検査を受ける制度が定着し、それが新規感染者を減らす啓発につながっています。
一方ですでに感染してしまった人が途中で投薬を中止するか、匿名検査や自宅検査キットなどを利用しないでエイズを発症してから医療機関を受診している現状が新規AIDS患者増加の背景にあると考えられます。
日本ではHIV感染症を発症し抗HIV薬の投与が開始された場合、医療費助成制度の給付対象になるので、心配な人は積極的に検査を受けることをおすすめします。
今でも多くの人がHIVとエイズ(AIDS)の違いを理解できないでいます。その原因は「エイズの原因はHIVウイルスである」と報道されたことにあります。
確かにHIV感染症が進行するとエイズに移行します。しかしエイズの原因はHIVウイルスだけではありません。では、エイズとはどのような病気なのでしょうか。
現在AIDSには23の症状があるといわれています。代表的なものがカリニ肺炎、カポジ肉腫、悪性リンパ腫などですが、他にも健康体なら感染しても発症しない数々の日和見感染症が同時多発的に発症します。
冒頭の方でも説明していますが、エイズ(AIDS)の日本語訳は「後天性免疫不全症候群」です。
免疫不全を起こす原因はインフルエンザや肺炎球菌、大きな外科手術の後といったぐあいに免疫力が低下すると発症リスクが高くなります。
これに対してHIV感染症はあくまでもHIVウイルスに感染した場合に限定される病名です。
つまり、HIVウイルスは免疫系の中核となる血球細胞に感染するため、進行すると免疫力が大きく低下し、エイズを起こしますが、エイズとなる原因はHIVウイルスだけではないので、この2つは違う疾患であるという解釈です。
HIVウイルス(人免疫不全ウイルス)に感染後、適切な投薬治療を受けないと私たちの体を病原体から守ってくれるリンパ球やマクロファージがどんどん壊されていき、ちょっとしたことでも体調を崩します。これがエイズです。
ただしエイズを発症したとしても、即体調が悪くなり死に至るというわけではありません。エイズの病態は段階的に3つの時期に分類されています。
HIV感染症自体は初期症状として風邪やインフルエンザとよく似た自覚症状があります。
ただし初期症状を過ぎた後は症状が消失してしまうので、ちゃんと検査を受けないと一般的な風邪やインフルエンザと勘違いをしてしまい、間違った治療がおこなわれていつの間にかエイズに移行します。
初期症状はHIVウイルスに感染した初期に起こる症状です。
ウイルスは侵入後2〜3週間ほど潜伏します。したがってリスキーな性行為の後、当日や翌日に検査を受けても感染は確認されません。
潜伏期が終わると急速にHIVウイルスが増殖し始め、発熱、筋肉痛、倦怠感などの「インフルエンザ様症状」といわれる自覚症状を感じることがあります。
ただし、この症状は100%現れるものではなく、中には無自覚のまま初期症状期を過ごす人もいます。
また初期症状は数日から数週間で自然寛解するので、この時期に風邪やインフルエンザの治療を受けた人は自覚症状が消失することで本当に風邪やインフルエンザだと思い込み、その後は検査を受けずに放置することが珍しくありません。
それ以外の初期症状として1cm前後の小さな赤い発疹を起こすことがあります。
この皮膚症状もインフルエンザ様症状と同様に自然消失していきます。
アナルセックスや性的な暴力を受け数週間後に初期症状が出ても、それがすぐにエイズとは結びつかない人も多いので、リスキーな行為の後は3週間〜4週間後に匿名検査やセルフ検査キットを使って調べてもらうようにしましょう。
初期症状期が過ぎるとHIVウイルスは免疫系によってある程度駆逐され、症状が自然寛解します。
しかし、HIV自体が完治することはないので、寛解後も体内ではHIVウイルスの活動が続いています。
初期症状期からエイズ発症までの期間を「無症候期」と呼びます。
無症候期には個人差がありますが、早い人で数ヶ月程度、長い人は10年以上無症候期を継続するケースが認められています。
血液検査で陽性反応が出た人は定期的にCD4とCD8という項目の数値を重点的にチェックします。現在では感染早期からの抗HIV薬による治療開始が原則なので、CD4が1000を切る前から服薬開始となるケースもあります。
無症候期から治療を開始できれば、その後はHIVウイルスの増殖を効果的に抑制し、薬を飲み続けている間はエイズ発症のリスクはゼロに近いレベルまで抑え込むことが可能です。
