うつ病とは、気分障害の一種であり、憂うつな気分が続いたり、さまざまな活動への意欲が低下したりといった心理的症状の他、不眠症や食欲低下といった身体的症状などが発現する精神障害です。
強いストレスにさらされるなどの何らかのきっかけによって発症し、脳内のエネルギーが不足することにより、脳全体にトラブルが生じてしまうことで、さまざまな症状が現れることが特徴となります。
原因は1つではなく、複数の要因に重なって発症するケースが多く、治療が難しい病気です。
厚生労働省の調査では、20歳以上の約7.5%が一度はうつ病を患ったことがあるとされています。さらに、日本人の有病率は6.5%と、日本人のうつ病リスクは高いことが実情です。
うつ病は誰でもなる可能性がある病気です。
うつ病の特徴的症状としては、抑うつ気分と興味または喜びの喪失があげられ、「心の風邪」とも呼ばれています。
気分が塞いだり、沈み込んだり、滅入ったりといった状態が続いていたり、これまで興味を持っていた事柄に興味が持てなくなったり、何をしても楽しく感じられないなど、憂うつな気分が続く場合は、うつ病を疑ってください。
うつ病の治療にはまず休養、特に心の休息が大切となります。
うつ病はストレスが引き金になることが多く、心を休めること、そして本人が今はしっかりと休むべきだと認識できるかが非常に重要です。
また並行して薬などにて不眠症やイライラとした症状を軽減していきながら、ゆっくりと回復を目指していきます。
うつ病の治療で一番大事なことは休養を確保することです。
休養には十分な睡眠、ストレスの少ない環境でのリラクゼーション、日常生活のペースを落とすことなどが含まれます。
もし仕事でストレスを感じており、そのストレスがうつ病発症の一要因であるならば、休職が1つの方法となります。
ただし仕事を休むこと自体を苦痛に思っていては、真の休養とはなりません。
「今は、自分は休むときだ」と納得し、心理的にも身体的にも休養を取ることが大切です。
また会社に申請する休職期間は、短すぎないようにしてください。
罪悪感からか求職期間を短くし、再発するケースが後を絶ちません。
休養し、ゆっくりと確実に治してから復帰するというのが基本です。
仕事を持たれていない方の場合や、家庭内に原因がある場合は、家族の協力を仰ぐか、一定期間の入院を考慮に入れるといいでしょう。
うつ病の治療法として、精神療法(心理療法)がほとんどの症例に用いられます。
精神福祉の専門家(精神科医、作業療法士、理学療法士、カウンセラー、ソーシャルワーカーなど)がうつ病患者やその家族に対して実施します。
主に認知行動療法(CBT)が広くおこなわれております。
CBTとは、自身の思考・感情・行動に影響を与えているものを認知することで、感情をコントロールできるようにする治療法です。
抑うつの背後にある認知のゆがみを自覚させ、考え方のバランスを取ることで、ストレスにうまく対応できる精神を作り上げていくことを目指しています。
その他、読書療法という良い著書を読みことにより考え方を学ぶ療法や、対人関係療法という良好な人間関係を形成するために介入したり、スキル習得をサポートしたりする療法も含まれます。
うつ病の治療法としての薬物療法は、軽度から中等度のうつ病患者に対しては、初期治療の効果が期待できない場合に、中等度から重度のうつ病患者に対しては、精神療法の併用が推奨されています。
抗うつ薬による治療が一般的です。
具体的には、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、三環系抗うつ薬などがあります.これらの薬は、脳内の化学物質のバランスを改善し、気分やエネルギーレベルを向上させることが目的です。
治療効果は比較的ゆっくり現れる傾向があり、1~3週間の継続投与が基本となります。
離脱症状があることが知られており、薬剤の服用量、服薬期間、抗うつ薬の併用については慎重に判断する必要があります。
基本的には投与開始4週後に一度その薬の有効性を判断し、効いている場合はさらに数週間投与を継続し、効いていない場合は薬剤の切り替えを検討します。
参考⽂献:厚生労働省「こころの耳:1 うつ病とは」
うつ病を発症するキッカケとしては、多くの症例にてライフイベント・ストレッサーと呼ばれるキッカケがあることが知られています。
健康や経済、職業、役割、対人関係の問題などがそれにあたり、大きな環境の変化をもたらします。
主に喪失体験が深く関与しています。
などがあげられます。
このようなライフイベント・ストレッサーが発生した際に、うまく感情をコントロールできなかったり、身近に相談できる人がいなかったりすると、うつ病の発症に繋がってしまいます。
