ニコチン依存症とは|喫煙がやめれない原因や治療方法【お薬通販部】
ニコチン依存症とは
ニコチンはタバコに含まれている成分の1つです。
タバコは嗜好品のため、百害あって一利なしという言葉を認識していても、ニコチンが薬物の一種であるという認識はほとんどの人が持っていないのではないでしょうか。
しかし、喫煙がやめられない本当の理由は、ニコチン依存症という薬物依存にかかっているからなのです。
タバコを吸うとニコチンが数秒で脳に届きます。
そして、ニコチンには神経伝達回路に影響を与え、快楽物質や報酬物質の分泌を促進させる働きがあるため、タバコを吸うことで逃れがたい快楽を得ることになり、やがて強い神経作用によってタバコがやめられなくなるニコチン依存症を発症します。
目次
タバコがやめられない原因
タバコに含まれているニコチンには、コーヒーのカフェインや酒類のアルコール同様の依存性があります。そしてタバコにはニコチンの依存性以外に心理的な依存と喫煙行為そのものによる依存があると考えられています。
タバコはイライラしていたり、手持ち無沙汰の時に吸う本数が増えたりする傾向にありますが、こうした行為はニコチン作用に依存しているというよりも、癖や気分転換という側面が強く、ニコチンの依存性とはまた異なる性質であると考えられます。
このパートではタバコの依存性について、ニコチン作用による依存、心理的な依存、喫煙行為による依存という3つの観点から説明していきたいと思います。
ニコチン作用による依存
ニコチンは人の中枢神経からドパミンを介する脳内報酬系物質に作用することがわかっています。
脳内報酬系とは達成感や快楽をもたらす神経伝達物質でノルアドレナリン、セロトニン、ドパミン、アセチルコリン、γ-アミノ酪酸、グルタミン酸塩などが該当します。
さらにニコチンはアルコールやカフェインと違い、体内への吸収速度がとても速く、口腔粘膜や皮膚からも吸収されていきます。そして肺から吸収された大量のニコチンは数秒で脳に達します。
脳内伝達系物質は通常何かをやり遂げた時や快楽行為に浸っている時に分泌されるのですが、ニコチンの刺激を日常的に受けている脳は、ニコチンを摂取していない非喫煙者の脳よりも脳内伝達系物質の分泌量が低下してしまいます。
そしてニコチンの刺激に慣れてしまうと、ニコチンを摂取しない状態では脳内報酬系物質を分泌しにくくなり、ストレスを感じてすぐにニコチンを要求するようになります。
これがニコチン依存症のシステムです。
また、ニコチンは吸収と同様に消失していく時間も早く、30分ほどでニコチンの効果が切れてしまうため、またすぐに次の1本を吸いたくなってしまいます。
心理的な依存
神経伝達物質は、記憶や経験によっても分泌量が変わってきます。
これは人の脳が持つ高度な学習能力の1つなのですが、タバコを吸うことでイライラや不安、焦燥感などが減り、気分が落ち着くことを学習してしまうと、心理的な条件反射でちょっとしたストレスを感じてしまい、喫煙したいという欲求が出てきます。
これを心理的依存と呼んでいます。
禁煙治療は呼吸器科や循環器科と合わせて精神科でも治療が必要といわれるのは、喫煙常習者のタバコへの心理的依存が高いからです。
この心理的依存から自身を解放するには、喫煙に頼らなくても気晴らしや快楽、そして達成感を得られることを学ぶことがもっとも効果的です。
喫煙による依存
心理的依存が表面に出てくる意識の問題とするならば、喫煙による依存は無意識のうちに起こす癖のようなものです。
たとえば、考え事をしている時や手持ち無沙汰の時のように意識しなくても、勝手にタバコを吸おうという心理が働いてしまう状態です。
無意識や深層心理からくる依存も心理的依存の一種ですが、自覚を持てない分治療は困難を極めます。このようなケースではタバコがすぐに吸える環境から遠ざかることが解決への最短ルートです。
タバコ税を上げて安易にタバコが買えないようにすること、または世界的な禁煙ムーブメントなどは、喫煙行動による依存度合いを下げるための効果的な施策と考えられています。