HIVウイルスは日常生活やキス程度の接触だと感染しないので、非感染者と生活をともにしても感問題ありません。
投薬は1日1回〜2回程度で済むので周囲にバレることなく治療を続けられます。
ただし、医療費助成を受けるには申請が必要で、認定されると障害者手帳や医療券が送付されてくるため、家族やパートナーには事情を説明した方がよいでしょう。
HIV感染者が無症候期を放置しているとHIVウイルスは確実に免疫系をむしばんでいきます。
投薬治療を受けている人も途中で薬を中止したり、保菌者同士でリスキーな性行為したりすると耐性菌が誕生する可能性があります。
HIVウイルスは他の性感染症の病原菌と比べて感染力が強いわけではありませんが、免疫系や抗HIV薬に対しても高い抵抗性を示します。
このためHIV治療時には複数の抗HIV薬を同時に投与するカクテル療法が第一選択肢です。
この治療を中断したり、感染に気付かずに放置したりすると健康な人なら感染しても発症することのない日和見(ひよりみ)感染症を起こす可能性が飛躍的に高くなります。
日和見感染症には数多くの種類があります。
大気や水に含まれる黄色ブドウ球菌や肺炎球菌に感染して呼吸器症状を起こすこともありますが、性行為で梅毒や肝炎ウイルスに感染する確率が高くなります。
また日本人の80%以上は単純ヘルペスウイルスを保菌しているので、帯状疱疹や性器ヘルペスを起こし、中には悪性リンパ種のように悪性腫瘍を引き起こす例もあります。
これらが単発ではなく同時多発的に起こるのがエイズの怖さです。特に症状が出やすいのは性器、皮膚、呼吸器、消化器、口腔内、目、鼻腔内とされています。
エイズ発症の過程はこれまで説明してきたように、初期症状期から無症候期を経てエイズ発症に至るというものですが、中には無症候期が極端に短い「いきなりエイズ」を発症する人がいます。
特に中高年に多く、加齢によって基礎代謝が低下し、免疫力が弱くなってしまうと起こりやすくなると考えられています。
高齢化がすすむ日本では今後「いきなりエイズ」が増加すると予想されています。
しかし、免疫力を低下させるのはなにも加齢からくる基礎代謝の落ち込みだけではありません。
たとえばインフルエンザや食中毒などの感染症、梅毒や淋病、性器ヘルペスなどの性感染症、メタボリックシンドロームや高血圧、糖尿病などの生活習慣病、がんや心臓疾患などの大手術の後、うつ病や不眠症などの精神疾患、精神的なストレスの蓄積も大きなリスクになります。
特に女性は更年期障害、男性はLOH症候群のように加齢からくるホルモンバランスの乱れによって起こる病気は40代以降急増するので、40代になったら健康管理にはしっかりと気を使うようにしてください。
エイズ患者の40代以上に注目した場合、いきなりエイズを発症した人の割合は43%と非常に高い数値を記録しています。
HIVやエイズは性感染症ですので、セックス(膣性交)やアナルセックス(肛門性交)などの性的な接触で感染します。媒介は血液やそれ以外の体液です。
ただし、HIVウイルスが唾液に含まれていたとしてもキス程度では感染しません。
それに、日常生活の中で歯ブラシを使いまわしても感染しないことがわかっていますので、リスキーな性行為をしない限りほぼ感染リスクはないと考えてよいでしょう。
一番危険なのはアナルセックスです。
膣は膣分泌液によって病原菌が排出されることで衛生的に守られていますが、直腸はそのような分泌液がないので安易にHIVウイルスの侵入を許してしまいます。
このパートでいう性的感染とは、セックス(膣性交)とアナルセックス(肛門性交)です。オーラルセックス(口腔性交)や女性の性器を舐めるクンニリングスではHIVやエイズに感染するリスクはほとんどありません。
特にアナルセックスでは次のパートで説明する「血液感染」のリスクも高くなります。
したがってもっともリスキーな性行為はアナルセックスだと認識してください。
膣性交の場合は膣分泌液でウイルスが排出されますが、激しいプレイでペニスの出し入れを繰り返すと膣とペニスの両方に細かい傷がつき、そこから感染するリスクが高くなります。
近年、アフリカや中国、韓国などで報告されている感染例では性的暴力によるものが増えています。これはSMやDVによって、傷口から汚染した精液や体液が侵入し、そこから感染が広がる例です。
中東やアフリカ、中央アジアではドラッグによるエイズ感染の流行が問題視されています。
これは薬物を注射する時に使用する針を使い回すことが原因です。
