不安障害とは、精神障害の1つであり、不安を主症状とする疾患をまとめた名称です。
全般的な不安症状を呈するものや、過去の何かがトラウマとなって発生しているもの、持病や薬などの物質によるものなど、さまざまな病態が不安障害には含まれます。
代表的な疾患としては、
などがあげられます。
発症原因は十分に解明されていませんが、さまざまな心理社会的要因を有することが多く見受けられます。
基本的には過剰な不安や恐怖などの症状を軽減する対症療法をおこなっていきます。
不安障害には不安症状を主症状とするさまざまな疾患の総称であるため、多くの病気が含まれ、以下に分類することができます。
この分類はアメリカ精神医学会が発表した精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-IV-TR)に基づくものです。臨床で使用される分類基準にはWHOの疾病および関連保健問題の国際統計分類(ICD-10)も用いられており、少々ことなる点もありますが、DSM-IV-TRとほぼ共通した分類方法となっています。
パニック障害とは、突然強い恐怖や不安に襲われ、動悸、めまい、吐き気、混乱、呼吸困難といった症状が発現するのが特徴です。
症状として、パニック発作、予期不安、広場恐怖があげられます。
パニック発作とはパニック障害の典型的な症状で、突然強いストレスを覚え、動悸、めまい、息切れといった発作のような症状が発生することをいいます。
予期不安とは、パニック発作に強い恐怖を感じており、発作が発生する場面を過度に恐れ、また発作が起きるのではないかと不安を募らせる状態です。
また広場恐怖とは、パニック発作を繰り返すたびに、発作が起きてしまったらその場から逃れられないという妄想を指し、ひどくなると引きこもりになったりします。
恐怖症とは、特定の状況や対象に対して、著しい恐怖感を感じる状態を指します。
ヒトは日常で恐怖を感じることはあり、たとえば蛇を怖がることがありますが、それは日常生活に問題を起こすものではないのが現状です。
恐怖症とは、恐怖の対象に直面すると、著しい恐怖を覚え、不安や苦痛を回避しようとすると、著しい苦痛をともない、さらには生活機能上の障害が発生する場合を指し、その対象としては動物や虫、雷や嵐などの自然環境、注射などがあげられています。
過去犬に襲われた経験を持つ方は、犬を過度に恐れるようにはなりますが、著しい苦痛や何かしらの機能障害を示さない場合は恐怖症とはみなされません。
強迫性障害とは、略してOCD(Obsessive–compulsive disorder)ともいい、不合理な思考や行為を、自分の意思に反して繰り返しおこなってしまう状態を指します。
同じ考えを繰り返してしまう「強迫観念」と特定の行為や儀式を繰り返しおこなう「強迫行為」の2つが代表的な症状です。
強迫観念とは、本人の考えとは無関係に頭に浮かんでくる不安や不快感をもたらす観念を指します。
その内容は事実ではなく、もちろん現実になることもないのですが、強く現れ苦痛を感じます。
強迫行為とは、強迫観念を打ち消すためにおこなう行動で、不合理なものが多いのですが、この行動を止めると不安に思うため止められない行動をいいます。
強迫性障害の3分の1は強迫観念に、3分の2は強迫行為に苦しんでいるといわれています。
PTSD(外傷後ストレス障害)とは、何らかの外傷体験により生じる不安障害です。
その人にとって心理的に大きな打撃となり、その後長くその影響が残ってしまう状態を指します。
いじめや虐待、レイプ、地震や嵐といった自然災害、事件や事故に巻き込まれるといった重大な災難、また日本では稀ですが、戦争・戦闘に巻き込まれる、人質となるといった極端な状況が原因となり発生します。
外傷体験はトラウマと呼ばれますが、事件や事故などによる急性トラウマと、児童虐待などによる慢性トラウマが存在します。
主な症状として自身の意思とは反して、頭の中に突然外傷体験が浮かび上がる追体験(フラッシュバック)などがあげられます。
分離不安障害は、愛着がある人や場所から離れた際に、過剰な水準の不安を感じることをいいます。
生後6か月から3歳までの乳児や児童には一般的にみられる症状であり、これは正常な発達上の不安であり、障害とはみなされません。
障害とみなされるのは、一般的な発育過程で発生する分離不安よりも著しく過度な不安や苦痛が生じており、一定年齢を過ぎても持続している状態を指します。
不安障害の中でも発症年齢が早いのが特徴的であり、児童、青年の5~25%が罹患しているといわれています。一方成人の罹患率はおよそ7%といわれており、児童、青年期で発症した分離不安障害を理療せずに放置すると、その1/3は成人になっても症状が持続してしまうことが報告されています。