喫煙のメリット
タバコを吸うことには、百害あって一利なしというのが世界の常識になりました。
しかし、体に悪いことがわかっていながらやめられないというのもまた事実です。
本当にタバコは体に害悪しか与えないのでしょうか。
ここではあえて「タバコを吸うことのメリット」を考えていきたいと思います。
ただし、あくまでも逆説的な意味のメリットであり、喫煙を推奨するものではありません。
タバコの副流煙は害が大きいということがわかっています。
周囲に人がいる状況では吸わないか、喫煙所に移動してから吸うというのがマナーです。
ニコチンの効果
何かにつけ悪者扱いされるのがニコチンですが、イライラしている時に吸うと気分が落ち着くということからもわかるように、高いリラクゼーション効果があります。
「一服つけたら仕事する」というのも昔はよく聞かされたセリフですが、これはニコチンが持つ覚醒作用を表現していて、その1つにやる気を起こさせるパワーがあることの証です。
タバコに関する研究によってニコチンは脳の側坐核(そくざかく)という部分を活性化させることが判明しています。
側坐核は意欲を司るので、タバコを吸うと意欲が湧くのは事実なのです。
嗜好品としての魅力
タバコを趣味としてたしなむ人に聞くと、種類によって味や香りがさまざまで楽しいといいます。タバコはコーヒーやお酒と同じで嗜好性が高く、その味や香りを楽しむことには、気分が高揚しストレスを緩和する作用があります。
そしてタバコやお酒などの嗜好品には高額の税金がかけられています。
つまり、国の財源を支えるという重要な意味もあるのです。喫煙家の経済的な負担は増すばかりですが、希少性の高い嗜好品には高額な値段がついているものです。
本当に好きな人ならば、その負担もいとわないことでしょう。
それほどに嗜好性というのは好きな人にとって魅力的で魔力のようなものなのです。
喫煙者同士のコミュニケーション
同じ趣味を持つ者同士というのは初対面でも会話が弾みます。
それも現代社会のようにストレスが強く、愛煙家は社会の片隅に追いやられていくような状況ならなおさら、同情心や仲間意識が芽生えやすくなるのが当然の成り行きかもしれません。
喫煙所でタバコをふかしながら愛煙家同士でコミュニケーションを取れば、自然に楽しい時間が過ごせるのです。
ニコチンにはストレスを和らげる作用があり、人見知りでも積極的に会話に参加できるという効果が期待できます。
ただし、いくら緊張を和らげるためとはいえタバコを吸わない人なら匂いですぐにわかるので、プライベートであったとしても、人と会う前にタバコを吸うのはエチケット違反です。
ニコチン依存症のメカニズム
愛煙家にとっては喫煙にもメリットがあるといいたいところでしょが、やはり喫煙には多く害が生じるのも事実です。喫煙者本人や周囲の人に健康被害をおよぼさないためにも、可能な限りタバコは吸わない方がよいでしょう。
健康を害するタバコに頼らなくてもストレスを解消する方法はありますし、ニコチン依存はれっきとした病気なのです。
そこでこのパートではニコチン依存を発症してしまう過程について詳しく説明していきたいと思います。
タバコを一本吸うと5分寿命が短くなるといわれているほど、タバコにはニコチン以外にも健康に有害な物質が数多く含まれています。
そして吸収が速いニコチンが誘導体になり取り込まれていく有害物質もあります。
さらに禁煙する時には離脱症状という苦しい自覚症状がつきものなのです。
はじめての喫煙で起こる現象
タバコを吸うきっかけの大半は「好奇心」からくるものでしょう。
なんとなくカッコイイ、ちょっとした反抗心、あるいは周囲の喫煙者にすすめられて、といった理由から吸い始めた方も多いのではないでしょうか。
- 激しく咳き込む
- めまいがする
- 心臓がばくばくする(動悸、不整脈)
- 口のなかがいつまでもネバネバする
- 苦味が取れない不快感
- 皮膚が赤くなる(発赤)
- 息苦しくなる
