不眠症とは|睡眠障害の原因や症状の種類・改善や治療方法などすべて

不眠症とは
不眠症とは、睡眠障害の1つであり、 日本国民の5人に1人は何かしらの睡眠に何らかの問題や課題を抱えているというデータもあります。
- 寝つきが悪いもしくは眠るのに非常に時間を要する(入眠障害)
- 睡眠の途中で何度も目が覚める(中途覚醒・睡眠維持困難)
- 目覚めたい時間の何時間も前に目が覚める(早朝覚醒)
- しっかり眠ったはずなのに、身体がしんどい(熟眠障害・睡眠後の休息感の欠如)
これらの症状に心当たりがある方は不眠症の可能性大です。
またその割合は高齢になるにつれ増加する傾向があり、今や日本人の国民的な病気となっています。 しかしながら、不眠症の原因は多岐に渡り、他疾患との併存も多く、治療は一律ではなく、個々人に合わせておこなう必要があります。
目次
不眠症の原因となる「5つのP」

不眠症の原因は多岐にわたりますが、大きく5つに分類できます。
- Physiological〔生理的な要因〕
- Psychological〔心理的な要因〕
- Pharmacological〔薬理学的な要因〕
- Physical〔身体的な要因〕
- Psychiatric〔精神医学的な要因〕
の5つであり、英語の頭文字はすべて「P」であることから「5つのP」といわれています。
これら5つの原因は独立しているわけではなく、それぞれが関連しあって発症しているケースが多くなります。
自分の不眠症がどのパターンに当てはまるのかに精査することに加え、複数の要因が関連していないかを確認することが非常に重要です。 原因を探り、ひとつずつ解消していくことが、不眠症の改善につながります。
- 参考文献
不眠症について詳しくはこちら
MSDマニュアル:不眠症
Physiological〔生理的な要因〕
Physiological〔生理的な要因〕とは、 生活習慣や睡眠時の環境に何かしらの問題があるタイプです。
- 昼夜逆転した生活を常時もしくは定期的に送らなくてはいけない方
- 交代勤務制などで睡眠周期が毎日一定ではない方
- 寝室が静かではなく周囲からの騒音に悩まされている方
- 寝室が明るすぎる方
- 寝室の気温が睡眠に障害を与えるほど暑かったり寒かったりする方
- 枕や布団が身体に合っていない方
などがあげられます。
また寝る直前までテレビやスマートフォンを見る方も当てはまり、スマートフォンの普及にともない、このタイプの不眠症が増加しております。
寝室の明るさは、明るすぎてもダメですが、全くの暗闇も不安が高まり寝付きが悪くなる方がおられます。そのような方は、部屋を薄暗く保つといいでしょう。
また寝室の室温および湿度も調節するとより良いでしょう。騒音対策としては耳栓をするか、防音サッシの設置がおすすめです。単調で静かな音楽を聴くと騒音が気にならなくなる場合もあります。
その他、枕の高さや布団の固さをご自身が快適に感じられるように調節することも重要となります。
寝る数時間前にはテレビやスマートフォンの操作を止め、寝室ではデジタル機器に触らないことが睡眠の質をあげることにつながります。
Psychological〔心理的な要因〕
Psychological〔心理的な要因〕とは、翌日の楽しいイベントのために興奮しすぎてしまい眠れない、心配事や不安が気になり眠れないなど、 何かしらの心理的な作用により不眠となってしまうタイプです。
不眠症に罹患している方の中には、「今夜も眠れなかったらどうしよう」と心配してしまい、その不安が不眠症をさらに悪化させてしまっているケースが多見受けられます。
「眠くなってから寝ればいい」とマインドを切り替えられると、逆に寝付きがよくなることも考えられます。
もしベッドに入って眠れない状態が20分以上継続した場合には、「今はまだ眠くない」とマインドを切り替え、いったん寝室を離れ、本を読んだり、音楽を聴いたり、ホットミルクを飲んだりしてリラックスして、再び眠くなってきたら寝室に移動するといいでしょう。
睡眠と心理状態は切り離せません。こればっかりは、マインドコントロール、気持ちの切り替えが上手いかどうかに大きく関連します。
興奮しすぎて眠れない方は、本を読む、音楽を聴くなどなるべくリラックスできる方法を見つけてください。心配毎や不安で眠れない方は、このまま心配していても何も変わらない、いったん考えることをやめようと気持ちを切り替え、自分の好きなことに集中するといいでしょう。
Pharmacological〔薬理学的な要因〕
Pharmacological〔薬理学的な要因〕とは、 何らかの飲食物や薬の影響により、不眠が引き起こされるタイプです。
コーヒーなどに含まれるカフェインや、たばこに含まれるニコチンには眠気を覚ます作用や、覚醒を促進・維持する作用があることが知られています。
アルコールは眠れない時に飲むと容易に眠れ(いわゆる寝酒)、睡眠と相性がいいと考えている方も多いと思いますが、それは誤解です。
少量のアルコールを飲むと、確かに寝つきは良くなります。
しかし、 アルコールは眠りの深さなどの睡眠の質を下げてしまうのです。
寝酒の習慣を継続していくと、アルコールに対する耐性ができていき、寝付くのに必要な量も増えます。
アルコールの催眠作用は短時間しか持続しませんし、トイレを近くする作用もありますので、寝付いてから数時間で目が覚めやすくなります。 不眠症の方はアルコールを控えることをおすすめいたします。