うつ病を発症しやすい人は、過度に几帳面だったり、周囲の人に気を使いすぎてしまったり、組織内での秩序や役割に依存しすぎている人などが多いようです。
そばに人がいなく対人関係が薄いと、1人でその感情を内に溜めてしまいますので、よりうつ病の発症リスクが高まる傾向があります。
うつ病の主な症状には、ココロの症状とカラダの症状の2つがあります。
ココロの症状は、感情・意欲・思考の3つの面であらわれる症状であり、代表的なものに 抑うつ気分、 興味や喜びの喪失、 気力の低下、 強い罪責感、 思考力や集中力の低下、 自殺念慮、 などがあげられます。
カラダの症状としては、 睡眠障害(不眠または睡眠過多)、 易疲労性、 食欲減退または増加、 味覚障害、 腰痛や腹痛、首や肩のこり、 などがあげられます。
うつ病は、発症日を具体的に特定できません。
いつの間にか発症しており、以前と状態が違うことに気づくものの、うつ病であると自覚できない場合が多くあります。
放置しておくと、症状がさらに悪化する危険性がありますので、なるべく周囲の人が普段と違う状態を察知してあげることが大切です。
典型的なものは、 感情・思考の2つの面に現れる傾向があります。
特に頻繁に認められる症状は、抑うつ気分と呼ばれる気持ちが落ち込んだり、沈んだり、塞ぎ込んでしまったり、悲しく滅入ってしまう状態の継続です。
興味や喜びの喪失といった、普段おこなっていた趣味や仕事に興味を持てなくなったり、何をしても楽しみを感じられなくなったりするという状態もよく見られます。
などがあげられますので、その小さなサインを見逃さないようにしてください。
ひどい場合は自殺念慮という死について何度も考えたり、自殺を何度も考え、計画したり企てたりするようになるため、要注意です。
カラダの症状として代表的なものには、睡眠障害や食欲減退もしくは増加、疲労感や倦怠感などがあげられます。不眠症とうつ病には強い相関関係があることが知られており、眠れないことを訴えられる方もいれば、過眠状態を訴えられる方もいます。
といった症状があげられます。
などがあげられます。また稀に味覚障害を訴えられる方もいます。
その他、疲労感や倦怠感が激しく、物事をおこなうことが億劫となったり、物事を完了するまでにかかる時間が倍増したりします。
首や肩の凝り、腰痛や腹痛、性欲減退を訴える方もいます。
参考⽂献:J-STAGE「反復性の大うつ病エピソード経験者が示す認知的反応性の特異性」(pdf)」
うつ病の原因は多岐に渡ります。
発症するきっかけとなる1つの原因があるかもしれませんが、それ以前に積み重なった複数の要因が複雑に関連し合って発症するケースがほとんどといわれています。
要因の中には、大切な人との死別や離別、大切なものの喪失、人間関係のトラブルといった環境要因があげられ、もっともうつ病の発症のきっかけとなります。
性格傾向の要因としては、几帳面な性格や、完璧主義、凝り性の人が発症しやすい傾向があります。
遺伝的要因も考えられ、親や兄弟にうつ病を発症している方は、うつ病の発症率が高い傾向があります。
また糖尿病などの慢性疾患による長期的なストレスがうつ病の発症の引き金となるケースも報告されています。
などがあげられます。
このようなライフイベントの大きな変化によるストレスにより、うつ病を発症するケースがあります。
ただストレスへの感度は個人差があり、同じ環境下でもストレスを感じる人もいれば感じない人もいます。そのため何が要因かは、非常に個人差が大きく、特定が難しい場合があります。
性格傾向もうつ病発症要因の1つです。
うつ病になりやすい性格を「うつ病親和性性格」もしくは「メランコリー親和型性格」といいます。 生真面目、 几帳面、 義務感が強い、 凝り性、 完璧主義、 責任感が強い といった性格の持ち主なことが多いようです。
社会的に評価される性格である一方、他人の評価を気にするあまり、何か問題があると悲観的になってしまう傾向があります。
また性格上、常に頑張ることで、必要な脳エネルギーが高く、うつ病では脳のエネルギー欠乏が起こりますので、エネルギー枯渇によりうつ病が発症するリスクが高まります。
弱音を吐けず、1人で問題を抱え込んでしまう傾向があるものも、発症リスクに関連しているものと考えられています。
うつ病の遺伝的要因については、多くの研究が行われており、遺伝がうつ病のリスクに一定の影響を与えることが確認されています。
ただし、遺伝だけが全てではなく、環境的要因との相互作用も大きく影響します。
例えば、うつ病の家族歴がある人は、うつ病を発症するリスクが上昇します。親や兄弟にうつ病の診断がある人は、一般的な人口よりもリスクが2〜3倍高いことが特徴です。