はじめての喫煙で吸う加減がわからず、これらの症状のうち、どれかを経験した方もあるでしょう。
タバコには400以上の化学物質が含まれていて、ニコチン・タール・一酸化炭素はタバコの3大害悪といわれています。
初めての喫煙でいきなり肺に悪影響が出ることはありませんが、心臓には大きな負担がかかり動悸・息切れ・めまい・不整脈のような循環器症状が起こります。
また皮膚や口腔粘膜もダメージを受けて、発赤や紅斑(あかいまだら模様が浮き出てくる皮膚症状)、味覚異常などを起こしやすくなります。
不快な思いをしたことで二度と吸わないという方もいれば、それにもかかわらず、その動作を楽しむようになり、習慣になってしまい、徐々に依存度が進行してしまう方も多いようです。
ニコチン受容体の形成
ニコチンが中枢神経に作用するためにはニコチンに反応させるための中間物質が必要となります。この時ニコチンを神経に届けるための中間物質として働くのがニコチン受容体です。
ニコチンを摂取すると筋肉や末梢神経にあるニコチン受容体がニコチンをキャッチして脳に届けます。この作用が非常に速いため、タバコを吸うとすぐに神経が落ち着きます。
しかし、その反作用で発症するのがニコチン依存です。
ニコチン受容体には幾つかの「型」があり、型の違いによって存在する場所がことなります。
- 筋肉型(NM):神経接合部(筋膜と神経が接している部分)に存在
- 末梢神経型(NN):自律神経節、副腎髄質に存在
- 中枢神経型(CNS):シナプス(神経伝達物質)に存在
この中でもっとも迅速にニコチンに反応するのは末梢神経型(NN)です。
抹消神経型のニコチン受容体がニコチンに反応した後、自律神経では交感神経(興奮系)か副交感神経(鎮静系)のどちらかが優位に立ちます。
しかし、どちらの自律神経が優勢になるかは、その時々の精神や身体的状態によってことなります。
筋肉型(NM)ニコチン受容体が活性化すると筋肉の収縮が起こり過剰摂取によって痙攣や筋肉痛を感じることがあります。
この作用によって緊張型頭痛やリウマチ、痛風などの疼痛症状が悪化することがあります。
- 参考文献
アセチルコリン受容体について詳しくはこちら
ウィキペディア:アセチルコリン受容体
ニコチン依存
ニコチンはその有用性だけを見ると、非常に高い精神作用があります。
そのため脳は安易にニコチンに依存してしまう可能性が高いのですが、他の薬物やアルコールと比べた場合、依存症に認定されたのは遅く、1970年代後半になりようやくWHOによって、ニコチン関連障害が認められたという背景があります。
これには他の薬物に比べ、ニコチンで喫煙者の社会的な役割が損なわれてしまうというケースが少なかったことに起因していると思われます。
つまり、タバコをスパスパ吸ってもバリバリ仕事をこなす方が、むしろ良いという風潮が長く続いていたということです。
もちろん当時から「吸いすぎには注意」という但し書きがありましたが、愛煙家はそんなことなどお構いなしにタバコを吸い続け、それを社会が許容していたのです。
しかし、ニコチン関連障害には副流煙害についてもレポートされており、そこで初めて周囲のタバコを吸わない人にも健康障害を発症させる可能性が高いという認識が広まり、今の禁煙活動や啓発へとつながっていきます。
現在は医療機関でも禁煙外来を設けて積極的に禁煙を促していますが、一度ニコチン依存になってしまうと禁煙時に離脱症状を起こしてしまい、なかなか成功しないというのが現実です。
ニコチン離脱症状
ニコチンに限らず薬物依存を治療する際、もっともやっかいなのが離脱症状です。
特にニコチンやアルコールのように精神に作用する薬物依存では辛い離脱症状を訴える例が多く、この離脱症状によって禁煙に挫折してしまう依存症患者が多いのです。
ニコチン依存の離脱症状には 喫煙への渇望、 焦燥感、 情緒不安、 抑うつ状態、 集中力の低下、 睡眠障害、 食欲の増加、 などがあげられます。
特に喫煙への渇望は多くの喫煙者が経験する離脱症状です。