その他、服用している薬剤の副作用により、不眠症が引き起こされるケースもあり、不眠症を引き起こす薬剤としてはパーキンソン病治療薬やステロイド薬、インターフェロンの治療薬などがあげられます。
Physical〔身体的な要因〕
Physical〔身体的な要因〕とは、 身体の一部が痛いもしくは痒いなどの不快な症状により、眠りが妨げられるタイプです。風邪や喘息などによる咳や息苦しさによる不眠もこのタイプに分類されます。
頻尿を有している方も、夜間の覚醒が頻繁であることから不眠に繋がりやすくなります。
高血圧・糖尿病・肥満・メタボリックシンドロームなどの 生活習慣病と不眠症の発症には関連があることがわかっています。
高血圧は交感神経の興奮を促すため、寝付きが悪くなります。
糖尿病により血糖値が高い状態が続くと、多飲により頻尿となる可能性があります。
また糖尿病の合併症として神経障害が知られていますが、神経障害としてのしびれや痛みが眠りを阻害します。
その他、肥満やメタボリックシンドロームでは、交感神経の興奮による不眠状態や、首の周りに脂肪が沈着することにより引き起こされる睡眠時無呼吸症候群による睡眠障害が知られています。
交感神経の興奮はストレスホルモンを増加することが知られており、身体的要因が心理的要因にも結び付いて不眠症を引き起こす可能性があります。
身体的な要因で寝つきが悪い場合には、 生活習慣を改善しその要因を取り除くことが第一です。
Psychiatric〔精神医学的な要因〕
Psychiatric〔精神医学的な要因〕とは、うつ病・パニック障害・統合失調症や神経症などの 精神的な病気により不眠が引き起こされるタイプです。
うつ病とは、精神的または身体的ストレスを過剰に受けることで、さまざまな理由から脳のエネルギー欠乏が発生し、脳の機能に障害が生じる病気です。
自分がダメな人間だと感じたり、ものの見方が否定的になったり、無気力で憂鬱な状態が続くこととなります。うつ病の症状として、およそ約80%の人に睡眠障害を見られることが知られており、不眠または過眠のどちらも見られますが、一般的には不眠を発症されるケースが多いようです。
「嫌なことは寝て忘れる」という一面は正しく、睡眠は精神状態のコントロールに欠かせません。
けれども、うつ病を発症し、加えて不眠まで発症しますと、結果的にうつ状態は悪化する傾向があり、睡眠の改善は欠かせません。
またうつ病が悪化すると、身体的症状としての手足のしびれや倦怠感なども悪化することが報告されており、さらに睡眠を妨げられるケースもあります。
神経症としてはてんかんの患者の約50%以上に不眠症が、約70%以上に睡眠の質の低下がみられることが報告されています。むずむず脚症候群を発症されている方は、脚の不快感から入眠が妨げられることが知られています。
不眠症の症状は主に4タイプ

不眠症の症状は主に入眠障害・中途覚醒・早期覚醒・熟眠障害の4タイプに分類できます。
入眠障害とは、いわゆる寝付きが悪いタイプであり、布団に入ってから眠るまでに長い時間を要します。
不眠症の中でもっとも多くみられるタイプです。
中途覚醒は睡眠中に何度も目が覚めてしまうタイプです。高齢者の方や、頻尿を有しておられる方によく見られます。
中途覚醒は睡眠中に何度も目が覚めてしまうタイプです。高齢者の方や、頻尿を有しておられる方によく見られます。
早期覚醒は予定している起床時間よりもかなり早く目覚めてしまうタイプ
で、高齢者の方、うつ病の方に多く見られます。熟眠障害とは、睡眠時間は足りているにもかかわらず、眠りが浅く寝た気がしないというタイプです。
入眠障害
入眠障害とはなかなか寝付けない状態をいい、布団に入ってから眠りにつくまでに30分から1時間以上かかるタイプを指します。不眠症の中でもっとも多くみられるタイプとなります。
Psychiatric〔精神医学的な要因〕を有しておられる方、もしくはPsychological〔心理的な要因〕により不安や緊張状態が激しい場合によく発症する傾向があります。寝付きが悪いことが苦痛となり、精神的・心理的ストレスに繋がり、悪循環に陥るケースが多いのが特徴です。
夜寝る時間となっても、身体が覚醒した状態が続き、入眠のスイッチが入りづらい状態となっています。
精神的・心理的要因により身体が過度のストレスにさらされると、ストレス応答を担う大脳辺縁系が反応し、覚醒の指令を覚醒センターと呼ばれる視床下部外側野や、覚醒物質を分泌する脳幹に送ってしまうのです。
身体は覚醒と睡眠が相互に影響し合うことでバランスを取り、適切な覚醒と睡眠を作り出して体内リズムを整えているのですが、過度のストレスにより睡眠の指令を出すべき視索前野の働きが抑えられることにより、身体が覚醒状態に傾くことで、入眠障害が引き起こされます。
中途覚醒
中途覚醒とは、夜中に目が覚めてしまうタイプであり、何度も目が覚める、もしくは一度目が覚めた後眠れなくなるパターンが考えられます。成人に発症する不眠症の症状の中ではもっとも多く、不眠症を有する成人の15~27%の方が中途覚醒の症状を訴えています。
「覚醒」とは、脳が目覚め、意識がはっきりしている状態を指します。
人間は覚醒と睡眠を繰り返して身体のバランスを整えているのですが、中途覚醒が起こる場合、身体は過覚醒といわれる状態になっており、睡眠のスイッチが入りづらくなり、睡眠に身体が移行しようとしてもすぐに覚醒状態に戻っていまいます。
過覚醒が発生する理由はよくわかっていませんが、何かしらの原因により、覚醒物質の分泌作用が平常時よりも高まっているためと考えられています。