感染者が注射器で薬物を注入し、それを第三者と共有することで感染が広がっていきます。
また、これは刺青でも同様のことが指摘されています。日本ではかつてC型肝炎が問題視された時も刺青を入れた時に使われる針と墨が汚染していたことで感染が拡大しました。
これを受け、今では針を使い回さなくなりましたが、墨の使用状況についての実態はつかめていません。エイズでも同じことがいえます。
特に貧困層の多い中央アジアや中東エリアではこのような汚染の状態が深刻であると考えられます。
海外では安易にタトゥーを入れるなどの行為を控えた方がよいでしょう。
日本でも100%安全とはいい切れません。
母子感染とは、保菌者の女性が妊娠して胎児に感染させてしまうことです。
HIVウイルスは血液や粘膜を媒介として感染するので、母子感染には十分な警戒が必要といわれています。
母子感染で最も多いのは、胎児が産道を通る時に目や性器にウイルスが付着するケースです。
それ以外にも妊娠期間中は臍帯血を通して母体と胎児間の栄養や酸素のやりとりがおこなわれているので、臍帯血を媒介として感染するケースも報告されています。
さらに免疫力が完成していない赤ちゃんは、母乳から感染するケースも否定できません。
日本ではあらかじめ感染している母親には抗HIV薬を投与して、母乳を与えないことで母子感染を0.6%以下まで抑えることに成功しています。
現代の抗HIV薬は、逆転写酵素阻害剤が主流です。
ウイルスは細胞核を持たないので、寄生先の細胞核の内部に侵入し、DNA情報を転写する酵素の働きを利用しながら自身のDNAをコピーして増やしていきます。
抗HIV薬はこの時細胞核の内部で働く逆転写酵素の働きを阻害することで、HIVウイルスの増殖を抑え込みます。
このように特定の酵素だけに反応する薬は他の細胞や臓器に悪影響をおよばさないので、副作用が少ないというメリットがあります。
しかし、HIVウイルスは変異するのがとても早く、抗HIV薬を飲み続けないと増殖を止められません。
初期型の抗HIV薬は連続投与で耐性菌を作る可能性が高かったため、CD4が200を切ってから投薬を開始するのがHIV治療の原則でした。
現代ではウイルス感染を発見した段階で投薬開始するのが第一選択肢です。
したがってCD4が1,000以上でも投薬が始まります。
エイズを発症してしまってからでは治療が困難になるので、早期発見・早期治療をおこなうことが何よりも重要視されています。
HIVやエイズを調べるには、ま血液検査を受けなければなりません。
しかも、身に覚えのあるリスキーな行為(性行為、アナルセック、SM、感染者からの暴力、注射器の使い回し)から3週間以上経過しないと確実な結果が出ないので注意が必要です。
検査方法は病院で検査を受ける、保健所や検査センターなどの施設で匿名検査を受ける、セルフ検査キットを使って自分で検体を採取して調べる、といった方法があります。
一番費用がかからないのは保健所や検査センターで受ける匿名検査です。ほとんどの場合無料で受けることができます。
ただし、検査受付の時間や曜日に制限がありますので事前に予約を入れるようにしてください。
セルフ検査キットはネットで申し込み、自分で検体を採取する方法です。誰にも知られたくない場合はこの方法がおすすめです。
保健所や検査センターで受ける匿名検査が通常検査です。
ネットや電話で予約を入れ検査場で採血をしてもらいます。無料で受けられるところが多いので積極的に活用していただきたいと思います。
ただし、通常検査は結果が出るまで1週間〜1ヶ月ほど時間がかかります。
匿名で検査を受けられますが、待合室で他人と対面することになるので、ある程度の決心は必要かもしれません。
HIV感染の有無を調べるには幾つかの検査を実施することになります。
最初におこなわれるのが、スクリーニング検査です。
スクリーニングとは「ふるい分け」という意味で、この検査で陰性であればHI感染していないと判断されます。
陽性反応がでた場合はさらに詳しい検査がおこなわれますが、採血は1回だけです。
病院で検査を受ける場合は、当日に結果がでる即日検査(迅速検査)が可能です。
ただし、この場合は通常の診察と同様に申し込み用紙に記入をしてカルテが作成されます。
あるいは、外科手術や処置の前に、リスキーな性行為や感染者から暴力を受けたという問診があった場合、あるいは初診時や術前のスクリーニング検査でウイルス性肝炎または梅毒検査で陽性反応が出た場合も即日検査がおこなわれます。