双生児研究などを通じて、うつ病の遺伝率(遺伝によって説明されるリスクの割合)は約30%から40%程度であると推定されています。
そのため、うつ病の発症は遺伝的要因もあるものの、環境要因が大きいといえるでしょう。
慢性的な身体疾患も、うつ病の発症リスクの1つになります。
一例ですが、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病により、長期間に渡り食事制限などをおこなっている場合は、ストレスが積み重なり、うつ病を発症する可能性があります。
また癌などの生命に関わる疾患を発症した場合は、発症自体もストレスとなり、うつ病発症リスクが高まりますし、長期にわかる抗がん治療によるストレスによっても、うつ病発症リスクが高まる可能性があります。
その他、高血圧や骨粗鬆症、心疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息、関節炎などの慢性的な身体疾患も、うつ病発症リスクの増加に関与していることが報告されています。
参考⽂献:ウィキペディア「うつ病」
うつ病の分類にはさまざまな分類の仕方があり、症状の現れ方による分類、症状の重症度による分類、症状の発症回数による分類、症状の病型による分類などがあります。
これはうつ病が実に多岐にわたる要因により発生することに起因しており、原因が1つに特定できないため、分類方法も多岐にわたってしまっています。
従来は上記であげたようにさまざまな経験則によってうつ病を分類していましたが、現代ではアメリカ精神医学会(APA)が発表した「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」により、操作的診断基準によってうつ病を分類することが一般的となっています。
うつ病の症状による分類には、うつ状態のみが発現するうつ病を「単極性うつ病」、うつ状態と躁状態の両方が発現するものを「双極性うつ病」として分類します。
双極性うつ病は「双極性障害」または「躁うつ病」とも呼ばれます。
軽度の躁状態とうつ状態を繰り返す双極II型障害は単極性うつ病と誤診するケースが多く見受けられます。
患者自身も、軽度の躁状態にて、少ない睡眠時間で大丈夫であり、現代の過酷な労働環境に対応できてよかったという程度にしか認識しておらず、躁状態とは考えておらず、医師に申告しないケースが増えているからです。
単極性と双極性では治療法が根本的に異なるため、誤診が生じないよう、WHOのガイドラインでは、必ず躁病のエピソードがないかどうか患者に確かめ、単極性か双極性かを明確に鑑別することが重要であるとしています。
また長期経過の中で、当初はうつ状態のみだったのに、躁状態も発現したり、もしくは躁状態に転じたりする可能性も考えられますので、慎重な観察が求められます。
ちなみに単極性うつ病は、病的状態や障害により失われた年数を指し、疾病負荷を総合的に示す障害調整生命年の第3位を占めており(2004年現在)、2030年には第1位まで成長するといわれています。
うつ病による分類には、重症度により分類する方法もあります。
軽症、中等症、重症の3つに分類されます。
軽症とは仕事を含む日常生活で、他の人とのコミュニケーションに生じる障害は軽く、周囲の人が気づくことはあまりない程度の症状を指します。
うつ病の診断基準を満たしており、うつ病と診断はされているものの、社会的または職業的な機能の低下は軽い状態を指します。
一方、重症とは、仕事を含む日常生活および他の人とのコミュニケーションにて明らかに問題が生じている状態を指します。
うつ病の診断基準を必要数よりも多く満たしているケースがほとんどであり、そのうちのいくつかの症状は非常に重症であり、社会的もしくは職業的機能が著しく低下している状態です。
中等症は、軽症と重症の中間です。
日本では軽症のうつ病とは、うつ状態が2週間未満しか継続しない短期うつ病と、うつ状態が2週間以上2年未満継続する小うつ病を合わせた状態を指しているケースが多く、場合によっては2年以上うつ状態が続く気分変調症の一部も含んでいるケースが考えられます。
うつ病による分類には、発症回数による分類方法もあります。
単一性か反復性か、つまり初発なのか再発なのかによって分類する方法です。
うつ病を繰り返す反復性うつ病は、遺伝研究などにより、躁うつ病と根本的に同一の障害であることがわかっていますが、単一性うつ病は躁うつ病とは全く異なる病態です。
うつ病は非常に再発率の高い病気であり、日本での再発率はおよそ60%といわれており、深刻な社会問題に発展しています。