睡眠シグナルが送られるべきときに、脳から「覚醒しろ」との信号が送られ続けているのです。
不安や緊張感が強い場合や、感情が高ぶっている場合に発症するケースが多く、不安や緊張感・感情の高ぶりを抑える必要があります。
20代から徐々に症状が認められ、30代以降では覚醒回数や覚醒時間が長くなる傾向が見られ始めます。
50代になると症状が顕著に現れるようになり、さらに覚醒回数および覚醒時間が長くなるのが一般的です。
早朝覚醒
早期覚醒とは、予定している起床時間よりもかなり早く目が覚めてしまい、再び入眠するのが難しいタイプを指します。「早く目覚める」時間の基準は、一般的には予定起床時間より2時間以上前とされています。
高齢になると、体内時計のリズムが前にずれやすくなり、また若い頃と比べて夜遅くまで起きていることがつらくなりますので、基本的には早寝早起きになります。
また高齢者は若い頃と比較して必要な睡眠時間が短くなっている影響もあり、高齢者によく見られる症状です。早期に覚醒していまい、再び眠るのが難しいと睡眠不足に陥ってしまいます。
すると、翌日夜早くに眠くなり、いつもより早い時間にベッドに入ってしまい、翌日さらに起床時間が早まってしまうという悪循環に陥るケースが多くなりがちです。これはうつ病の方にもよく見られる症状です。
うつ病による過度のストレス状態に、ストレス応答を司る大脳辺縁系が反応してしまい、睡眠の指令が送られるべきタイミングで、覚醒の信号が送られてしまうのです。
覚醒の信号に反応して、体内では覚醒物質が大量に作られることとなり、常に身体が覚醒状態へと傾きますので、早期覚醒が促されることとなります。
熟眠障害
熟眠障害とは、睡眠時間は十分に足りているにもかかわらず、ぐっすり眠った気がせず、熟眠感が得られないタイプを指します。眠りが浅いのが原因であり、入眠障害や中途覚醒、早期覚醒のタイプと合わせて発症しているケースが多いといわれています。
また他の疾患が要因であるケースも多く、睡眠時に呼吸が止まるなどの障害が繰り返されることで、睡眠の質と量が低下し、日中に強い眠気を感じてしまう病気(睡眠時無呼吸症候群)や、睡眠時に足がぴくんぴくんと動くことを繰り返す病気(周期性四肢障害)などの睡眠中に症状が現れる病気が関与しているケースも多くみられます。
このタイプの不眠症は本人の自覚症状がない場合も多く注意が必要です。
本人としては睡眠に十分な時間を割いているのに、なんで日中こんなに眠いのかわからないと考えていたり、自分は現状よりも長時間の睡眠時間が必要であると考えたりしているケースが考えられます。
実際不眠症の疑いがあると判断された人の約60%は不眠症の自覚がないという調査結果もあり、日中の眠気がひどい人は一度このタイプの不眠症を疑う必要があります。
- 参考文献
心因性の不眠症について詳しくはこちら
ウィキペディア:不眠症
不眠症以外の睡眠障害

不眠症以外の睡眠障害としては、代表的なものに過眠症、パラソムニア(睡眠時随伴症)、概日リズム睡眠障害などがあげられます。
過眠症とは、眠ってはいけない場面でも強い眠気に襲われ眠り込んでしまう、もしくは睡眠総時間が長くなってしまうという症状が、3か月以上続き生活に支障をきたしている状態をいいます。
パラソムニアは睡眠中に起き上がる、歩き回るなどの好ましくない異常行動をとる状態を指します。夢遊病などが含まれ、小児に見られることもあります。
概日リズム睡眠障害は睡眠のリズムが崩れることにより起こる障害です。時差ボケをイメージしてもらうとわかりやすいかと思います。夜勤がある方や、夜更かしが習慣になってしまった方によくみられる症状です。
過眠症
過眠症とは過眠症状が3か月以上継続し、生活に支障が生じており、脳に原因があると考えられる病気を指します。過眠症状とは、寝てはいけない局面で強い眠気に襲われ眠り込んでしまう、または睡眠総時間が伸びてしまうなどの症状です。
代表的な症状としては、仕事の会議中に眠ってしまう、歩きながら眠るなどの症状もがあげられます。
日本人に一番多い過眠症はナルコレプシーであり、脳の覚醒中枢の機能が減弱し、起き続けることが困難となり、眠り込んでしまう病気です。
特発性過眠症もナルコレプシーと並んで過眠症を代表する病気です。
睡眠の量・質が足りており、身体および脳は十分に回復しているにもかかわらず、脳がまだ眠ろうとします。覚醒中枢は正常に働いているのに、睡眠中枢の働きが過剰になっていると考えられています。
- 参考文献
ナルコレプシーについて詳しくはこちら
メディカルノート:日本人に多い過眠症、ナルコレプシー
パラソムニア(睡眠時随伴症)
パラソムニア(睡眠時随伴症)とは、睡眠中に起き上がる、歩き出すなどの異常な行動をとる病気です。
主な症状としては、睡眠時遊行症(夢中遊行症やねぼけ、別名:夢遊病)という睡眠時に歩き回る症状や、睡眠時驚愕症(夜驚症)という睡眠中に恐怖の叫びを上げたり泣いたりする症状があげられます。
睡眠時驚愕症(夜驚症)は交感神経の異常興奮による起こるといわれています。
いずれも本人は自身の行動を覚えていないことが特徴です。
5~12歳の小児によく発現するものをノンレム関連睡眠時随伴症、中年期から老年期の大人によく発現するものをレム関連睡眠時随伴症といいます。
概日リズム睡眠障害
概日リズム睡眠障害とは、体内の睡眠・覚醒のリズムである体内時計と、外部の明暗サイクルとの間にずれが生じてしまうことで起こる障害です。
原因として体内時計と睡眠パターンがずれているという内因性の要因と、時差ぼけや夜勤を含む交代勤務をおこなっているなどの外因性の要因の両方があげられます。