自分の意思で即日検査を受けたい場合は保険証が使えない自由診療、何かしらの疾患治療にともなう検査でHIV感染の疑いが出た場合は保険診療になります。
自由診療の場合は医療機関によって検査費用がことなりますが、10,000円前後が相場と思われます。
ネットで申し込み、自宅で検体を採取し、郵送した後にネットや電話で検査結果を確認する方法です。
検査キットが送られてくるため住所や名前は隠せませんが、検体と申込書自体は番号で管理されているので、匿名性は高くなります。
なにより、医療機関や保健所に出向かなくて済むので、周囲に知られずに検査を受けることが可能です。検体採取と結果を確認する方法はマニュアルをしっかりと確かめてください。
セルフ検査では精度を疑問視する意見も多いのですが、医療機関からの外注で検査を実施している第三者検査機関がおこなうので結果はかなり高精度です。
陽性反応が出た時は検査結果を持参して医療機関を受診してください。
HIV以外の性感染症も同時検査が可能です。
HIVやエイズの治療は抗HIV薬による服薬治療がメインとなります。
初期症状期には急性増悪して発熱などの自覚症状をともなうことがあり、この時は解熱剤を投与します。その後、初期症状が治まれば抗HIV薬の継続的な投与開始となります。
かつては免疫力を示すCD4の値が200を切るまで、抗HIV薬の投与は控えるべきと考えられていましたが、現在では早期かつ連続的な投与が高い治療効果を維持するということが立証されています。
現在では数種類の抗HIV薬が開発されていて、患者さんの病態にあわせて複数の薬を投与する「カクテル療法」が最も効果的です。
しかし、複数剤投与をおこなうということは副作用のリスクが高まり、万が一耐性菌ができた場合、他の薬への抵抗性が懸念されるため、投薬開始をおこなう際には医師だけでなく、薬剤師とも面談して投薬治療の効果と副作用をしっかりと説明することが義務付けられています。
なお一部の抗HIV薬の中には、抗生物質や抗うつ剤との飲みあわせに注意が必要なケースがあります。
投薬治療中に他の疾患で治療を受ける場合には、主治医とよく相談の上、薬の手帳を活用することを心がけましょう。
HIVウイルスには、非常に変異の早いレトロ型であるという特徴があります。
これは抗生剤に対する抵抗性の強さでもあり、抗生物質中心の治療ではすぐにウイルスが耐性を持つことを意味しています。
したがって現在の抗HIV薬はウイルスの増殖を抑制する働きに重点を置かれて開発されています。このタイプの薬だとウイルスを完全に消滅させることは難しいのですが、深刻な健康被害をもたらせ、他人への感染拡大を起こすために必要な量以下に抑え込むことが可能です。
まだ日本では厚生労働省に承認されていませんが、海外ではすでに主力となる抗HIV薬のジェネリックが開発されPrEP(発症前投与)薬として活用されています。
世界的なジェネリック医薬品メーカーとして知られているインドのシプラ社が開発した抗HIV薬です。2種類の抗HIV成分が配合されていて、これ1つで高いウイルス抑制効果を発揮します。
主成分はラミプジン150mg、ジドブジン300mg(いずれも1錠あたり)です。
オリジナルの抗HIV薬は非常に高額ですが、デュオビルなら60錠(1ヶ月分)あたり5,000円前後で入手することが可能です。
ただし、日本では未承認薬なので個人輸入代行で購入します。
主成分のラミプジンはエピビルという薬、ジドブジンはレトロビルという薬の成分です。
ジドブジンは古い薬で1964年に抗がん剤として開発されたものですが、満屋裕明という日本人によって抗HIV作用が確認され、抗がん剤からチェンジした成分です。
世界初の抗HIV薬としても知られ、日本では1987年に承認されました。
ジドブジンには骨髄抑制の副作用があるため、定期的に検査を行い患者さんの全身状態を観察しながら投与する必要があります。
骨髄抑制が起こると溶血、好中球減少症、免疫力の低下、悪性貧血などの深刻な健康被害を起こす可能性があります。
現在HIV治療の最前線で用いられているのが、ツルバダという薬です。
アメリカではHIV感染予防(PrEP)薬としてPrEPの主力薬として認定され、多くの人がツルバダを感染前から服用しています。そのツルバダのジェネリックがテンビルEMです。
PrEPにおけるツルバダの予防効果は90%以上という良好な結果を残しています。
日本でもツルバダは承認されていますが、1ヵ月あたり120,000円以上の負担になります。