具体的にはニコチンが持つ精神作用の反動から脳がニコチンを求めてしまうという反作用以外に、日頃から喫煙が癖になっていると、ちょっとしたタイミングでついタバコを吸おうとしてしまう無意識の反応を起こします。
その時タバコが身近にないことがストレスに繋がってしまうと考えられます。
そしてダイエットを目的とした喫煙をおこなっていた女性は体重増加への恐怖心から禁煙に踏み切れないケースが多いという見解もあります。
いずれにしても離脱症状を起こすと1人で禁煙するのは困難なので、禁煙外来や精神科(もしくは診療内科)と相談の上、少しずつタバコの量を減らしていくことを心がけ、心身がニコチンに頼らなくても大丈夫という成功体験を積むことが重要です。
タバコが喫煙者の体におよぼす影響
前述したようにタバコには400種類以上の化学物質が含まれていて、その大半が有害物質で、喫煙者が特に注意しなければならないのはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)です。
COPDは特定の症状を指す病名ではなく、呼吸器全体に障害がおこります。
最大の原因は喫煙で、40歳以上になると発症率が上昇し、現在530万人以上の患者がいるといわれています。
主な症状は
- 激しく咳きこむ
- 痰がからむ
- 気管支喘息
- 慢性気管支炎
- 呼吸困難
などです。
進行すると肺気腫や肺がん、間質性肺炎など重症度の高い呼吸器疾患を起こします。
さらにニコチン依存からくる慢性疲労感、うつ状態、不眠などの精神症状、動悸や不整脈といった循環器症状などが全身に広がっていきます。
ニコチンの作用
ニコチンは喫煙後7秒ほどで脳に達します。ニコチンの刺激を受けると全身の血管が収縮して心拍数は最大40%も上昇します。
一度収縮した血管が元に戻るには30分ほどかかるため、その間心臓には大きな負担がかかることになります。
ニコチンは代謝が早いといってもこれだけの時間を要するので、連続して喫煙しているとそれだけ循環器に障害が起こりやすくなります。
ニコチンは「猛毒」です。
その毒性は3,000gの新生児なら3mgで致死量に達するといわれています。
副流煙にもニコチンが含まれているので、妊活をしている、または子供が生まれたという家庭では禁煙を心がけるようにしてください。
その一方でニコチンにはリラクゼーション作用がありますが、これも喫煙の習慣がついてしまうと本数がどんどん増える要因になってしまうため要注意です。
そして禁煙時に襲ってくる離脱症状の中でも、抑うつ状態、イライラするなどの不定愁訴、不眠といった精神症状は治療が非常に困難といわれています。
禁煙は1人ではなく専門医、精神科医、カウンセラーそして家族と一緒に「チーム」で取り組むようにしましょう。
タバコに含まれる有害物質
タバコに含まれている数多くの化学物質のうち、特に有害性が高いといわれているのは、ニコチン、タール、そして一酸化炭素です。
タールとはタバコのフィルターに着く茶色い物質で、粘着力が高く強い苦味があります。
このタールにはベンツピレンを始めとしてアミン類など数十種類の発がん性物質が含まれています。
また、一酸化炭素は酸素の200倍以上の結合能力でヘモグロビンに取りつきます。
一酸化炭素と結びついたヘモグロビンは酸素運搬能力を失ってしまいます。
このため一酸化炭素はCOPDや循環器障害、多臓器不全などを起こす直接的な原因物質といわれています。さらに、一酸化酸素中毒では高い確率で呼吸不全を起こし死に至ることが知られています。
他にもカドミウムや窒素酸化物、アンモニアなどが含まれていて、タバコに火をつけるとこれらの物質が酸化反応を起こし、さらに毒性が強まることが判明しています。
副流煙(火がついたタバコの先から立ち上る煙のこと)には、主流煙(タバコから吸い込む煙)の何倍もの有害物質が含まれているため、喫煙者本人の周囲にいる非喫煙者にも深刻な健康被害をもたらす可能性が指摘されています。