パターンとして時差型、交代勤務型、睡眠相前進/後退型の3パターンがあります。
時差型はいわゆる時差ぼけで、3つ以上のタイムゾーンを高速で移動した際に発生します。
交代勤務型は昼間の勤務と夜の勤務が繰り返されることで、体内時計がずれてしまう状態です。
睡眠相前進/後退型とは、睡眠の質は正常であり、睡眠の長さも24時間概日リズムであるにもかかわらず、このサイクルと起床時間が合っておらず、障害が生じている状態を指します。
- 参考文献
睡眠時随伴症(パラソムニア)について詳しくはこちら
コトバンク:睡眠時随伴症(パラソムニア)
不眠症の種類

不眠症の要因は多岐にわたり、そのため種類も多く存在します。また1つではなく複数の要因が関連しあって、不眠症を発症しているケースも多く、一概にあなたの不眠症の種類を断定できないのが一般的です。
併存疾患の1症状として発現するケースもあります。
要因を1つずつ探り、1つずつ解消し自身の身体の状態を確かめるというのが、不眠症の治療の普遍的なやり方となります。
不眠症の要因の代表的な種類は
- 精神性理性
- 適応障害性
- 物質誘発性
- 運動誘発性
- アルコール誘発性
- ベンゾジアゼピン誘発性
- オピオイド誘発性
- 精神疾患による併存
- 神経疾患による併存
- その他の内科疾患による併存
などがあげられます。
精神生理性
精神生理性の不眠症は、睡眠恐怖症とも呼ばれており、患者が眠れないことに対して不安感・恐怖感を抱いており、また今日も眠れないのではないかという先入観があることにより、さらに不眠症が悪化する傾向がある不眠症のタイプです。
典型的に、患者は不眠のことを考え不安に思いながら、長時間布団の中で過ごします。また自宅以外の場所だとさらに症状が強く出る傾向があります。
治療としては、マインドを切り替えることが一番です。
寝床に入っても20分以上眠れない場合は、「今は眠くない」とマインドを切替え、読書や音楽を聴くなどしてリラックスして過ごし、また眠くなったら寝床に戻るようにするといいでしょう。
寝床にいながら起きている時間をある程度制限することで、気持ちの切り替えが容易になります。
瞑想やストレッチもリラックスには効果的です。
寝つきには交感神経の異常興奮が関与しているケースが多いため、自分なりのリラックス方法を探ってみてください。
治癒には時間がかかるかもしれませんが、確実にゆっくりと治していくことが大切です。
適応障害性
適応障害性の不眠症は、環境が大きく変わった時にそれにうまく適応できず発症する不眠症です。
- 離婚や死別
- 子供の誕生といった人生において大きな出来事があった前後
- 転職や異動など仕事における環境が変化した前後
- 入学、卒業、クラス替え、転校など学校生活において大きく環境が変化した前後
- 試験前夜や喧嘩など何かしらのストレスがかかった
- 金銭的なストレスを抱えている
- 何かしらの感情や精神の緊張がある
- 大きな恐怖や不安を感じている
これらの事例で発症するケースが考えられます。
一般的にこのタイプの不眠症は一過性であり、新たな環境に慣れていくにつれ、症状は軽快するケースが多いとされています。大体の罹患期間は短期間であり、数週間程度が一般的です。また回復も急速にみられます。
その他、登山家などにみられる、高地の酸素不足により発症する高地不眠症もこのタイプに分類されます。
基本的に治療は必要とはしませんが、数週間経過して、自分としては新しい環境に慣れてきていると感じているにもかかわらず不眠症の症状が残っている場合や、日中の眠気がひどく、昼の生活に支障をきたす程度である場合には、睡眠薬の短期間投与などの対応が取られる場合があります。
物質誘発性
物質誘発性不眠症とは、何かしらの物質により引き起こされる不眠症です。
一般的に各種薬剤やカフェインなどの物質により引き起こされます。
副作用として不眠症が発症することが知られている薬剤には、フルオロキノロン系抗生物質、降圧薬、ステロイド、気管支拡張薬、抗パーキンソン病治療薬などがあげられ、特にフルオロキノロン系の抗生物質では、重度で」慢性的な不眠症が発症する危険性が示唆されています。
抗痙れん薬や、経口避妊薬(ピル)、甲状腺ホルモン製剤の慢性的な仕様により不眠症が引き起こされることもわかっています。これらの薬剤に使用が必要な場合は、副作用として発生した不眠症をどのように解消していくか医師と相談してください。
睡眠薬の併用を示唆される例もあるでしょうし、軽度の場合は、寝室の環境を変化させたり、生活習慣を改めたりすることで不眠と付き合っていけるケースも考えられます。
その他、カフェインやニコチンの大量摂取によっても不眠症が引き起こされます。コーヒーや紅茶などの摂取は寝る4時間前までにしましょう。タバコは禁煙するか、もしくはできるだけ吸う本数を減らしましょう。
運動誘発性
運動誘発性の不眠症とは、運動誘発の疲労からくる不眠症であり、アスリートが良く発症するタイプの不眠症です。
特徴として入眠潜時が長くなる傾向があります。
激しい運動をおこなうと、交感神経の興奮状態が長時間維持されることにより、入眠に時間がかかってしまうと考えられています。
中国人856人の運動選手を対象とし、2004年に実施された疫学調査では、運動選手の約60%に運動誘発性の不眠症が認められ、その割合は運動成績が優秀であればあるほど高くなる傾向が認められました。
