避妊とは~失敗しないための正しい避妊方法のすべて~
避妊とは
避妊とは、性交時の受精または受精卵の着床を妨げ、妊娠しないように何らかの策を講じることを指します。
ヒトがおこなう性行為は、性的欲求を満たし快楽を得るためにおこなうといわれています。
性行為により妊娠してしまうと、経済的な理由により育てられないというケースや、倫理的に育てられないというケースにおいては堕胎せざるを得ないこともあります。
堕胎による心理的な負担はとても大きく、女性は特に身体的な負担もかかります。
避妊の方法はいくつかありますが、医学が進歩している現代においても100%完璧に避妊できる方法はなく、ごくわずかですが数%程度は妊娠の可能性は残ります。
避妊に関する正しい知識を身につけて、望まない妊娠を出来るだけ減らすように行動することが大切です。
目次
妊娠とは
妊娠とは、子供を望む男性と女性が避妊をせずに性交をし、やがて出産に至るまでの生理的経過を指します。
医学的には、哺乳類の胚が胎盤を形成し、母体から栄養を貰いながら発生を進める現象と説明されます。
赤ちゃんの誕生につながる妊娠はすべてが喜ばしいことであるべきですが、現実には、望まれない妊娠も後を絶ちません。
堕胎を選択され世に生まれることのできない悲しい赤ちゃんを一人でも減らすために、また、堕胎により身体を傷つける女性を一人でも減らすために、正しい避妊の知識を身につけることが大切です。
女性のみではなく男性も当事者意識を持ち、実践しましょう。
受胎のしくみ
女性は、生まれたときにはすでに卵子を持って生まれてきます。
成熟した卵子が1個、体外に排出されることを排卵と呼び、排出された卵子に精子が到達すると卵管の中で受精が起こります。
受精した卵を受精卵といい、受精卵は約48時間かけて子宮に到達します。 そして子宮内膜の一部に根を下ろし、さらに7~11日かけて着床といわれる状態を形成します。
着床したのち、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌されます。
妊娠検査薬は、このhCGというホルモンを一定値以上検出することで妊娠しているかどうかを判定するもので、着床成立後しばらく経ってからが有効です。
排卵日の前後8日間が妊娠可能時期とされ、可能性が高くなるのは排卵日から3~4日といわれています。
この間に性交をおこなうと受胎の確率が高い為、不妊治療でもまずおこなわれるのはこのタイミングを計って性交する「タイミング療法」となります。
妊娠期間は、女性の最終月経の初日を0日目として数え、40週ごろに出産に至ります。 日本では昔から、赤ちゃんはお母さんのおなかの中で「十月十日(とつきとおか)を過ごす」ともいわれてきました。
受胎の兆候
性行為後、受胎したか否かはどのように見極めるのでしょうか。個人差がありますのであくまでも参考として、受胎の兆候をご紹介します。
妊娠は、産婦人科にて胎嚢(たいのう)・心拍を測定して確定診断されます。 卵子と精子が結合した瞬間を妊娠成立と認識されている方もいらっしゃるようですが、実際にはそこから2~3週間経過後、着床を持ってはじめて妊娠状態となります。
この時期には、何も症状を感じない、兆候がないという女性も多くおられますが、着床時に微量の出血がある「着床出血」を認めるケースもあります。
また、ちくちくするような下腹部の痛みを感じることもあります。 おりものが変化する場合もあり、量が増える、サラサラになるなどの変化が現れることもあります。
ホルモンの影響によると考えられていますが、実際の理由はよくわかっていません。
他にも熱っぽい、だるいといった風邪様症状が出る方もいらっしゃいます。精神的に不安定になり、イライラしやすくなることもあるようです。
妊娠初期症状ともいわれる上記の症状が疑われた場合には、タイミングをはかって妊娠検査薬を試してみるのもおすすめです。
- 参考文献
妊娠について詳しくはこちら
ウィキペディア:避妊
避妊法を正しく理解する
情報があふれかえっている現代において、誤った避妊法や迷信めいた避妊法を正しいと勘違いしている方も多くおられます。
正しい避妊法をしっかりと理解して実践し、自分とパートナー、将来の家族を守っていきましょう。
具体的には、コンドームの装着、ピルの服用、殺精子剤の装着、ペッサリーの装着、避妊リングの使用があげられます。
いずれの方法も100%完全に避妊できる訳ではありませんが、コンドームは避妊効果も高く、性病感染も防ぐ効果もあるのでおすすめの方法です。
男性の膣外射精や、膣内洗浄、炭酸水洗浄は誤った方法で、避妊効果はありません。
正しい方法で避妊をおこなうことで、望まない妊娠を回避できる可能性が高まります。