タバコの副流煙が他人におよぼす影響
タバコの副流煙は火をつけた先から立ち上る煙のことです。
喫煙者が吸い込むのは主流煙、吐き出す煙は呼出煙といいます。よく副流煙と呼出煙を勘違いしている人がいますが、いずれの煙にも有害物質が含まれています。
しかし、タバコでもっとも有害なのは副流煙といわれています。
主流煙と比べても、副流煙に含まれている有害物質の量はニコチン2.8倍、タール3.4倍、一酸化炭素4.7倍、ベンツピレン3.4倍、アンモニア46.3倍になります。
受動喫煙とは、喫煙者の周囲にいる人が副流煙と呼出煙を吸ってしまうことです。
喫煙者は受動喫煙+主流煙の影響を受けているので一番健康被害を起こしやすいということに変わりはありません。
しかし、非喫煙者が喫煙者の側にいるだけで受動喫煙の被害を受けることになるので、人が集まる公共の場所では禁煙もしくは分煙対策をとることが理想的です。
今ではファミリーレストランや映画館のロビー、駅のホームなど小さなお子さん連れが多い場所では終日禁煙となる場所も増えました。
喫煙者は肩身の狭い思いをしますが、これを機会に禁煙の決心をしてみてはいかがでしょうか。
軽いタバコでも健康に影響をおよぼしている事実
近年は嫌煙ブームや健康ブームが続いている影響で喫煙者の間でもニコチン量が少ない、いわゆる「軽いタバコ」を選ぶケースが増えています。
しかし、軽いタバコだからといってタバコの害が少なくなるというわけではありません。
ニコチン量を少なくしても脳が要求してくるニコチン総量に違いはないので、タバコの煙を強く深く吸い込もうとします。
タバコを強めに吸うとタバコの先の火が明るくなるのを見かけた人も多いのではないでしょうか。これは強く吸うことで周囲の酸素と激しく結合する酸化反応と呼ばれる現象で、副流煙を大量に生み出すことになります。
また、厚生労働省の調べによれば軽いタバコほど発ガン物質の含有量が多いというデーターも公表されています。
つまり、タバコを軽くするということは、それだけ副流煙をたくさん作り出し、発がん性物質を大量に吸い込んでいるということになるのです。
さらに一回で強めに吸い込むとタバコの消費量が増え、結局強いタバコを吸うよりも被害を拡大させていることになります。
軽いタバコに変えてたところで、自身と周囲の人に害を与え続けていることには違いないということを覚えておいてください。
ニコチン依存症の治療
今や禁煙はワールドワイドなテーマとして定着しました。日本でも厚生労働省の公式サイトにアクセスすると「たばこと健康に関する情報ページ」という特設サイトが開設されています。
このコンテンツではタバコと健康被害に関するさまざまなデーターが開示されています。
禁煙を目指す方は一読されることをおすすめします。
また毎年5月31日は世界禁煙デーに設定され、日本中の自治体で禁煙を支援するさまざまなイベントがおこなわれています。
この他にも禁煙支援マニュアルや禁煙支援動画の作成などの啓発活動をおこない、官民一体となって「禁煙しやすい国づくり」を目指しています。
行動療法
禁煙というのは多角的な治療計画を立てないと成功しないといわれています。
その理由は長年の喫煙によって呼吸器系、循環器系、精神系、消化器系などにさまざまな健康被害を起こすリスクが高まっているからです。
ここで紹介する「行動療法」とは、いきなり禁煙するのではなく、少しずつタバコの量を減らし、成功体験を積むことで、精神的な禁煙ストレスを減じていくという精神療法です。治療は精神科がメインになります。
行動療法では綿密な治療計画を立て、心理カウンセリングも同時におこなうと成功率が高くなります。さらに周囲の協力も不可欠で、目標を立て成功したらその達成感を共有することが成功への近道になります。
具体的にはその月の減煙目標を達成できたら、何かしらのご褒美(旅行やちょっとした買い物など)で「達成感」をしっかりと自覚し、次の目標へのモチベーションにすることです。