その内の約20%は少なくとも週に3日以上不眠症が認められ、またその内約5%は3週間以上継続して症状が認められていました。入眠障害は全体の約80%に、中途覚醒は全体の約20%に、早期覚醒は全体の約20%弱に認められました。激しい運動をおこなった後に発症する傾向が高いという結果がでました。
競技前の緊張や不安による神経過敏状態も、不眠症の発現の一因であるといわれています。
そのため運動誘発性不眠症は、精神生理性不眠症を併発しているケースが多く見受けられます。
それらのことから、交感神経の興奮によるストレスホルモンの分泌過剰も不眠症の一因となっていると考えられます。
アルコール誘発性
アルコール誘発性の不眠症は、その名の通りアルコールが原因で起こる不眠症です。
寝つきが悪いためアルコールを飲んで寝る人も多いかと思いますが、実はこれは逆効果です。確かに寝つきはよくなりますが、アルコールの催眠効果は短時間しか持続しません。
またアルコールを摂取するとトイレが近くなるため、寝入ってから数時間後には目覚めてしまう中途覚醒の可能性が高まります。アルコールはノンレム睡眠とレム睡眠のリズムを狂わせ、頭痛・尿意・脱水・発汗などを引き起こし、中途覚醒を促します。
その他、アルコールは身体が生成する天然の覚醒物質であるグルタミンの生成を阻害する作用を有しております。
飲酒を断つと反動で身体は必要以上にグルタミンを生成します。それにより体内のグルタミン濃度が高まり、脳が覚醒してしまいます。そのためまたアルコールを摂取することとなります。
アルコールを慢性的に使用すると、徐々に耐性ができ、入眠に必要なアルコール量は増加していくこととなります。
慢性的なアルコール摂取を急に中止すると重篤な不眠症状が引き起こされることがあり、寝つきにアルコールを使用することはやめましょう。
ベンゾジアゼピン誘発性
ベンゾジアゼピン誘発性の不眠症は、その名の通りベンゾジアゼピンにより引き起こされる不眠症です。
ベンゾジアゼピンは睡眠薬の有効成分であり、短期間の服用であれば不眠に効果を示します。
その作用機序はベンゾジアゼピン受容体に作用し刺激することで、抑制性の神経伝達物質であるGABAの神経伝達を亢進し、催眠・鎮静作用を示します。
また脳の活動を抑制することで抗けいれん作用や抗不安作用も持ち、合わせて不眠症に効果を示します。
身体を、入眠時のノンレム睡眠ステージ1-2の状態に変化させることで、寝つきを良くする効果を有します。しかしながら、ノンレム睡眠・レム睡眠の睡眠構造を変化させますので、長期的に使用すると睡眠構造が混乱を来すこととなります。
あくまで短期間の使用を前提としている睡眠薬となり、長期間の慢性的な使用では、トータルの睡眠時間の減少や、深い眠りかつ脳が休息できるノンレム睡眠の時間の減少をもたらし、結果として不眠症が悪化してしまいます。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬には、ジアゼパムやロラゼパム、アルプラゾラム、クロナゼパムなどの薬剤が含まれます。
オピオイド誘発性
オピオイド誘発性の不眠症は、その名の通りオピオイドにより引き起こされる不眠症です。
代表的な薬剤にモルヒネ・オキシコドン、ヒドロコドンなどがあげられます。
中枢神経や末梢神経に存在するオピオイド受容体に作用し、手術や外傷による痛み、がんにともなう疼痛の緩和およびコントロール、神経損傷による痛みなど、ひどい疼痛の緩和に使用されます。
その効果の強さにより、医療用にのみ使用が許可された麻薬であり、医師による使用しか日本国内では許可されていません。一般の人の慢性的な疼痛に使用されることは想定されていないのですが、オピオイド薬には強い鎮痛作用のほかに、不安を抑制する作用、幸福感を得られる作用があり、抗不安作用や安眠を期待して服用される場合もあるのが現状です。
オピオイド鎮痛薬は睡眠を断片化させ、またレム睡眠を減少させることがわかっています。
そのため長期に服用すると睡眠のバランスを崩してしまう可能性あり、不眠症が発現する割合が高まります。
あくまでオピオイド薬は鎮痛を目的としてのみ使用されるべきであり、その他の使用はおこなわないよう注意喚起が必要です。
精神疾患による併存
精神疾患を有している患者の約80%には、不眠に関連した症状が見られるとの報告があります。
代表的な精神疾患には、
などがあげられます。
また別の報告となりますが、うつ病患者の約80%は不眠症を併発している、また慢性不眠症患者の約40%には何らかの主要な精神障害が認められており、もっとも多いのは気分障害だという報告もあります。
このように精神疾患と不眠症は密接に関連しています。
うつ病に罹患している方は寝付けない入眠障害や、予定している時間よりも2時間以上早く起床してしまう早期覚醒などの不眠症状を訴えられるケースが多々あります。
また躁うつ病、活動的でハイテンションな躁状態と、憂鬱かつ無気力なうつ状態を繰り返す双極性障害や、ある季節のみ気分の落ち込みや身体のだるさや疲れやすさを感じやすい季節性情動障害では、睡眠がとれているにもかかわらず、日中に激しい疲労感を訴えられるケースが多く見受けられます。
神経疾患による併存
神経疾患を有している患者は、不眠に関連した症状を訴えることが多いようです。
不眠症状を訴える代表的な神経疾患には、
- てんかん
- むずむず脚症候群
- 周期性四肢運動障害
- 脳損傷
- 脳卒中
- アルツハイマー病
- レビー小胞体認知症
- パーキンソン病
などがあげられます。