性行為の制限
100%避妊をしたいと望むならば、当たり前ですが性行為をしないことが一番です。
しかし、健全な男女がヒトとして生きるうえで、完全な禁欲生活を送ることはかなり難しいでしょう。
ヒトは、生殖や快楽のためではなく、愛情を確認するために性行為をおこなうことも多い生き物です。
昨今はスローセックスという言葉も生まれており、これは男女がお互いをいたわりながらおこなう行為の中で、喜びと幸福を感じることが可能であると定義されています。
考えうる避妊のための工夫の一つとして、挿入を伴わないセックスがあげられます。
膣内への挿入なしで満足を得られなければ、望まない妊娠を防ぐことが可能です。 挿入を伴わないセックスとは、オーラルセックスやアナルセックスを指します。
ただし、粘膜部を介して感染症がうつる可能性も否定できません。
オーラルセックスやアナルセックスをおこなう際にはシャワーを浴びるなど、身体を清潔にしてからおこなうようご注意ください。
このように粘膜を介した性感染症に気を付けながら、愛情を持って相手に接し、挿入なしのスローセックスを楽しむことも、避妊に繋がる工夫のひとつとおこなえるでしょう。
- 参考文献
スローセックスについて詳しくはこちら
ウィキペディア:スローセックス
避妊具
避妊具はいくつも種類があります。 まずは、最も汎用されている避妊具であるコンドームです。
コンドームは、ラテックスやポリウレタンでできた薄い膜をサック状にしたものです。 男性が装着するタイプで、膣内に挿入する前に勃起した陰茎に被せますが、避妊の確率を上げるには、勃起直後の装着が推奨されます。
陰茎の大きさに合わせてさまざまなサイズが用意されていますので、それぞれが体に合ったものを選ぶことが可能です。
サイズが合わないと挿入中に外れてしまうことがあるので注意が必要です。
最近は陰茎が大きい方用のサイズも、店頭にはないもののインターネット上ではよく販売されており、入手しやすくなってきました。
ペッサリーは、もともと子宮の位置を元に戻すために使われていました。 子宮に被せるような形で挿入しますが、ゼリーなどを併用することが多いようです。
ヒトによって支給や膣の形状が異なるので、入手するには産婦人科の診察が必要となっています。
子宮内避妊用具(IUD)は、子宮内にリング状もしくはコイル状の避妊具を設置し、体に備わっている異物排除機能を利用して受精卵の着床を妨げるという仕組みで使われます。
病院で設置しなければならないうえ、子宮外妊娠は防げないため汎用はされていません。
避妊薬
経口避妊薬(OC)ピルと呼ばれる治療薬で、女性が服用します。
ホルモンを調整し、人工的に黄体期(排卵終了期)の状態を維持することによって排卵を停止させる方法です。
避妊薬ピルには避妊目的だけではなく、生理日の調整や子宮内膜症などの婦人科疾患の治療に使われることもあります。
副作用として、血栓症や肥満、むくみ、イライラ、吐き気、膣炎、肝機能障害が現れることもありますので、医療機関への受診が必要です。
近頃では、身体の負担を軽減した低用量ピル、さらに成分含有量を調整した超低用量ピルが開発され、女性の身体にやさしい避妊薬が多数販売されています。
喫煙とピルの服用は、心臓や循環器系の副作用が現れる可能性が高まるため、ピルの服用時は禁煙をおすすめします。
片頭痛、糖尿病、高血圧の方や35歳以上で1日15本以上タバコを吸う方、腎障害・肝障害の借る方はピルの服用はできません。
他には、日本では認可されていませんが、プロゲステロンを含んだ徐放性剤(じょうほうざい)と呼ばれるゆっくりと効く治療薬を女性の皮下に埋め込んで、避妊効果を発揮させるインプラント法もあります。
皮膚パッチ剤として知られる治療薬には、エブラ(避妊パッチ)があります。 エストロゲンとプロゲステロンを含んだパッチ剤で、1週間の避妊効果が期待できます。
またプロゲステロンを筋注もしくは皮下注する方法もありますが、こちらは3か月おきに注射する必要があります。
緊急避妊
避妊の意思があっても、コンドームの破損やピルの飲み忘れが原因で避妊に失敗してしまうことがあります。
また、心苦しくもレイプなどの暴行事件に巻き込まれることも考えられます。 こういった場合に有効とされているのが、緊急避妊です。
女性側が、緊急避妊ピルやアフターピルと呼ばれている治療薬を服用します。
ピルに含まれるホルモンの働きにより、一時的に子宮内部の状態を変化させ、受精卵が着床しにくい状態にするものです。病院での診察が必須で、72時間以内に服用しなければならないという条件が課されています。
緊急避妊ピルは、副作用として吐き気が出たり、眩暈、頭痛、腹痛、乳房の違和感の症状を認めたりすることがあります。