しかし、テンビルEMならば1ヶ月あたり6,000円ほどで購入できます。
欧米では当たり前となったPrEPがどうして日本ではまだ未承認なのかというと、国内のHIV感染者数が横ばいから減少状態のためと考えられます。
世界でPrEPが承認されてからHIV感染症を予防するのにコンドームの使用率が減少しているという傾向も報告されています。
HIVは高い確率で他のSTDが合併するため、厚生労働省ではPrEPではなくコンドームによるHIVの予防を呼びかけていく方針です。
しかしながら、国内では外国籍の新規HIV感染者数増加が報告されているので、今後日本でもPrEPが承認されるかもしれません。
日本でもすでに数多くの抗HIV薬が承認されています。しかしPrEPは未承認なので、治療薬が投与可能なのはHIV感染者かエイズ発症患者に限定されます。
抗HIV薬は医療用医薬品であり、処方するには処方箋が必要です。
一般の薬局では取り扱いがありません。
海外的にPrEPが広がりを見せるなか、日本国内でも試験的にPrEP導入に踏み切るクリニックが出てきました。
しかしツルバダはとても高価な薬なので、日本でPrEPを実行するには個人輸入代行を使ってツルバダジェネリックのテンビルEMを購入するのが一般的な方法になります。
日本国内の抗HIV薬は非常に高価です。
第一選択肢のツルバダは単剤でも3割負担で「月4万円+治療費」になります。
通常HIV治療では複数の抗HIV薬を投与するので、高額療養費の対象です。
そのため患者側の医療費負担軽減を目的に、自立支援医療法の適用がおこなわれます。
自立支援医療法では、指定医療機関での治療と投薬が前提となります。
抗HIV薬がデリケートな薬であると同時に、指定医療機関の認定は院外薬局に対して出しづらいため、通常HIV治療薬は、院内製剤が可能な医療機関で処方されます。
自立支援医療制度は障害者、精神障害者を対象として医療費の自己負担金を軽減するための助成制度です。
HIV感染者の場合、自立支援医療制度の中の「厚生医療」が適用されます。更生医療は身体障害者手帳の交付を受けている人が対象なので、抗HIV薬の投薬と同時に身体障害者の申請をおこないます。
原則として申請については各地方自治体の市町村役場か区役所に自分で問い合わせをします。
ただし、東京都の指定医療機関ならば、医療相談室で専門の民生員か相談員が対応してくれるケースもあります。
日本でもゲイの間で認知され始めているのがPrEPですが、日本ではPrEPに使われるツルバダは厚生労働省に承認されている医療用医薬品であり、保険医療機関(病院やクリニック、調剤薬局など)では自由診療で処方できません。
また、1ヵ月あたり12万円前後することもあり費用的にもツルバダをPrEPに使用するのは現実的ではありません。
そこで個人輸入代行を使ってツルバダジェネリックのテンビルEMを使うのが最も現実的な選択肢になります。
テンビルEMなら1月あたり6,000円〜10,000円程度で購入できます。
このツルバダジェネリックは日本では未承認薬ですが、個人輸入代行を使って購入することは完全な合法行為です。
また個人輸入代おこなら面倒な申請をしなくてもネット通販で気軽に入手できます。
ただし、医薬品の個人輸入代行はあくまでも個人に対してのみ可能であり、為替相場によって値段が上下することや手元に届くまで時間を要する場合もあるということは覚えておいてください。
利用する個人輸入代行業者の信頼性を比較サイトでチェックすることも必ずおこなうよう心がけてください。
日本ではエイズの患者数がおよそ500人前後、HIVは1,000人前後です。 これは諸外国に比べると高い数字ではありません。このため日本の場合HIVを予防するのはPrEPではなく従来通りコンドームの使用による啓発が主流です。
その主な理由はHIVに感染している患者のおよそ40%〜50%が他のSTD(特に多いのは梅毒)を合併するからです。コンドームで予防することで他のSTDの同時予防になります。
しかし、日本でも新規感染者が毎年100人以上報告されてます。 心配な人はPrEPで使われるツルバダジェネリック(テンビルEM)を個人輸入代行で購入し、保健所や検査センターあるいはセルフ検査キットを使って定期的に検査を受けるようにしましょう。
医薬品情報サイト
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