勃起を維持するED治療薬の効果と知っておくべき血流促進作用
PDE5という酵素が「中折れ」を促している?!
年齢のせいなのか、はたまたパワーが無くなってきたのか。女性をみれば性欲は湧くし興奮もするのだけど、肝心のペニスがいうことをきかなくなって困ってきます。
なんとか勃起はするものの、若い頃のようないきり立つような勢いはすでになく、セックスの途中で中折れすることも多くなる方は少なくありません。
勃起を維持するためには陰茎の海綿体に血液が流れ込み、その状態を維持することが必要です。
ところが勃起を収束する働きがあるPDE5という酵素が、勃起させようとする環状グアノシンーリン酸(cGMP)の働きを上回ってしまい、勃起を維持できなくなってくるのです。
中折れはPDE5(ホスホジエステラーゼ5)という酵素が促すために起こるといっても過言ではありません。
目次
いったいなにが勃起維持をさまたげているのか
勃起不全(ED)と聞くと、完全に勃起ができない状態を思い浮かべる方が多いでしょう。
EDとは勃起機能の低下を意味しており完全に勃起できないだけではなく、勃起するまでに時間がかかったり、勃起はするが硬さが足りない、セックスの途中で萎えてしまう中折れによって満足できるものにはならない、挿入の前に萎えてしまうといった症状もEDに該当します。
さまざまな要因が勃起不全を引き起こすのですが、突き詰めていくと陰茎への血流が大いに関係していることがわかります。
陰茎には陰茎海綿体と呼ばれるスポンジ状の部分があり、無数の細かい血管で構成されています。
通常時には陰茎海綿体につながる動脈や平滑筋と呼ばれる筋肉は収縮した状態で、海綿体へ血液が流れ込むことはなく勃起も起こりません。
性的な刺激を感じると脳から陰茎へとその情報が伝わることで、体内では一酸化窒素の放出が始まります。一酸化窒素が体内へ放出されるとcGMPという物質が作り出されます。
収縮していた平滑筋や勃起に関わる動脈はcGMPが働くことで緩み、陰茎海綿体へは一気に血液が流れ込み、その圧力によって海綿体が硬くなり陰茎が勃起するのです。
またcGMPには血管拡張作用があるので、緩んだ動脈を拡張させることで陰茎海綿体への血流量がさらに増加するのです。
つまり勃起には、一酸化窒素の放出で作られるcGMPの働きが重要なのです。
一度勃起が起こると海綿体の周囲を覆う膜は、海綿体に押される形で膨れた状態になるのですが、この膨れる作用によって静脈を圧迫して海綿体から血液が出ていくことを防ぎます。
血液が海綿体に流入した状態が維持されるので勃起状態が維持されるのです。
この時にもcGMPの働きは重要で、平滑筋や勃起に関わる動脈を緩ませ血管を拡張させることで、陰茎海綿体への血流を促し続けるのです。
しかしこの状態ではいつまでも勃起し続けることになるのですが、長時間の勃起は静脈が押さえ続けられることで陰茎が壊死する危険性もあります。
陰茎海綿体にはPDE5という酵素が豊富にあるのですが、この酵素はcGMPを分解する働きがあります。
cGMPを分解すると血管の拡張作用は消失し、緩んだ状態となっていた平滑筋や勃起に関わる動脈を元の収縮した状態に戻してしまいます。
陰茎海綿体への血流量が一気に減少することで静脈を通って血液が出ていき、勃起の状態は終了するのです。
射精したり性的な興奮がおさまってくると、脳から陰茎への情報が無くなり一酸化窒素の放出が無くなります。
するとcGMPも作られなくなり、PDE5の量が勝ることで勃起は起きなくなります。
つまり勃起の維持を妨げているのは、一酸化窒素の放出が少ないためにcGMPの生産量が少なく、元々体内に存在するPDE5の量のほうが多いために起こるのです。
加齢、病気、ストレスなどさまざまな原因によって一酸化窒素の放出が減少します。
一酸化窒素の放出量が減少することでcGMPの生産量も減少してしまいます。
性欲はあるし興奮もするのに、硬さが足りなかったり勃起を維持することが難しくなるなどのEDの症状がみられる原因は、PED5の量がcGMPの生産量を上回るために、cGMPを分解してしまうことで勃起が困難になってしまうのが原因なのです。
EDの症状を緩和するためにはcGMPの生産量を増やすか、PDE5の働きをいかにして抑えるかが重要になってくるのです。