てんかんと不眠症の関係はほとんど明らかにはなっていませんが、実際にてんかんを有する方の50%以上が不眠症を合併しており、また70%以上の方が睡眠の質が低下しているという報告もあります。
むずむず脚症候群はレストレスレッグス症候群ともいい、下肢や腕に虫が這っているまたは伝うような錯感覚があり、その症状は安静時や横になっているときほど酷くなり、就寝時前後がもっとも激しくなります。
そのため、症状を緩和させようと四肢を伸ばしたり、蹴ったり、歩き回ったりなどするため、入眠障害や中途覚醒が起こります。
周期性四肢運動障害は、睡眠中に四肢に繰り返し筋収縮や蹴られるような痛みが見られる障害です。
通常患者は異常な運動およびそれにともなう短時間の覚醒は自覚していないのですが、睡眠の質が悪いため日中に酷い眠気を覚えます。
その他の内科的疾患による併存
その他の内科的疾患によっても不眠に関連する症状が引き起こされることがあります。
不眠症を引き起こす代表的な内科的疾患には、関節リウマチ、糖尿病、高血圧、肥満やメタボリックシンドロームなどがあげられます。
関節リウマチに罹患している方は、関節の痛みとこわばりによる過度のストレスによる精神症状として不眠が見られ、また関節リウマチになると体内時計に関連する遺伝子の異常が起こり、関節リウマチを重症化させるとともに睡眠障害を引き起こしていることが示唆されています。
糖尿病では、高血糖にともない多飲や頻尿が発生し、中途覚醒の頻度が高まるのみならず、代表的な合併症である神経障害によるしびれや痛みにより眠りが妨害されます。
高血圧、肥満、メタボリックシンドロームでは交感神経の過度の興奮により不眠症が発現します。交感神経の過剰興奮はストレスホルモンの分泌を促進するため、精神生理性の不眠症にも繋がります。
また不眠症ではありませんが、肥満やメタボリックシンドロームの患者さまは首回りに脂肪が沈着することにより、睡眠時無呼吸症候群の発症率が高く、睡眠時に呼吸が阻害される睡眠障害を発症するケースもあります。
不眠症の治療

不眠症の治療は、アメリカにおいては認知行動療法(CBT-1)が標準療法とされています。
日本では元来薬物療法が中心でしたが、依存性や薬を突然中止することで起こる以前よりも強い睡眠障害を発症する反跳性不眠が懸念されることから、認知行動療法に脚光が当たっています。
認知行動療法とは、不眠の原因を分析し、寝室の環境を整え、寝室の過ごし方を取り決め、リラックスして過ごすことを組み合わせておこなう治療法となります。
不眠の原因は多岐にわたり、また精神・心理的な影響も大きいため、個々に合わせて治療をおこなっていく必要があります。
非薬物療法
非薬物療法とは、その名の通り、睡眠薬に頼らずに不眠を治療する治療法です。
睡眠薬の使用は耐性ができる点・依存性が高い点・反跳性離脱作用(睡眠薬を突然中止すると、睡眠薬を服用する前の不眠症よりもさらに症状が悪化した不眠症が出現してしまうこと)を有する点から、短期間の服用に留めることが推奨されています。
そのため不眠症の治療は、基本的には非薬物療法が含まれることとなります。
現在不眠症の治療の一次選択であり、また長期的に不眠を管理できる方法として注目を集めています。
睡眠薬を使用する以外の治療法全般を指しますので、その内容は多岐にわたります。
代表的な治療法には、
- 明るさ、気温、湿度、騒音などの寝室の環境を整える
- 刺激物であるカフェイン、アルコール、タバコ、ニコチンの摂取を制限する
- 就寝直近におけるスマホやテレビ、電子書籍などの電磁製品の使用を制限する
- 昼寝を一定時間まで留める
- 自分に必要な睡眠時間だけ睡眠する
- ダラダラ寝室で過ごさないようにする
- 無理に寝ようとしないマインドの切り替えをおこなう
などがあげられます。
行動・環境の調整技法
不眠症の治療の1つに、睡眠衛生(就寝環境)の調整をおこなう「行動・環境の調整技法」と呼ばれる方法があります。
環境面では、
- 寝室の照明、温度、湿度を快適な状態に整える
- 外部の騒音が聞こえないように防音サッシなどを取り入れる
- 沈黙が苦手な人は穏やかな音楽を流す
- 枕の高さを調整する
- 布団の重さなどを調整する
などがあげられます。
寝室は寝るためだけの部屋とし、テレビやスマホ、電子書籍などの電磁機器は持ち込まないようにしましょう。
行動面では、
- 寝る直近にニコチン・アルコール・カフェインなどの刺激物は摂取しない
- カフェインは寝る前約4時間を、たばこは寝る前約1時間は摂取しない
アルコールは催眠作用を有しますが、その効果は短くすぐ覚醒しますので、寝酒は厳禁です。
また必要な睡眠時間は人それぞれであり、4時間ほどで満足する人もいます。
日中に眠気を覚えず快適に過ごせるのなら問題ありませんので、一定以上の睡眠時間を確保しなければいけないという固定観念は持たないようにしましょう。
その他、リラックスできる方法を見つけ、眠くなってから床につき、20分以上眠れない場合は再度起き、再び眠くなってから寝室に移動するようにしましょう。
認知行動療法
不眠症の治療法の1つである認知行動療法は、アメリカにおいて不眠症の標準治療とされている療法であり、有害事象もなく、持続的な利益を患者にもたらしてくれ、非常に有効性が高い方法として、世界的に広く受け入られております。
うつ病などの精神症状や身体疾患による疼痛症状の軽減や、睡眠薬の減量も期待できることが近年判明し、ますます注目を集めています。
基本的に5つの構成要素からなります。
- 睡眠や不眠に関する好ましくない習慣や考え方を探し出し、好ましい方向に修正する(認知療法)
