アトピー性皮膚炎は小児を中心に発症する炎症性皮膚疾患の一種で、国内での発症者は120万人以上とされています（2023年時点）。

プロトピック軟膏は東京に本社がある国内の大手製薬会社「アステラス製薬」が製造・販売している免疫抑制剤の一種です。

本記事ではプロトピック軟膏の効果、および従来の治療薬であるステロイド製剤との違いについて解説します。

プロトピック軟膏とは

始めに、プロトピック軟膏の特徴や適応症状について解説します。

免疫抑制剤の一種

プロトピック軟膏は免疫抑制剤の一種です。

有効成分のタクロリムスが細胞内でカルシニューリンを阻害することで、免疫の過剰な働きを抑制します。

日本では1993年に肝移植にともなう拒絶反応の抑制に使用されたのが最初で、その後、さまざまな臓器移植にともなう拒絶反応の抑制に使用されるようになりました。

外用薬としてのタクロリムス（プロトピック軟膏）は、アトピー性皮膚炎の治療薬としてよく知られています。

適応症状

プロトピック軟膏適応症状はアトピー性皮膚炎です。

ステロイド外用剤では十分に効果が期待できないケースや、ステロイドの外用が適切ではないと判断されたケースで、プロトピック軟膏が用いられます。

プロトピック軟膏は非ステロイド外用剤のため、ステロイド製剤の長期使用による皮膚の菲薄化リスクがありません。

プロトピック軟膏はアトピー性皮膚炎に対する外用剤で、免疫抑制作用によってアトピー性皮膚炎を改善させます。薬剤がアトピー性皮膚炎の皮膚状態が悪い部分のみから吸収されるので、正常な肌には影響がありません。 1箱：3,376円～

ステロイド製剤との違い

プロトピック軟膏とステロイド製剤は、いずれもアトピー性皮膚炎治療薬として知られていますが、以下の点で違いがあります。

それぞれについて詳しく解説します。

抗炎症力

プロトピック軟膏の有効成分であるタクロリムスは、高い抗炎症力を持つ点が特徴です。

ステロイド製剤は一般に「weak（弱い）」「medium（普通）」「strong（強い）」「very strong（とても強い）」「strongest（もっとも強い」の5段階に分類されます。

プロトピック軟膏には、ステロイド製剤の「strong（強い）」クラスと同等の抗炎症力が期待できます。

吸収

プロトピック軟膏の有効成分であるタクロリムスは、ステロイド製剤よりも肌の内部に吸収されにくいことが特徴です。

ステロイド製剤よりも肌の内部に吸収されにくい理由は、タクロリムスの分子構造がステロイドよりも大きいためです。

副作用

ステロイド製剤は重症例のアトピー性皮膚炎にも用いられますが、長期使用により皮膚が薄くなる副作用を引き起こしやすくなります。

プロトピック軟膏は免疫反応を抑える治療薬のため、皮膚が薄くなる副作用を心配する必要はありません。

適用部位

ステロイド製剤は主に手のひらや足の裏などに用いられます。強いステロイド製剤は副作用のリスクが高いため、顔や陰部に用いる際には注意が必要です。

プロトピック軟膏はステロイド製剤に比べて肌の内部に吸収されにくいため、まぶたの周囲など皮膚が薄い箇所にも使用可能です。

プロトピック軟膏の効果

プロトピック軟膏の有効成分であるタクロリムスは、免疫の過剰な働きを抑制し、アトピー性皮膚炎の症状を緩和する効果が期待できます。

肌内部に吸収されにくいため、ステロイド製剤の使用が推奨されないまぶたの周囲など、皮膚が薄い箇所への塗布も可能です。

まとめ

プロトピック軟膏は免疫阻害薬の一種で、炎症の原因となるサイトカインの放出を抑制し、アトピー性皮膚炎の症状を緩和する効果が期待できます。

ステロイド製剤に比べて肌の内部に吸収されにくいため、まぶたの周囲に使用できる点もメリットの1つです。