急性ストレス障害はASD(Acute Stress Disorder)とも呼ばれています。
親しい人の生死や、その人の尊厳に関わるような心的外傷(トラウマ)を経験した後、その経験をはっきり思い出したり、悪夢として見たりすることで、経験に関する事項を避けるようになったり、過覚醒状態となったりする現象を指します。
数日から4週間以内に自然治癒するのが一般的であり、一過性の障害を指します。
より長期間に渡り持続する障害は外傷後ストレス障害(PTSD)と呼ばれます。
治療としては短期間(4週間以内)の心理療法が用いられ、薬物治療はおこなわれないのが一般的です。
予後は良好ですが、PTSDに移行する可能性もあるので、慎重な観察が必要です。
全般性不安障害とは、特に不安となる対象がないものの、過度で制御できない持続的な不安があり、日常生活に支障をきたす不安障害の1つです。
不安を感じる状態が6か月以上継続しており、不安がない日よりある日のほうが多く、職業的、社会的、その他の場面において支障が出ている症状が当てはまります。
主な症状には そわそわと落ち着かない、 易疲労感、 倦怠感、 めまい、 ふらつき、 動悸、 息切れ、 刺激に対する過敏反応、 不眠などの睡眠障害、 頭痛や肩こりなどの筋肉の緊張、 などがあげられます。
欧州では人口の2%、イギリスでは5.7%ほどが生涯において全般性不安障害に罹患するといわれています。
社会不安障害とは、自分が他人から見て、愚かに見えていないか、場に合っているかなど他人に辱められることに不安を感じ、社会的交流を避けるようになったり、我慢して交流することに相当の苦痛を感じたり、日常生活に重大な支障が出たりする状態を指します。
内気や人見知りをする人が、知り合いのいない場所で感じる不安は正常なものですが、対して社会不安障害を有する方は、そのような状況下においてほぼ毎回、赤面や発汗、動悸や下痢、会話困難といった症状が発現するのが特徴です。
そのため、なかなか場慣れできず、うまくコミュニケーションを取れずに集団の中で孤立してしまう傾向があります。
一般身体疾患による不安障害とは、ある病気に罹患しており、その病気により生理学的に引き起こされた不安症状を指します。
不安症状を呈する一般身体疾患には、 甲状腺機能亢進症、 甲状腺機能低下症、 副腎皮質機能亢進症、 低血糖症、 糖尿病、 褐色細胞腫などの内分泌疾患、 肺塞栓症、 不整脈、 うっ血性心不全などの心血管疾患、 喘息、 過呼吸、 慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患、 ポルフィリン症やビタミンB12欠乏症といった代謝障害、 認知症、 脳炎、 けいれん性疾患、 新生物、 前庭機能障害などの神経疾患、 があげられます。
その他、各種がん疾患も不安障害を引き起こすことが知られています。
物質誘発性不安障害とは、アルコールやカフェインなどの物質や医薬品により誘発される不安症状のことです。
物質の使用後もしくは中止後に発現し、物質の成分が体内から抜けるにつれて症状がなくなるのが一般的です。
不安障害を誘発する物質には アルコール、 大麻、 カフェイン、 コカイン、 重金属、 神経ガス、 殺虫剤、 二酸化炭素、 一酸化炭素、 ガソリン、 などがあげられます。
また不安障害を誘発する医薬品には 幻覚剤、 催眠剤、 抗不安薬、 精神刺激薬、 インスリン、 甲状腺治療薬、 抗パーキンソン病薬、 コルチコステロイド、 抗ヒスタミン薬、 抗てんかん薬、 抗精神病薬、 抗うつ剤、 血圧降下薬、 心血管治療薬、 血糖降下薬、 などがあげられます。
その他、特定不能の不安障害としては、高所恐怖症や閉所恐怖症があげられます。
高所恐怖症とは、高い場所に来るとたとえ安全が確保されていようとも下に落ちてしまうのではという異常な恐怖・不安を感じる状態であり、身体が竦み動けない、ひどい場合には、パニックに陥り嘔吐するという症状が見られる場合もあります。
人はある程度の高さ以上には不安がつきまとうものですので、たとえ不安を感じても、何らかの身体的症状が出ない場合は問題ありません。
閉所恐怖症とは閉ざされた狭い空間の中にいることに、甚大な不安を感じる症状を指します。
エレベーターの中などで症状が出る方もおり、日常生活に支障が出る人も多く存在します。
不安障害の原因は十分には解明されていません。
身体的要因、精神的要因、社会的要因が複雑に絡み合って発症しているものと考えられています。
かつて不安障害の要因は、心理的要因が主な原因で発症していると考えられてきました。