心理カウンセリングは精神科や心療内科での治療の一環ですので、何度も禁煙にチャレンジしたけど失敗しているという自信喪失感や諦め気味など、メンタル面でくじけやすい人、または中等度から重度のニコチン依存症の人に最適な治療法です。
置換療法
置換療法とは「ニコチンパッチ」のようにタバコ以外の方法でニコチンを摂取し、脳がニコチン離脱症状を起こさない程度の環境を維持しながらタバコの本数を減らし、やがて禁煙を達成させる治療法です。
禁煙に失敗する一番の原因は「いきなりタバコを止めようとすること」といわれています。先に紹介した行動療法は置換療法と組み合わせると成功率が高まるといわれています。
喫煙癖はちょっとした時やイライラしている時に無意識でタバコに手を伸ばしてしまう「行動癖」が大いに関係しています。
この時タバコが身近にないと脳は大きなストレスを感じてしまうのです。
しかし、タバコが身近になくてもニコチンパッチをしていれば中枢神経にニコチンは届けられているため、脳ストレスを減じることが可能となります。
置換療法も行動療法と同じように治療計画を立て、少しずつタバコの本数を減らしていくのが成功の鍵となります。
置換に用いるのはやニコチンパッチ(ニコチネルTTSなど)、ニコチンガム(ニコレットガム、ニコテックスなど)、内服薬(チャンピックス)など幾つかの種類がありますが、どれを選ぶのかはドクターと相談しながら決めてください。
また、禁煙治療はニコチン依存症と診断された場合のみ保険診療が適用されます。
禁煙キャンペーンなどの参加
こちらも行動療法の一環ですが、モチベーションを高めるために禁煙キャンペーンなどのイベントに積極参加をすることで禁煙の成功率が高まります。
この場合、1人よりも家族やパートナーと参加したほうがより禁煙に対して積極的になれます。
周囲に自分が禁煙を決意しているということをアピールすること、そして周囲が監視しやすくなるからです。
監視といっても厳しいものではなく、禁煙外来に同伴した時、第三者的な目線でしっかりと目標達成の努力をしていたかどうか報告をする程度です。
このように誰かの目を意識することを「ソーシャルプレッシャー」といいますが、ニコチン依存症の治療ではこのプレッシャーがあることで、成功率が高まると考えられています。
禁煙啓発のテレビCMでも「禁煙治療はお医者さんと一緒に」というキャッチフレーズを流したり、子供がドクターに父親の喫煙状態をばらしたりなどといった演出もソーシャルプレッシャー効果を狙ったものです。
毎年5月31日は世界禁煙デーです。
日本各地では禁煙キャンペーンが大々的に開催されるので、家族や知人と参加して孤独な禁煙で苦しまないようにしてください。
- 参考文献
世界禁煙デーについて詳しくはこちら
厚生労働省:5月31日は「世界禁煙デー」
ニコチン依存症のまとめ
昨今の嫌煙ムーブメントはいささかいき過ぎで、愛煙家の方たちの人権が置き去りにされている感じはありますが、タバコやニコチンの害悪が医学的にも証明されているため、できれば禁煙した方がよいということは間違いありません。
しかしニコチン依存症になってしまうと自力での禁煙はほぼ無理といってもよいでしょう。
ニコチンは強い依存性がある薬物なのです。
禁煙を成功させるには医師やカウンセラーに頼り、周囲の理解を得ながら少しずつ成功体験を積み上げていき、タバコのない日常に慣れることが一番の近道といえます。
決してあせらず、政府や自治体が開催する禁煙イベントへも積極的に参加して、禁煙意識を強めるようにしてください。
参考文献
行政機関サイト
厚生労働省
生活の保障や経済発展のため、国民の健康や子育て、社会福祉、介護、雇用・労働、年金に関する政策を所管している国の行政機関のサイトです。
医療保険制度の制定も担い、海外医薬品の輸入に関する規則や検査もおこなっています。
情報サイト
ウィキペディア(日本版)
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