あくまでも一時的なもので、24時間以上継続することはないとされています。異常が続く場合には医師の診察を受けるようにしてください。
緊急避妊よりも、コンドームの装着やピルの服用を事前におこなうほうが避妊できる確率が高いといわれています。
アフターピルの使用は、緊急時における応急処置ととらえ、日頃からの事前避妊を実践してください。
不妊手術
外科的な治療を望むのであれば、不妊手術という方法もあります。
卵管または精管を縛り、卵子または精子の移動を食い止めることで避妊をおこなう方法です。
一般的に、経腟または経腹による手術が必要となりますが、精管を縛る手術は局所麻酔でおこなうことも可能です。男性の手術はパイプカットとも呼ばれています。
パイプカット手術をしても精液が無くなる訳ではなく、射精も可能です。 ただし、既婚男性のうち配偶者の同意がある場合のみ許可されています。避妊の効果は非常に高く、再接続手術を受けても回復は難しいので、大きな決意が必要となります。
女性の場合は、帝王切開手術後や普通分娩による出産の直後におこなわれることもあります。
未婚で不妊手術を受けている女性は、結婚前に夫となる人に事実を告げる義務を負っています。
妊娠を望まない夫婦や、妊娠することで母体の命が脅かされたり持病が悪化したりする可能性がある場合、胎児に影響がある場合に手術適応となります。
子宮の全摘出手術がおこなわれることもありますが、これは子宮内膜症などの病気が重症と判断される場合が多いようです。
その他
その他の避妊の方法として、基礎体温法やオギノ式と呼ばれる方法をご紹介します。
基礎体温法は、リズム式とも呼ばれ、女性の月経周期と基礎体温変動から排卵日を予測する方法です。
一般的に、女性の基礎体温は排卵を境に低温期から高温期へ、生理を境に高温期から低温期へとうつります。このサイクルから排卵日を予測し、 妊娠の可能性が高い時期に性交を避けるという避妊方法です。
排卵日の翌々日以降からは妊娠しにくいといわれていますが、毎日基礎体温をつけていても排卵日を100%予測することは難しいものです。
ストレスや乱れた食生活が原因で、生理の遅れや排卵日のズレが生じることも多々あります。 基礎体温法はあくまでも補助的な避妊方法として実践し、他の避妊方法と併用することが望ましいでしょう。
オギノ式と呼ばれる方法は、生理周期とは関係なく、 次の生理予定日から14日目とその前後2日間(計5日間)を妊娠しやすい日と定め、この期間には性交を控えるという方法です。
精子・卵子の生存期間や生理周期にも個人差がありますので、オギノ式に関してもあくまでも目安として活用してください。
- 参考文献
避妊薬について詳しくはこちら
MSDマニュアル-避妊情報サイト:いろいろな避妊法を知ろう
信じてはいけない誤った避妊法
誤った避妊方法は、膣外射精・膣内洗浄や、安全日の捉え方の誤りがあげられます。
男性が膣外で射精しても、射精の前後で精子が女性の体内に入る可能性は大いにあります。 また、性行為後にビデや炭酸水などで膣内を洗っても、卵子に到達しようとしている精子を洗い流せるわけがありません。
パソコンやスマホで閲覧できるインターネット情報には、誤った情報もたくさん流れています。情報を選別して正しい避妊方法を学び、男女共に協力して実践することが大切です。
望まない妊娠を避け、堕胎の悲しみや痛みを回避するために、そしてすべての子供の誕生が喜ばしいことであるために、誤った情報に惑わされず正しい避妊方法を身につけましょう。
膣外射精(外出し)
膣外射精とは、性交中に男性が女性の膣内で射精しないようにするため、射精の直前に膣から陰茎を引き抜き、膣以外の場所で射精することをいいます。 俗に「外出し」と呼ばれる方法です。
実は多くの方が、膣外射精を避妊方法として捉えています。
女性の口腔内や腹部、胸部、臀部などに射精する描写が多いアダルトビデオの影響や、誤ったインターネット情報に惑わされ、「外出しすれば妊娠しない」と勘違いしている男女が非常に多いのです。
その結果、望まない妊娠・出産という悲しい結末を迎えるケースも多々散見されます。
男性器からは、射精前にもカウパー腺液という分泌液がでています。 この分泌液の中には精子が含まれているので、射精時だけ膣から男性器を抜いたとしても、全く避妊できていないのです。
射精のタイミングがズレる場合もありますので、避妊方法としてはおすすめできません。
性感染症に関しても、コンドームと比べると感染リスクが高いことはいうまでもありません。
性感染症の心配の少ない夫婦関係である場合は、コンドームよりも簡便な避妊方法として、他の避妊方法と併用する形で実践していることもあるようですが、確実性の低い方法に過ぎないと捉えておくべきです。