しかし近年、脳研究が進歩するに従い、今日では、心理的要因のみならず、脳内の神経伝達物質の異常が関与しているという脳機能異常も一要因として考えられるという説が有力になってきています。
その他社会的要因とは、住んでいる場所や地域の文化や物の考え方が、不安障害の発症に影響を与えているという考え方であり、不安障害の一要因と考えられています。
不安障害には、脳内の神経伝達物質の異常による脳機能異常という身体的要因が関与していると考えられています。
不安障害の特徴的な症状の1つであるパニック障害は、大脳辺縁系にある扁桃体を中心とする恐怖神経回路の活動が亢進しているという有力な説があります。
大脳辺縁系は記憶や情動、本能などの関与する脳内の部位であり、扁桃体は、怒りや恐怖、快・不快といった感情の中枢として働いています。
体外と体内どちらからでも刺激を受けると、扁桃体での不安や恐怖が引き起こされ、その興奮信号が視床下部などの周辺の神経部位へ伝えられることで、動悸や息切れ、心拍数増加、呼吸困難、身体の竦みなどといったパニック障害の症状を引き起こすと考えられています。
また恐怖神経回路は主にセロトニン神経によって管理されており、脳内神経伝達物質であるセロトニンの機能を促進する選択セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)がパニック障害に有効であるため、この仮説が指示されています。
その他にも神経伝達物質であるGABAの濃度低下により、中枢神経系の活性が減少し、不安を引き起こしているという説もあり、セロトニン受容体はGABAを通じて中枢神経を抑制しているため、この説も有効とされています。
不安障害の発症には心理的要因が関与しているといわれており、恐らくこれは間違いないことと思われます。
パニック障害では特別な要因はなく、突然パニック発作に襲われるのが典型的な症状だとされていますが、過去に何らかのきっかけがあったり、小児期に親との離別体験があったり、発症前の1年間は強いストレスにさらされていたりと、何かしらの心理的要因が背景にあるケースが多いという研究報告もあります。
心理的要因とはその人の性格が大きく関与します。
不安障害を発症する人の基本的な性格は、
という4つの特徴を有するとされています。
つまり性格上弱い面と、強い面の両方を併せ持っており、強い自分が弱い自分を許容できない、またその逆もしかりで、自分の感情をうまくコントロールできないことが、不安障害の一要因となっていると考えられています。
住んでいる国や地域の文化による社会的要因も不安障害の一要因であるといわれています。
たとえば日本では従来、対人恐怖、つまり他人とのコミュニケーションや、他人からの自分の評価が気になり、不安でたまらなく、コミュニケーションはおろか、外出もできなくなったり引きこもりになったりする不安障害の方が多い傾向があります。
これは他人と同様であることを求め、人と違うことはあまり許容されず、また恥を重視する日本独特の文化が背景になるものと思われます。
その他、不安障害は男性より女性の方が発症率が高いのですが、それは日本においては、男女の理想像というのが明確にされており、特に妻、母親としての女性像というのが、世界からみても非常にレベルが高く、自分と周囲からの期待の目とのギャップに悩み発症するケースもある一定程度あるといわれています。
特に働く女性の急増にともない、仕事における責任と家庭における責任、妻としての責任、母親としての責任など、あまりに多くの責任および周囲からの期待に過度のストレスを感じる女性が増加しており、今後不安障害の発症は増えていくのではないかと予想されています。
不安障害の治療方法は、薬物療法と精神療法に2つに分類できます。
薬物療法はその名の通り、医薬品を用いて不安障害を治療していく方法です。
代表的な薬剤としては抗不安薬のベンゾジアゼピン誘導体(BZD)、および抗うつ剤の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が用いられます。
精神療法とは患者が自分自身を見つめなおし、自分の感情の動きや、不安障害の要因と考えられるものなどを認知することで回復を促す認知行動療法といわれる手法が取り入れられます。
認知行動療法は薬物療法と同等程度の効果が期待できることがわかっており、注目されています。
不安障害の治療法の1つに薬物治療があげられます。
代表的な医薬品には、抗不安薬のBZD(ベンゾジアゼピン誘導体)や、抗うつ剤のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などがあげられます。