ED治療薬がPDE5阻害薬と呼ばれている理由
勃起不全などEDの解消には一酸化窒素の放出量の増加とcGMPの生産量の増加が不可欠です。
そのためにはアルギニンなど必要な成分を摂取することはもとより、ストレスを減らしたりEDの原因となる病状の治療、生活習慣病の予防と治療などさまざまなことに取り組む必要があります。
しかしそれ以上に簡単なED対策としてはED治療薬の服用があります。
ED治療薬とは勃起をさまたげる根本的な原因に効果のある医薬品で、最も有名な薬がバイアグラとなり、その成分はシルデナフィルです。
このシルデナフィルは元々狭心症の治療薬として開発が進められていました。
狭心症とは動脈の内側にコレステロールが溜まり、動脈硬化と血管が狭くなることで起こる心臓の病気です。
シルデナフィルはコレステロールの蓄積によって狭められた血管を拡張することで、狭心症の治癒を目指して開発されたものでした。
しかし狭心症の治療薬としてはよい結果が残せず治験は中止されましたが、男性の被験者の多くから勃起を促進する効果があるとの声が聞かれ、EDに対する適応があるということでバイアグラという商品名で販売されることになりました。
ではED治療薬がなぜPDE5阻害薬と呼ばれているのでしょう。
血管を拡張させて狭心症の治療にと研究がすすめられてきたシルデナフィルは、残念ながら狭心症自体の治療には効果があまり出ませんでしたが、血管を拡張させる効果は確認できました。
そしてこの血管を拡張させる効果によって勃起が促進されたのですが、シルデナフィルは一酸化窒素の放出量の増加やcGMPの生産量の増加には関与していません。
cGMPを分解する働きがあるPDE5を阻害することで、PDE5より少ないcGMPでも勃起の効果を出せる薬となっているのです。
バイアグラ以外にもED治療薬が開発され発売されていますが、実はどのED治療薬もPDE5の働きを阻害することで勃起を促すという働きに違いはありません。
バイアグラでは頭痛や鼻詰まりといった副作用がやや強く出ることがあったり、服用のタイミングや効果が出現するまでの時間、さらに効果が持続する時間など他のED治療薬との差異が見られます。
しかしどのED治療薬もPDE5の働きを阻害して勃起を維持するという効果は同じなので、ED治療薬のことをPDE5阻害薬と呼ぶのです。
さまざま陰茎トラブルにもED治療薬が効果的
勃起不全はさまざまな原因によって起こりますが、もっとも一般的な原因として考えられるのが加齢によるものです。
加齢によって血管が老化していくことで弾力性が低下し、徐々に動脈硬化になっていきます。
勃起には血液の流入が必要ですが、動脈硬化によって血流が低下します。
また生活習慣病といわれる糖尿病・高血圧・高脂血症などでも血管に負担がかかることで、同様の勃起不全が起こりやすくなります。
PDE5を阻害すればcGMPの働きで血管が拡張して勃起が促されるので、ED治療薬の服用が有効なのです。
また神経の障害もEDの原因となります。脳から陰茎への情報伝達は神経を経由するのですが、この神経に障害があればうまく伝わらずにEDになってしまうのです。
このような場合にもED治療薬を服用することで、血管の拡張とPDE5の阻害により勃起障害の改善につながります。
若年層から中高年層にまでよく見られる勃起不全の原因に、心因性によるEDがあげられます。
職場や家庭などさまざまな場面でストレスを感じることが多い現代社会。
この精神的なストレスが原因でEDに陥る方は決して少なくはありません。
また過去のセックスの際にパートナーに言われた一言を引きずっていたり、うまくできなかったことなど過去のトラウマが原因でEDとなる方も多くいます。
この心因性のEDの場合には脳から陰茎へ興奮しているとの情報が伝達されにくく、逆に脳内ではプレッシャーを感じることで勃起不全が起きてしまいます。
ED治療薬を服用することでPDE5を阻害するとともに血管の拡張も起きるために、勃起しやすい状態となるのです。
さらにED治療薬を服用することで、今日は服用しているという安心感からプレッシャーを感じにくくなり、勃起が起きやすいのではないかともいわれています。