- 寝室は眠るためだけに使用する場所だと認識の上、利用し、ベッドに入り20分以上寝つけない場合は、一度寝室から離れる(刺激統制法)
- ベッドの上での眠れない時間の減少と、睡眠効率の上昇を目指して、ベッドの滞在時間を制限する(睡眠制限法)
- 時計を見える場所に置かない、何時に就寝するなどの睡眠計画を立てない、アルコールやカフェイン・ニコチンの摂取量を控える、昼寝時間を制限するなどの睡眠環境を整える(睡眠衛生法)
- 覚醒状態を和らげ、筋肉の緊張を取り除くため、瞑想やヨガなどの筋弛緩法を実施する(リラクゼーション法)
これらを実践することで、不眠に対して高い効果が期待できます。
薬物療法
薬物療法とは、睡眠薬を利用して不眠症の治療をおこなうことです。
一般的にベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬が用いられております。短期間の服用であれば、不眠症に効果を発揮しますが、長期間の服用となるとその効果よりも耐性・依存性・離脱症状の問題が懸念されます。
最近はメラトニン受容体作動薬という体内時計の調節に関与し、睡眠と覚醒のバランスを整える薬剤や、オレキシン受容体拮抗薬という亢進状態の覚醒を抑制し、身体の状態が睡眠に切り替わることを助ける薬剤も開発され、一時期に比べ依存性や離脱症状への懸念は解消されてきております。
しかし、基本的には非薬物療法を実施し、効果が得られない場合に薬物療法を加え、症状が改善したら薬の服用量を徐々に減らしていき、断薬を目指す方法が一般的です。
薬を短期間に効率よく使用し、自然に近い睡眠状態を目指しましょう。
日本は一部の不眠症の患者には睡眠薬の長期服用も許容されていますが、可能な限り断薬が推奨されている一方、うつ病の不眠に対して睡眠薬が効果的である(睡眠薬で不眠を改善することで、抗うつ薬の治療効果が高まる)として、薬物療法が推奨されています。
不眠症の改善方法と快眠する工夫

不眠症の要因は多岐に渡り、精神的・心理的な影響も大きいため、ちょっとしたことが思いがけなく改善へのヒントとなるかもしれません。
良く眠れるように、寝室の環境を整えたり、マインドの切り替えの仕方を学んだり、生活習慣を見直したりすることが大切です。
1つ1つ自身に当てはまる睡眠への悪い影響を与える要素がないか確かめ、解消していくことで、自身の不眠症状がどのように変化するのか見てみてください。
不眠は一般的に単独の要因ではなく、複数の要因が関連し合っていることが多いですので、複数の要因にアプローチしてみることをおすすめいたします。
室内環境の調整
室内環境の調整として、寝室の照明や温度・湿度を調節してみてください。
寝室の照明はもちろん明るすぎてはいけないのですが、人によっては真っ暗闇にかえって不安があおられてしまう方もいます。真っ暗闇が苦手な方は、豆電球などの優しい光を付けておくといいでしょう。
室温は特に入眠時に快適と感じられる温度に調節すると、寝つきが良くなります。寒すぎる、暑すぎる場合はそもそも寝付けませんし、途中で目が覚めてしまう可能性も考えられます。また湿度は大体50~60%に維持すると寝やすくなります。
人によっては乾燥していると喉が痛くなったりして、途中で目覚めてしまうケースがありますのでご注意ください。
騒音対策
外部の音が気になり眠れないという方は、騒音対策として耳栓や、防音サッシの設置が有効です。
時計の秒針の音が気になるという方は、これを機に秒針の音がしない時計に変更してください。
中には、静寂が気になってしまうという方もいらっしゃいます。
そのような方は、静かで単調な音楽を、音量を落として寝室に流すと効果的です。音楽を聴くことは騒音が紛れることになりますので、音が気になる方にも有効な方法です。
洗濯機や室外機の音に反応してしまう方は、洗濯機を回す時間と就寝時間が被らないように調整してみてください。
室外機が気になる方は、部屋の気温や湿度の調整にはエアコンを用いず、羽のない温風冷風機の使用を検討したり、動力を用いない加湿器の使用を検討してみたりしてください。
寝具の工夫
不眠の一因として寝具が合っていない可能性が考えられます。枕や布団、マットレスを見直してみましょう。枕は高さが首のカーブに合っているものを選びましょう。
身体とマットレスや敷布団の隙間を埋め、立っているときと同じ姿勢を維持できるように安定して頭を支えているか確かめてみましましょう。
素材は低反発ウレタン、ポリエステル、綿など多岐にわたりますが自身がリラックスできる素材がどうかで選択しましょう。汗かきの方は吸水性のいい素材など体質にあっているかも大切です。
マットレスにおいても、立っている時と同じ背骨の状態を保つことができるように、固さや素材を選択してください。また掛布団も重いと感じたりしていないか再度確かめてみてください。
就寝前の刺激物を控える
コーヒーに含まれるカフェインや、たばこに含まれるニコチンなどの刺激物は交感神経を活性化し、入眠障害を起こす可能性があります。
そのためカフェインの摂取は就寝の約4時間前まで、ニコチンの摂取は就寝の約1時間前までにしましょう。
アルコールも就寝の約3時間前までにしましょう。
アルコールには催眠作用がありますが、その作用は持続せず、アルコールが分解することでできるホルムアルデヒドは睡眠を妨害し、覚醒を促す作用があります。
またアルコールには利尿作用があるので、トイレに行きたくなり中途覚醒が起こる割合が高まります。