BZDは不安や不眠、および不安にともなう自律神経症状など、不安に関連する症状全般に有効です。通常用量では副作用が眠気、ふらつきくらいで非常に少なく、安全性に優れ、即効性もある薬剤となります。
長期間の服用では耐性ができ、依存性が生じやすくなり、これまでの服用量では効かなくなってくるため用量を増やしがちになります。
薬剤の用量を急に減量したり、中止したりすると離脱症状が出ることがわかっているため、長期間投与には注意が必要です。
SSRIはパニック発作に非常に有効です。
予期不安や広場恐怖といったその他のパニック障害の症状にも有効であり、副作用が少なく高い安全性を誇り、また長期間服用しても依存性はありません。
しかしながら、即効性がなく、投与初期に眠気や吐き気といった副作用が発現しやすいので、一時的に不安症状が増強する可能性があります。
両剤の長所および短所を踏まえた併用療法が推奨されています。
不安障害の治療の1つに精神療法が用いられています。
英国国立医療技術評価機構(NICE)は、不安障害は根拠に基づく精神療法が非常に有効であり、まず薬物療法よりも前に精神療法を開始することとしています。
NICEが推奨する精神療法には、弱い精神的介入から強い精神的介入まで根拠に基づき取り入れられています。
他にも認知行動療法(CBT)と呼ばれる方法に現在注目が集まっています。
思考と感情および行動は密接に関連しており、観察可能な意識的な思考に焦点を当てる療法です。
つまり、患者が自分の行動、感情、思考を振り返り、関連づけて考えることにより、不安障害の発症に関与した要因を探りだし、改善を図っていくという療法になります。
認知行動療法はさまざまな療法の組み合わせであり、不安障害には曝露療法や認知療法がよく用いられます。
曝露療法とは広場恐怖にもっとも効果のある療法で、電車に乗れない場合は、まず家族同伴で、できたら家族とは別車両で、次は一人で一駅分など徐々に段階を上げていく療法です。
認知療法とは過度に不安を恐れてしまう自分の歪んだ考えを認知し、「いつものこと。不安は時間が経てば治まる」と自分にいい聞かせ認知の修正を図る方法です。
精神療法の効果は、薬物療法と同等程度であることが証明されています。
不安障害の治療に用いられる薬は、不安障害に特徴的な過剰な不安や恐怖を和らげる薬が中心となります。
一般的にはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が一次選択薬となります。
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)やベンゾジアゼピン系の抗不安薬も治療に用いられます。
ただベンゾジアゼピン系の薬剤は、長期間服用にて耐性ができ依存性や離脱症状が問題となりますので、短期間の服用が推奨されています。
場合によって、漢方薬が有効なケースもあります。
また、一部の人はカフェインを中止することで、不安症状を大きく改善できることが報告されています。
SSRIとは選択的セロトニン再取り込み阻害薬のことであり、抗うつ剤の1つです。
SSRIは脳内の神経伝達物質であるセロトニンの再取り込みを阻害することで、脳内のセロトニンの量を増やす働きを有します。
抑うつ状態にある方は、脳内のセロトニンの量が少なくなっていることが知られています。
セロトニンは不安を抑えて、平常心を保つことができるように働く神経伝達物質であり、不足することで不安やイライラ、睡眠障害などが引き起こされます。
そのためSSRIを服用すると、不安な状態の改善が期待できます。
またセロトニンは、同じく脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンの作用を抑制する働きを有しています。ノルアドレナリンは不安や恐怖を感じた際に、筋肉に血液を送り込み血圧を上昇させたり、心拍数を上げたりする作用を有します。
パニック障害に罹患している方は、何かしらの不安や恐怖を感じるとノルアドレナリンが関与する異常な興奮によりパニック発作が起こることが知られており、セロトニンによりその異常興奮を抑えられ、SSRIはパニック障害に非常に効果を有します。
ただ即効性がなく、効果発現には2~4週間必要であり、飲み始め1~2週間は、眠気や吐き気といった軽度な副作用が生じる恐れがあります。
飲み合わせにも注意が必要な薬剤です。
抗不安薬の中でもっとも使用されているのはベンゾジアゼピン系の抗不安薬です。
抗不安や催眠、鎮静などに関与する脳内のベンゾジアゼピン受容体に作用し刺激します。
ベンゾジアゼピン受容体はGABA受容体と共に複合体を形成しており、ベンゾジアゼピン受容体が刺激されるとこの複合体が刺激されます。