そして病気の中で最もEDになりやすく、またその原因になるのが糖尿病です。
糖尿病患者の多くはEDを発症しているといわれ、糖尿病患者の80%はEDを併発しているという結果もあるほどです。
糖尿病は血液に含まれる糖分が高い病気で、長い時間をかけて体のあちこちにダメージを与えていきます。
糖尿病によって神経にダメージを与えることで、脳から陰茎への情報伝達がうまくいかず勃起不全となります。
また陰茎海綿体のeNOXの活性が低下し平滑筋が緩みにくくなります。
そして糖尿病の影響で大きいのは動脈硬化です。
陰茎海綿体のスポンジ状を構成している毛細血管が動脈硬化の影響で血流が低下し、勃起に大きな影響を与えてしまいます。
このような糖尿病による勃起障害にもED治療薬は効果を発揮し、糖尿病患者の多くはED治療薬の使用によってEDを克服しています。
ED治療薬の効果を最大限に発揮するには
これまで見てきたとおり、ED治療薬はさまざまな原因によるED(勃起不全)に効果があります。
年を取ったから、仕事が忙しいからといった原因に関係なく効果を発揮してくれる薬です。
ただしED治療薬の効果を最大限引き上げるためには、正しい服用方法を守る必要があります。
間違った服用方法では効果が発揮されないばかりか、副作用によって重篤な状態に陥る危険性もありますので、必ずお守りください。
ED治療薬を服用する際に最も気をつけたいポイントは、必ず空腹時に服用することです。
食事をして少しお酒を飲み、気分が良くなってきたところでED治療薬を服用しても、効果が現れるまでに相当な時間がかかったり、時にはまったく勃起しないということもあります。
先に食事をするとED治療薬の吸収が低下し、特に脂肪分が高いものを食べた後のED治療薬の吸収は著しく低下してしまいます。
確実に効果を発揮させたいのならば、空腹時に水と一緒に服用しましょう。
もし食後に服用するならば、食事が終わって2時間程度あければ問題はありません。
ただし食事は脂っこいものを避けて、腹7~8分目程度に抑えることが肝心です。
ED治療薬は服用するとすぐに効果が現れる薬ではありません。
比較的効果の出現が早いといわれるレビトラを服用した場合、早く効果が出現する人で20分ほどかかりますので、できれば行為の1時間前には服用するほうが良いでしょう。
バイアグラは早い人で30分ほどで効果が出現するので、やはり1時間前には服用します。
シアリスは早い人では1時間ほどで効果が出現しますが、行為の3時間前には服用するほうが良いとされています。
このようにED治療薬によって効果の出現までの時間が異なり、さらに個人差が加わるため、余裕をもって服用するようにします。
それぞれの薬の効果の持続時間はレビトラの20mgで8~10時間、バイアグラの50㎎で4~5時間、シアリスの20㎎は36時間もの長い時間効果が続きます。
効果の持続時間も考慮して服用しましょう。
この効果の持続時間は性的興奮があれば正しく勃起する作用時間のことで、持続時間中ずっと勃起状態が続くということではありません。
また一度にたくさん服用しても効果は上がりませんし、副作用の危険性が増すだけです。
必ず所定の量を服用するようにしましょう。
またED治療薬を服用間隔は24時間以上あけることが必要です。
中折れを解消するには血流改善は不可欠です
勃起のメカニズムをみると、そこには血流が大変重要な要素であることが分かります。
陰茎の海綿体と呼ばれる組織に血液が流れ込むことで勃起し、その状態を維持する物質が正しく生産されることで勃起を維持するのです。
ところが加齢やストレス、糖尿病などの生活習慣病によって血流が悪くなると勃起しにくくなり、また勃起の状態を維持できなくなることで中折れとなってしまいます。
中折れなどの勃起不全を改善するためには血流改善がもっとも重要なファクターとなるのです。
血管を拡張することで血流を改善し、さらに勃起を妨げる酵素の働きを阻害するのがED治療薬の役割です。
EDになる要因は器質性、心因性、薬剤性などさまざまなものがありますが、ED治療薬を服用すれば驚くほどの改善を感じられるでしょう。
参考文献
ED治療薬
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