アルコールはなるべく控えるのがいいのですが、どうしても飲みたい場合は、体重60kgの日本人男性ならビール中ビン1本まで、女性や高齢者の場合はビール小ビン1本までに抑えましょう。
概日リズムを整える
体内のリズムを整えることも不眠症に効果的です。日中は明るいところで過ごし、夜は暗いところで過ごすなど、自然の光と同じにすることで体内リズムが整いやすくなります。
そのためには早寝早起きの習慣を身に着けることが大切です。人が眠くなる時間は、起床時間に左右されます。
大体起床後14~16時間たつと自然に眠気を催すようになっているため、不眠症対策としては寝る時間を決めるのではなく、起床時間を一定に保つと大きな効果が期待できます。
夜更かしをすると、翌朝起きられなくなり、翌日寝る時間がまた遅くなるという悪循環を繰り返すことで、体内リズムが崩れていきます。
眠れない日があったとしても、頑張って起床時間はずらさないようにしてください。
日光を浴びる
睡眠と覚醒の体内リズムは、体内時計が担っています。
体内時計とは別名を生理時計ともいい、生物が生まれつき持っている時間を測定する仕組みです。
ヒトの体内時計は24時間周期ではなく、24時間より少し長いことがわかっています。
毎日ずれが少しずつ発生してしまうのですが、光を浴びると体内時計がリセットされます。
起床時に日光を浴びると、この少しのずれを解消でき、体内時計を24時間周期に合わせることが可能です。
起床時にはカーテンを開けて、日光をあびる習慣を身に付けましょう。
最近は冷暖房効果や、寝ている間は光を浴びたくないという思いから遮光カーテンが主流ですが、不眠の方は一度遮光ではないカーテンを試されてみるのも1つの方法です。
生活習慣の改善
生活習慣を改善することは、不眠症に非常に効果的です。
まず1日3食、規則正しく食事をとりましょう。食事をすると身体が目覚め、脳が活動する時間であると認識します。規則正しく食事をとることで、体内時計のリズムを整えやすくなります。
睡眠ホルモンの作成に関与するメラトニンをつくるトリプトファンと呼ばれる栄養素を多く含む食材を摂取することもおすすめです。
トリプトファンはバナナや乳製品、魚、豆製品、炭水化物などに多く含まれています。
スムージーが流行っていますが、どちらかというと固形のものを良く噛んで食べるほうが覚醒に関与する脳内物質の活性が促されることがわかっています。
日中は適度に身体を動かすことで、身体を疲れさせると睡眠物質が分泌されるようになり、夜になれば自然に眠れます。
自分にあったリラックス法を見つける
不眠症は交感神経の興奮状態により引き起こされることが多く、自分にあったリラックス方法を見つけ、交感神経の興奮状態を抑え、副交感神経優位な状態に身体をもっていくことが、不眠症の治療に効果的です。
一般的な方法としては、音楽を聴く、読書をする(ただし電子書籍はだめです)、半身浴をする、アロマをたくなどの方法が効果的であるといわれています。
また寝る前にベッドの上で腹式呼吸をしたり、筋弛緩トレーニングをしたり、ヨガをしたりすることも効果的です。
その他、夕食後に軽いウォーキングなどの有酸素運動をおこなうと、身体の深部体温が高まり、入浴したのと同じような状態となり、体温が低下するタイミングで自然な眠気を催すことが可能です。
眠れなくても気にしすぎない
眠れなくても気にしすぎないことは、不眠症の治療に非常に効果を発揮します。
寝室に行く前から「今夜も眠れなかったらどうしよう」と心配していると、その心配が不安となり、不眠症がさらに悪化してしまいます。
「眠くなったら寝ればいい」とマインドを切り替えられると、逆に寝つきがよくなります。
もしベッドの中で20分以上眠れなければ、一度起きましょう。
そしてリビングなどで、音楽を聞いたり、ホットミルクを飲んだりなどしてリラックスしてください。
リラックスし、再び眠気を感じるようになったら寝室に移動しましょう。
不眠症を解消するために(まとめ)
不眠症の原因は多岐にわたります。
生活習慣や睡眠時の環境に原因がある場合や、薬剤により発症している場合は原因を取り除けばいいのですが、解消には一般的な病気よりも時間がかかることが知られています。
不眠症の要因が心理的・精神的である場合や、身体的な要因である場合には、要因の解消も難しいことから、不眠症の改善にはさらなる時間を要するケースが考えられます。
一般的に不眠症は、複数の要因が関連し合い発現している例が多いですので、改善には根気が必要です。
頑張りすぎず、1つずつ症状の改善を図り、少しずつ健康的になっていきましょう。
参考文献
医薬品情報サイト
MSDマニュアル
MSD社の医療関連情報サイトで、世界中の医療専門家や査読者で構成される独立編集委員会、また医師やメディカルライターで構成されるスタッフの共同作業により編集された医療や福祉、健康に関するさまざまな情報の検索が可能となっています。
メディカルノート
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情報サイト
ウィキペディア(日本版)
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コトバンク
2009年発足、朝日新聞社が主体となってとりまとめたインターネット百科事典。新聞社が提供するウェブサイトの特色として報道記事中の用語解説を強化し、朝日新聞サイト掲載記事にリンクしています。
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