すると、脳内の抑制系の神経伝達物質であるGABAの作用を亢進し、抗不安作用や催眠・鎮静作用を発揮し、不安障害の諸症状の改善が期待できる薬剤です。
即効性に優れる薬剤であり、通常用量では副作用が眠気やふらつき程度と比較的軽微であり、安全性が高いことからも、使用頻度の高い薬剤となります。
しかしながら長期間服用を継続すると耐性ができ、依存性が生じやすいという懸念があります。
薬剤の用量を急に減量したり中止したりすると、焦燥や不眠、知覚異常といった離脱症状が強く発現する可能性があります。
ベンゾジアゼピン系の有効性については、専門家の中でも意見がわかれており、長期的には有効とはいい難いという意見から、治療抵抗性の症例に対する選択薬となりうるという意見、また長期的にもSSRIと同様の効果があるという意見までさまざまですが、一般的には短期間の使用に留めるのが推奨されています。
不安障害の治療に漢方薬が用いられるケースもあります。
・甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)
心身の興奮状態を鎮め、不安定な状態を改善させることで不安やイライラの改善に効果を示し、パニック発作を起こしやすい不安障害の患者の第一選択薬です。
・柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)
鎮静安定作用を持つ和解剤で、不安や不眠、パニック状態、疲労感、抑うつ状態に効果を示します。
・抑肝散(ヨクカンサン)
虚弱な体質の患者で、神経が昂ることで起こる諸症状に有効であり、イライラしやすい、興奮しやすい、怒りっぽい方に使われます。
・加味逍遙散(カミショウヨウサン)
女性の月経異常や更年期障害などのイライラや不安に用いられる代表的な漢方薬であり、イライラ感や精神不安などの諸症状に効果があるといわれています。
・半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)
のどのつかえ感を改善する薬剤であり、気分がふさぐことで、のどに異物がへばりついたような違和感や胸部の圧迫感を訴える不安障害の方によく処方されています。
・加味帰脾湯(カミキヒトウ)
虚弱体質な方に用いられ、心身の疲労や、不安症状、不眠症状の改善に効果が期待されます。柴胡桂枝乾姜湯は神経が過敏になっている方の不安や不眠といった症状に用いられます。
・桂枝加竜骨牡蠣湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)
神経が過敏状態になっていることに起因する、不安やイライラ、不眠に効果を示します。
不安障害の治療にはβ遮断薬の投与やカフェインの除去がおこなわれることもあります。
β遮断薬は、アドレナリンの働きを抑制する薬剤で、心臓の神経に直接作用します。
アドレナリンは血圧や心拍数を高め、交感神経に作用して、興奮状態や緊張状態を高める神経伝達物質です。
β遮断薬は心臓のβ受容体に直接作用し、心機能を抑制して心臓の作業量を抑える作用を有しています。
激しい動機をともなうパニック発作に高い効果が期待されます。
その他、不安障害にはカフェインの関与が知られています。
過剰なカフェインの摂取は不安障害の原因となったり、不安障害を悪化させたりします。
不安障害の患者はカフェインに過剰に反応することが複数の研究で報告されており、またカフェインには不安を惹起する作用があり、カフェイン摂取量とパニック障害との間には相関関係があることも示されています。
そのため一部の不安障害の患者は、カフェインを除去することにより不安症状を大きく緩和されます。
ただし、カフェインの離脱時には、一時的に不安症状が強くなりますので、慎重な観察が必要です。
不安障害の患者は日本国内で増加傾向であり、60万人ほどいるといわれています。
これは医療機関を受診した患者数ですので、実際はもっと多いといわれています。
一般住民を対象とした疫学調査では、2002年度~2006年度に実施した厚労省の調査によると、不安障害の生涯有病率で9.2%であり、決して稀な病気ではありません。
不安障害の発症メカニズムは十分には解明されておらず、基本的には対象療法が中心となります。
しかしながら、効果的な治療薬が豊富に存在し、近年は精神療法として認知行動療法が大きな発展を遂げており、日常生活に支障ない程度まで改善することが可能です。
病気を理解し、自身で不安をマネジメントできるように、1つ1つステップアップしていくことが重要です。
行政機関サイト
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