膣内洗浄
ムードに任せて膣内射精をしてしまったけれども、あとで洗い流せば避妊できると考えている方も、たくさんおられるようです。
あるアンケート調査によると、実践している避妊方法を尋ねると、回答が最も多かったのがコンドームの着用、次いで多かったのが膣外射精でした。 性交中絶法と呼ばれていたこともありますが、現在では避妊方法としては間違っているとされています。
温水洗浄機能付きのトイレにあるビデ機能で膣を洗い流す方法は、避妊とは程遠いものです。
膣内で射精されたあと、数億個の精子は分速2~5mmというスピードで一斉に子宮を泳ぎ、卵子を目指します。 卵子にたどり着き、受精できるのは膨大な数の精子のなかのたった1つですから、競争のごとく速く女性の体内に入っていくのです。
このスピードでは、ビデ機能を使っても到底追いつくことはできません。よってビデ機能による膣内洗浄で避妊することは不可能です。
同じ理論で、炭酸水や他の液体で膣を洗浄しても、避妊にはなりません。
また、精子は卵子と違い、最長で1週間ほど生き延びます。性交後に排卵が起こった場合にも受精の可能性はおおいにありますので、知識として知っておきましょう。
安全日・生理日の認識
避妊方法のひとつとして誤って捉えられている情報の一つに、「安全日」という言葉があります。
世間では、「安全日とは妊娠しない日のことである」と認識されているかもしれませんが、これは間違いです。
生理周期や基礎体温の上下により排卵日を特定し、妊娠しにくい日を推測することは可能です。しかし残念ながら、女性には「絶対に妊娠しない日」は存在しません。
排卵を過ぎて卵子の寿命が尽きた日以降、生理が終わるころまでは妊娠しにくいとおこなわれています。卵子の寿命は約1日ですので、排卵から2~3日たてば妊娠しにくい時期に入っていると考えられます。
とはいえ、排卵のタイミングや卵子の寿命、パートナーの精子の寿命も人それぞれ異なりますので、絶対妊娠しないとはおこない切れません。
生理中に性交しても妊娠しない、という説も間違いです。
精子の寿命は長ければ1週間と考えられているので、女性の体内に残っていた精子が排卵時に卵子と一緒になり受精する可能性もあります。
生理日や安全日はあくまでも参考として考え、パートナーにも協力をあおぎ、他の避妊方法を合わせて実践するようにしましょう。
避妊の必要性
望まない妊娠による人工妊娠中絶は、20歳未満に限定すると、妊娠してから満8週以上経過している割合が半数以上を占めます。
妊娠を望む夫婦であれば妊娠検査薬の陽性反応を認識したのち産婦人科を受診し、胎嚢(たいのう)や心拍を測定から、妊娠の可否を診断されます。
しかし望まずに妊娠した場合、身体の異変を感じて受診したときには時すでに遅しというケースも多く、周りに相談もできずに悩みを抱える女性もたくさんいます。
中絶できる期間を過ぎ、人工的な死産というかたちをとる場合はまだ良く、最悪の場合誰にも知られずに自宅で出産し赤ちゃんを遺棄する事件に発展することもあります。
出産という決断をしたとしても、幼児虐待に発展したり、育児ノイローゼになったりするリスクも高まってしまいます。
悲しい事態を避け、女性の心と身体にも負担をかけないために正しい避妊方法を勉強し実践することが大切です。
避妊は、パートナーとの協力と相互理解が不可欠です。 誤った方法での避妊は、性暴力ととらえられかねません。一時の快楽に流されず、お互いをいたわり楽しい性生活を実現しましょう。
避妊まとめ
正しい方法で避妊をしなかったことで望まない妊娠をし、中絶を選択する女性は後を絶ちません。
経済的な理由や倫理的な理由、人それぞれの理由が存在しますが、人工妊娠中絶や死産は、女性本人だけでなく、男性や周りの家族にも深い傷を残してしまいます。
コンドームを始めとするの避妊具を使用して正しい方法で避妊をしたとしても、100%の確率で避妊できる方法は少ないのです。
避妊を意図的に行える動物は、ヒトだけです。
望まない妊娠による心の傷・身体的な傷を抱える方々が1人でも少なくなるように、一時の快楽におぼれることなく、正しい避妊方法を理解して実践することが大切です。
参考文献
医薬品情報サイト
MSDマニュアル
MSD社の医療関連情報サイトで、世界中の医療専門家や査読者で構成される独立編集委員会、また医師やメディカルライターで構成されるスタッフの共同作業により編集された医療や福祉、健康に関するさ まざまな情報の検索が可能となっています。
情報サイト
ウィキペディア(日本版)
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避妊効果も非常に高いといわれています。 避妊具