反復性うつ病はうつ病を2回以上発症した際に診断され、その70~90%は再発を繰り返すといわれています。反復性うつ病では、再発した要因を探り、その原因の排除を第一として治療します。
しかしながら、多くの要因が複雑に絡み合って再発しているケースが多く、現在は再発にいたるまでの心理的メカニズムを理解し、客観的に観察と介入をおこなう、認知的反応性に注目し治療します。
また反復性うつ病患者は自殺率も高く、2010年の厚生労働省の報告では、うつ病と自殺による社会的損失はおよそ2.7兆円にも及ぶとされており、影響力の大きさがはかり知れません。
うつ病による分類には、病型による分類方法もあります。 メランコリー型、 非定型、 季節型、 産後、
この4つに分類されます。
メランコリー型は典型的なうつ病であり、過剰な仕事や役割、責務に反応している内に脳内のエネルギーが欠乏してしまうことが原因で発症するうつ病です。
特徴的な症状としては、何をするにも気力がわかない気力低下状態、気分が塞ぎこみがちになる抑うつ気分、食欲不振や体重減少、予定の起床時間よりも2時間以上前に目が覚める早期覚醒の症状をともなう不眠障害などがあげられます。
非定型は、特徴的な症状としては、良いことに対しては気分が良くなる傾向、食欲過剰、過食気味による体重増加の頻発、過眠タイプの睡眠障害、ひどい倦怠感、他人からの批判に対する過敏反応などがあげられます。
季節型は反復性うつ病の1種であり、特定の季節にのみうつ病を発症し、季節が移り替わるにつれ、回復します。
どの季節でも起こりますが、冬季に発症するケースが多くなります。
産後に分類されるうつ病は、産後4週以内に発症するものを指します。
ホルモンの急激な変化が関与しているといわれています。
新型うつ病(現代性うつ病)と呼ばれるうつ病の分類もあります。
新型うつ病とは、従来の典型的なうつ病とは異なる特徴を有するうつ病の総称であり、従来のメランコリー親和型の性格標識を持たないうつ病の患者集団を指すことが多いですが、専門家の間でも一致した見解は得られていません。
「新型うつ病」は専門用語ではないため、日本うつ病学会は「現代型うつ病」もしくは「ディスチミア親和性」といった名称を用いるよう推奨しています。
医学的な根拠があるわけではなく、どちらかというと日本のメディアにより一人歩きしてしまっている分類です。
日本はこれまでうつ病といえば、内因性うつ病(メランコリー親和型うつ病)を指しました。
内因性うつ病を発症するうつ病患者の典型的な性格といえば、几帳面であり責任感が強く、周囲の人に気を使いすぎるというメランコリー親和性の性格を有しているケースが多く見受けられました。
しかし、新型うつ病は、役割意識が弱く、他責的・他罰的な性格が多く、メランコリー親和性の性格とはかけ離れていることが特徴です。
薬物治療が効かないケースが多く、症状が長期に渡り持続してしまう可能性が高いといわれています。
また、女性は妊娠や出産を機にうつ病になる「妊娠うつ」「産後うつ」も存在しています。
妊娠するとホルモンバランスが乱れ、体調の変化や精神的不安などが原因となり発症します。
ただし、産後うつは比較的軽症で、一時的な気持ちも落ち込みであるケースが大半です。
うつ病の9つの徴候は、アメリカ精神医学会(APA)による気分障害の分類である「精神障害の診断と統計マニュアル 第4版(DSM-IV)」にて定義されています。
うつ病とは「うつ病エピソード」という症状が認められる気分障害の総称であり、うつ病エピソードの内、症状の程度が重い「大うつ病エピソード」の診断基準として9つのうつ病の徴候が示されています。
9つの症状の内、抑うつ気分または興味や喜びの喪失は必須症状であり、残りの7症状に関しては、該当する症状が5症状以上ある場合は大うつ病エピソード、2個以上4個以下の場合は小うつ病エピソードと呼ばれています。
気持ちが塞ぎ込んだり、沈み込んだりする状態が続き、悲しい、むなしい、憂うつである、暗い、滅入る、落ち込むといった感情が継続する状態をいいます。
患者は「一番ストレスとなっているのはどんなことですか?」などの質問を医師から受けます。
医師は患者の感情を引き出して、現在の状況の把握に努めます。
また医師は質問をおこなった際などに、
などを観察することで、患者が抑うつ気分を有しているかどうかを判断します。
医師との診察時のみ元気にふるまっている例も考えられますので、看護師などが待合室での様子を観察したりします。
うつ病の症状の1つに「興味や喜びの喪失」があり、この症状は別名アンヘドニアとも呼ばれています。
快感情がなくなり、これまで楽しいと感じていたり、満足感を得られたりしていたはずの行為から、快感を見いだせなくなっている状態を指します。
仕事や趣味、対人交流など普段おこなっていたことに興味を失ってしまい、何をやっても楽しめないという状態に陥ってしまっています。
この症状を有しているかの判定ポイントは、これまでは楽しく取り組めていたのに、現在は楽しく取り組めないという従来からの変化があるかどうかに注目します。
うつ病の症状の1つに「食欲減退または増加」があります。
一般的には食欲減退が見られることが多く、食欲増加がみられるのは稀です。
食欲減退は、ほとんど毎日食欲がわかず、ダイエットしようとしていないのに、体重が徐々に落ちてしまうという現象がみられるのが一般的です。
数値的には、体重が1か月で5%以上減少することが1つの目安となります。
しかしながら、この数字は絶対的な基準ではありません。
稀に見られる食欲増加は、いつもより食欲が増加している状態がほぼ毎日あり、継続します。そして食欲が非常に邁進することでで食欲を抑えられず、体重の増加に繋がります。
うつ病の症状の1つに「睡眠障害」があげられます。
主として、睡眠途中に目が覚めた後眠れない、または何度も目が覚めてしまう中途覚醒、予定起床時間の2時間以上前に目が覚めてしまう早期覚醒が見られるケースが多く見受けられます。
その他、寝つきが悪い入眠障害、睡眠の時間は足りているのに、眠りが浅く日中が眠いという熟眠障害が見られます。
典型的なうつ病患者では、朝から午前中にかけて症状が強くでるケースが多いですが、夕方に症状が悪化する方もいらっしゃいます。
うつ病では、体内の1日のリズムが崩れた状態になっていると考えられます。
うつ病の症状の1つに「精神運動の制止または焦燥」があげられます。
精神運動の制止とは、本来努力して意欲を持って取り組むべき作業のみならず、日常のルーチンワークがおこないづらくなる状態を指します。
通勤や家事、掃除、人付き合いなどのちょっとした作業もおこなうことも辛く感じてしまい、話し方や動作が普段よりも遅くなったり、言葉が出なくなったりします。
これらは周囲の人が気づきやすい症状です。
焦燥は制止の逆で、じっとしていられず、座り続けることが困難になり動き回るようになります。切れやすい状態になることもあります。
いすれも周囲からみて症状が認められているかどうかが、この症状を有しているかどうかの判断ポイントとなります。
うつ病の症状の1つに「易疲労性・気力の低下」があげられます。
意欲面の低下と合わせて身体症状があるかどうかがポイントです。
いつもより疲れやすく、身体が重い、日常的なことをこなすのにも時間がかかる、気ばかりが焦ってしまうも気力がわかない、何をするにも億劫で仕方ないといった症状です。
うつ病患者では、疲労感や倦怠感が頻発する傾向があり、前面の症状が現れるため、自覚しやすい症状となります。
自律神経失調症と診断されるケースも多いですが、自律神経失調症と診断された患者の内、かなりの割合の方がうつ病を発症している可能性が高いと考えられています。
うつ病の症状の1つに「強い罪責感」があげられます。
自分は価値のない人間であり、悪いのは自分であると過剰に自分を責めてしまう症状を指します。
物事がうまく回らないのは全て自分のせいであると考えてしまい、ほぼほとんどのうつ病患者に見られる症状です。
悪化すると時に妄想的なレベルにまで発展することが知られており、一例としては、日本の不況の責任は自分にあると考えてしまったりします。
一方、他人を責めたり、責任転嫁したりする考え方はうつ病の症状ではありませんので、患者自身が「今、置かれている状況は、誰のせいだと感じているのか」を聴取することで、本症状の有無を判断します。
うつ病の症状の1つに「思考力低下・集中力低下」があげられます。
物事に集中できなくなり、判断に時間がかかる、物事を考えられない、考えるのに必要な時間が増える、テレビや新聞の内容が頭に入ってこないといった症状をいいます。
患者自身が強く自覚する症状でもあり、「頭がおかしくなった、働かなくなった」と本人が表現するケースです。
頭の中で考えがぐるぐる回り、解決できず考えが堂々巡りしている状態となり、これが長く持続してしまうと、焦燥感が起こり、自殺念慮に繋がる可能性が考えられます。
うつ病の症状の1つに「自殺念慮」があげられます。
自殺念慮とは、死について何度も考えたり、気持ちが沈みこんでしまい自殺について何度も考えたり、自殺を計画したり、自殺を企てたりする症状を指します。
患者に「自殺を考えることがありますか」と直接聞くことにより、この症状があるかどうかを確認します。
積極的な自殺念慮ではなくても、多くのうつ病患者は「死ぬことができたら楽だろうと思う」という程度の考えを有しており、自殺の話題を振っても自殺を誘発することはほぼなく、うつ病患者にとっては非常に焦点が合った話題となります。
リスク評価の観点からうつ病の診断時には必ず尋ねられる話題です。
うつ病はインフルエンザや風邪のように、発症日を具体的に特定できません。
いつの間にか発症し、ある時に「以前とは状態が違う」ことに気づくのですが、それがうつ病であるとは自覚できないケースが多いようです。
特に働き盛りの世代では、課せられている責任も重く、職場における過度なストレスによりうつ病を発症するケースが多くなります。
うつ病が原因で集中力を欠き、ミスを連発しているのにもかかわらず、もっと頑張らないと自分に更なるプレッシャーをかけ自らを追い詰めてしまうことも多々あります。
うつ病に気づかず、治療もせず放置していると、うつ病は悪化の一途をたどりますので、まずうつ病を疑うことが大切です。
うつ病になるとまず、元気がなくなり、ぼんやりする時間が増えます。
その状態が継続しなければ問題ありませんが、長期間持続すると、何か良いことが起こっても気分が晴れない状態が続いてしまいます。
またいつもなら楽しみであったことが楽しく感じられなくなります。
趣味が楽しく思えなくなり、疲労感ばかりが増し、趣味に興味を示さなくなってしまいます。これらの症状が2週間以上継続する場合には、うつ病を疑う必要があります。
しかしながらこれらの症状は生活習慣病の症状とも類似しているため、日常生活の中ではなかなか自覚しにくいという点があります。
そのため最近は食欲の減退や睡眠障害の有無など自覚しやすい症状にまず注目しようという考え方があります。
食べることはエネルギー補給、眠ることはエネルギー充電であり、脳内のエネルギー欠乏が知られているうつ病には非常に重要な要素です。
特に不眠症とうつ病は大きく関連しており、3年以内に不眠を有している方は、うつ病の発症リスクが4倍になるという研究報告もあります。
家族の人がちゃんと眠れているかどうか確認するのが、うつ病に気づく大切なポイントになります。
もし家族にこれらの症状が見られたら、うつ病を疑い一度病院を受診してください。
うつ病になると、職場ではミスの連発がまず目につきようになります。
しかもそのミスが普段するミスではなく、簡単で軽微なミスであり、周囲の人にとってはケアレスミスに思え、ひどく患者を叱責してしまうケースが考えられます。
本人としてもどうしてこんな簡単なミスをしてしまったのか分からず、自分を過剰に責めてしまいます。作業の能率が下がり、一つの作業を完了するのにかかる時間が以前と比べて長くなります。
頑張っているのに、仕事が終わらなくなり、この点からも自分自身を過剰に責めてしまいます。残業時間が増える傾向があり、余計に負荷がかかってしまいます。
上司としても以前はできていた作業量が回らなくなり、怠惰だと思い叱責してしまう状況が考えられます。
集中力の低下により、仕事に集中できなくなり、また考えをまとめるのが遅くなるもしくは、まとめること自体が困難となります。また物事を判断できなくなります。
その他、睡眠障害により日中の眠気を抑えられず、会議中の居眠りなどが見られるケースも考えられます。常にイライラした感情をとどめることが難しくなります。
これらの症状が見られる場合には、うつ病が考えられます。
周囲の人が気づいた場合には、本人に医療機関を受診するようすすめてください。
抗うつ剤は服用してもすぐに効果は現れず、服用し続けると少しずつ効果が出てくるという特徴があります。
抗うつ剤の効果の発現までには、服用をはじめてから2〜6週間ほどかかるため、長期的な服用が必要です。
また、うつ症状が軽症の場合には抗うつ薬の有効性が定かでないため、服用は推奨されていません。
一方で、うつ症状が日常生活に支障をきたしている中等症や重症の場合には、抗うつ薬の効果が認められています。
抗うつ剤は、うつ症状で低下した生活の質を再び向上させるための、重要な役割を果たしています。
ここでは、抗うつ剤の目的や治療効果、そして気になる副作用についても、一緒に確認していきましょう。
抗うつ剤の服用は脳内の神経伝達物質のバランスを整えて、辛いうつ症状を改善するのが目的です。
ところが「うつ病は心の病」「心の弱さ」と誤解されることも多く、精神的な症状で薬を服用することに対して抵抗を感じる人も少なくありません。
しかし、うつの直接的な原因は心の問題ではなく、脳内環境がバランスを崩すことです。
うつを発症すると、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の量が減少し、働きも低下させます。
抗うつ剤の服用により神経伝達物質を増加させ、脳内環境を元の状態に整えて治療します。
また、抗うつ薬の主な効果は次の通りです。
このように、抗うつ剤は脳内環境を正常に整えるための薬と知ることで、抗うつ薬の必要性を理解できるでしょう。
抗うつ剤は脳内の神経伝達系だけでなく、ほかの神経にも効果が作用するため副作用が発現すると考えられます。
そして、副作用は抗うつ剤の種類によってさまざまな症状を発現させます。
抗うつ剤の種類は「SSRI」「SNRI」「NaSSA」「三環系」に分類され、それぞれ発現しやすい副作用は下記の通りです。
抗うつ剤の種類 | SSRI | SNRI | NaSSA | 三環系抗うつ薬 |
---|---|---|---|---|
副作用 | 吐き気・食欲不振・下痢・血圧上昇 | 吐き気・排尿障害・頭痛・かすみ目 | 眠気・体重増加・食欲増加 | 口渇・便秘・立ち眩み・眠気・かすみ目 |
こうした副作用の症状は、抗うつ剤の服用をはじめてから1〜2週間で強く出やすいです。
しかし、抗うつ剤を服用し続けるとことで、徐々に副作用の症状が落ち着く傾向にあります。
先述したように、抗うつ剤には即効性がなく長期的な服用が必要です。
そのため、うつ病の症状に加え抗うつ剤の副作用もひどく辛い場合でも、自己判断で服用を中断せずに主治医に相談しましょう。
参考⽂献:厚生労働省「抗うつ薬 | e-ヘルスネット」
参考⽂献:日経メディカル「SSRI、SNRIに続く新規抗うつ薬「NaSSA」登場」
うつ病治療には、まず休養を確保し、心を休めることが非常に重要です。
その中で、医師やカウンセラーと対話を重ねながら、うつ病になった要因を自身で認識していくことで、うつ病の改善を図っていきます。
また対人とのコミュニケーションが苦手な方には、対人関係療法などが適用となります。
それでも効果が乏しく、薬物治療が必要と判断された場合には、抗うつ剤が処方されることとなります。
などがあげられます。
プロザックは、イーライリリーによって開発されたうつ病治療薬です。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)に分類される抗うつ薬の1つで、従来のうつ病治療薬と比較して副作用が少なく、世界的に広く普及しています。
SSRIとはSelective Serotonin Reuptake Inhibitorの略であり、選択的セロトニン再取り込み阻害薬です。
神経細胞(ニューロン)と他の神経細胞の接続部分であるシナプスにおけるセロトニンの再取り込みを阻害することで、うつ症状の改善を目指す薬剤です。
セロトニンとは脳内の神経伝達物質であり、精神の安定に関与するといわれています。
うつ病に罹患している人はシナプスにおけるセロトニン濃度が低下し、セロトニンがセロトニン受容体に作用しにくい状態になっていると考えられています。
そのためSSRIはセロトニンの放出を担うシナプスのセロトニントランスポーターに選択的に作用することで、セロトニンの再取り込みを阻害し、シナプスのセロトニン濃度を高い状態に維持することで、うつ病の症状の改善に効果を示します。
があげられます。
エスシタロプラム以外は後発品もすでに販売されており、幅広い商品から選択することが可能です。
サインバルタは、イーライリリーが開発したセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)です。有効成分としてデュロキセチン塩酸塩を配合しています。1日に1錠を服用することが原則です
SNRIとはSerotonin & Norepinephrine Reuptake Inhibitorsの略であり、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬です。
神経細胞であるニューロンの接続部分であるシナプスにおいて、セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害します。
うつ病患者では、脳内の神経伝達物質であるセロトニンおよびノルアドレナリンの量が少なく、これらの物質の不足により、意欲低下や気分の落ち込みといった症状が発現していると考えられています。
脳内に放出された神経伝達物質が再び細胞内へ取り込まれることを「再取り込み」といい、SNRIはセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで、脳内のセロトニンおよびノルアドレナリンの量を増加させます。
その結果、各種うつ症状の改善に効果を示します。
があげられます。
日本国内においては、ミルナシプランには後発品がすでに承認され販売されていますが、デュロキセチンおよびベンラファキシンに後発薬はありません。
SSRIとSNRIの有効性と忍容性には大きな差異はないことが、日本うつ病学会のうつ病に関する診療ガイドラインにて示されています。
レデプラは、ムスタファ・ネヴァッツ社が開発したノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)で、レメロンのジェネリック医薬品です。
NaSSAとは、Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressantの略で、1990年代に開発された比較的新しいタイプの抗うつ剤です。
ほかの抗うつ剤と比較すると、服用開始から2週間ほどと効果が早く現れるのも特徴といえます。
従来のようにシナプスにおける神経伝達物質の再取り込みを阻害して濃度を上げるのではなく、服用でセロトニン、ノルアドレナリンの分泌量そのものを増やします。
セロトニンは気分を調節し、ノルアドレナリンは意欲や集中力に関与するため、これらの神経伝達物質が増えるとうつ病の症状改善に有効です。
が挙げられます。
ミルタザピンは1994年にオランダで発売され、日本においては2009年7月に医薬品医療機器総合機構から製造販売が承認されました。
参考⽂献:Wikipedia「ミルタザピン」
参考⽂献:日経メディカル処方薬事典「NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)の解説」
デピロックスは、Consern社が開発したうつ病治療薬で、アモキサンのジェネリック医薬品です。三環系抗うつ薬の第2世代で作用がはっきりしていますが、副作用が比較的少なくなっている医薬品です。
三環系抗うつ薬とは、1950年代に登場したもっとも古い抗うつ薬の1つです。
シナプス前部におけるノルアドレナリンやセロトニンの再取り込みを阻害し、脳内のノルアドレナリンを中心にセロトニンにも作用し脳内の濃度を増やすことにより、興奮神経を活性化させ、さまざまなうつ症状に効果を示します。
しかし、シナプス後部のヒスタミンH1受容体やM受容体、α1受容体といった受容体にも作用してしまうため、便秘や口渇といった抗コリン作用による副作用も多く発現します。
初期の抗うつ薬ではありますが、現在でも広く使用されています。
その理由は、有効性という点において新しい抗うつ薬であるSSRIやSNRIと大差がないからです。
抗コリン作用などの副作用が多く存在するのですが、緊急入院患者などの重症患者においてもっとも有効性が期待できるとされています。
第一世代と第二世代があり、第二世代は第一世代よりも一般的に抗コリン作用が弱いため、副作用の発現が軽減されています。
があげられます。
参考⽂献:日経メディカル「三環系抗うつ薬(第一世代)解説」
参考⽂献:日経メディカル「三環系抗うつ薬(第二世代)解説」
レクサプロは、ルンドベックが開発した選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)で、有効成分エスシタロプラムを配合しています。従来型のSSRIに比べると副作用や離脱症状がでにくくまた1日の服用回数も少なくて済むのが特徴です。
サインバルタは、イーライリリーが開発したセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)です。有効成分としてデュロキセチン塩酸塩を配合しています。1日に1錠を服用することが原則です。うつ病・うつ状態以外に糖尿病神経障害や各種疾患の疼痛の治療に使用されています。
パキシルは、グラクソ・スミスクラインが開発した選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の一種で、パロキセチンを有効成分として配合しています。1日に1回、夕食前に服用するのが原則です。
最後に、上記で紹介した抗うつ剤を実際に服用した人の口コミを紹介します。
「実際に効果があるのか不安」という人は、ぜひ参考にしてください。
うつ病は今や、日本人約16人の1人は経験するといわれており、誰にでもなる可能性がある身近な病気です。
うつ病は回復には月単位の時間がかかりますが、治療可能な病気であることを忘れないでください。患者自身が、うつ病になった要因を認識し、向き合っていくことが非常に大切です。
休養、特に心の休息を取り、精神療法や場合によっては薬物療法を取り入れながら治療をおこないます。
うつ病は良くなったり悪くなったりを繰り返しますので、ゆっくりと焦らずに回復を目指していくと、ほとんどの患者が元気で回復した状態を迎えられます。
また早期発見、早期治療も肝心ですので、初期のサインを見逃さないようにしましょう。